教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

なぜ幼稚園は誕生したのか?(0)―はじめに

2015年02月04日 23時55分55秒 | 幼児教育・保育

 さて、大学教育といえども教材研究・開発は怠ってはいけません。ましてや科目や学生が替わるとなおさらです。2冊のテキストを上梓しましたが、今年度、追加で開発した教材があります。ほかの教職課程教員と共有したいので、何かの機会に活字化できないかなと思いましたが、史資料は先行研究と翻訳のみですのでブログで公開することにしました。
 問題設定と編集・結論はとりあえずオリジナルです。しばらく連載したいと思います。

出典を示されるときには、以下のように示してもらえると幸いです。
 ↓
 白石崇人「なぜ幼稚園は誕生したのか?」『教育史研究と邦楽作曲の生活』http://blog.goo.ne.jp/sirtakky4170/、2015年2月4~11日。
または
 白石崇人「なぜ幼稚園は誕生したのか?(0)」『教育史研究と邦楽作曲の生活』http://blog.goo.ne.jp/sirtakky4170/、2015年2月4日。


白石崇人「なぜ幼稚園は誕生したのか?―啓蒙思想の影響とフレーベルの幼稚園構想から考える―」 より

はじめに

 本論文の目的は、1840年における幼稚園誕生の趣旨について、F・フレーベル(1782~1852)の構想と、その構想の背景にあった啓蒙思想とを通して検討することである。なお、フレーベルが構想したのはKindergartenであるが、便宜上、「幼稚園」と表記する。
 現代日本において、幼保一体化の動きのなかで幼稚園は徐々に数を減らし、その存在意義を問われている。そこで、なぜ幼稚園が誕生したかを振り返り、その存在意義を再確認して、将来のあり方を考える材料とする必要がある。
 幼稚園は、1840年のドイツでフレーベルによって創設され、その後、日本を含めた世界中に拡がった。フレーベルは、なぜ幼稚園を構想・創設したか。フレーベル以前にも幼児教育の思想はあったし、幼稚園誕生以前にも幼児教育施設はあった。フレーベルの構想した幼稚園は、前時代・同時代の幼児教育思想・施設に比べて、どんな特徴を持ったか。
 本論文では、以上の問題意識に基づき、いくつかの先行研究・翻訳史料を用いながら、誕生時における幼稚園の歴史的意義とその本質に迫りたい。まず、フレーベルの思想的基礎になった啓蒙思想の特質を整理する。とくに18世紀後半における思想的到達点に焦点づけたい。次に、フレーベルの幼稚園構想を検討する。そこでは、彼の幼児教育思想と設立時の趣旨とに注目して検討する。以上によって、幼稚園誕生の原点に立ち返り、その存在意義を再確認する材料にしたい。なお、主要参考文献・史料は巻末[ここでは以下]に示した。


図1 F・W・フレーベル(Fröbel, Friedrich Wilhelm August) (1782~1852)
出典:倉橋惣三『フレーベル』岩波書店、1939年。

……

【主要参考・引用文献】
ルソー(今野一雄訳)『エミール』上中下巻、岩波書店、1962年。
フレーベル(荒井武訳)『人間の教育』上下巻、岩波書店、1964年。
カント(伊勢田耀子訳)『教育学講義』世界教育学選集60、明治図書、1971年。
フレーベル(岩崎次郎訳)『人間の教育・幼児教育論』世界教育学名著選8、明治図書、1973年。
カント(篠田英雄訳)『啓蒙とは何か』岩波書店、1974年。
ペスタロッチー(前原寿・石橋哲成訳)『ゲルトルート教育法・シュタンツ便り』玉川大学出版部、1987年。
ペスタロッチー(東岸克好・米山弘訳)『隠者の夕暮・白鳥の歌・基礎陶冶の理念』玉川大学出版部、1989年。
長尾十三二・福田弘『ペスタロッチ』人と思想105、清水書院、1991年。
村井実『教育思想(下)―近代からの歩み』東洋館出版社、1993年。
ペスタロッチー(長田新訳)『隠者の夕暮・シュタンツだより』岩波書店、1993年改版。
小笠原道雄『フレーベルとその時代』玉川大学出版部、1994年。
小笠原道雄『フレーベル』人と思想164、清水書院、2000年。
教育思想史学会編『教育思想事典』勁草書房、2000年。
宮澤康人編『三訂版・近代の教育思想』放送大学教育振興会、2003年。
今井康雄編『教育思想史』有斐閣アルマ、有斐閣、2009年。
森川直『近代教育学の成立』東信堂、2010年。

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