女性の社会進出が目覚しいアメリカ社会。とは云え、大統領選挙に女性候補が登場することは滅多にないが、
女性初の大統領候補は意外に早く登場している。
１８７２年の大統領選挙に出馬したヴィクトリア・ウッドハル（１８３８～１９２７年）と云う女性だ。
１８３８年にオハイオ州で１０人兄弟の７番目として生まれたウッドハルは、家族と共に旅回りの薬売りショーで働いた。
やがて、催眠術が得意だった為、降霊が得意だった妹と共に姉妹で旅をする様になるが、
詐欺や売春で告発された挙句、とうとう殺人の疑いまでかけられて逃亡する。
ところが、１８６８年、二度目の結婚をしたウッドハルは、鉄道家として名高いコーネリアス・ヴァンダービルトと云う人物と親しくなる。
彼は妻を亡くして以来、自分にも死が近いと思い込み、恐怖に慄いていた。それを「霊能者」として慰めたのがウッドハルとその妹だった。妹はヴァンダービルトの愛人になり、姉妹はウォール街で株式売買業をスタートさせた。
二人は透視によって商売をすると評判になり、実際にかなりの金を稼いだが、これは透視などではなく、実はヴァンダービルトから仕入れた鉄道の内部情報を利用したものだったのだ。
さて、こうしてビジネスに成功したウッドハルは、「私は仕事で成功して男女の平等を証明した。ここに私は、大統領として立候補する」と宣言。まだ、女性の参政権が認められてない当時としては、画期的な出来事だった。
そして、議会の司法委員会から招かれて婦人参政権についてスピーチをしたことが切欠となり、
盛んになりつつあった女性解放運動と繋がりを持ち、その波に乗って益々力を持つ様になった。
ところが、さすがにイイことばかりは続かない。大統領候補として注目される様になると、如何わしい過去に対する噂がアレコレと飛び交う様になった。おまけに、アルコールが原因で別れた前夫が家に押しかけて来て、現在の夫と共に同居する様になる。
更に、ウッドハルを非難した牧師の不倫をバラしたことから、誣告罪で逮捕され、大切な投票日を刑務所で過ごす羽目になってしまう。選挙では数千票を獲得したものの、色々なトラブルが世間を騒がせ、ウッドハルは支持を失ってしまう。収入も激減し、豪邸を手放し、夫とも離婚し、その後、イギリスに渡ることになる。
やがて、講演活動を再開し、金持ちの銀行家と再婚するなど持ち前の強かさを見せたが、以前の様な名声は二度と取り戻せなかった。
呪い あなたの知らない不気味な世界
－その不思議な能力は神か悪魔かー
人々を操る怪しい呪術師
