猫が、寝ている私の顔を前足でさわったり、体の上を歩く。
ゴハンを食べたいのはわかるけど目覚ましが鳴るまでもう少し待ってヨ、と眠りに入りかけ、
しばらくして何か予感がして携帯電話の時間を見た。
4:23
えッ・・・これって4時23分のことか?
飛び起きざま、夫を揺すった。
「ごめん!遅くなった!!」
「んー、何時」
「4時23分」
夫も飛び起きた。
携帯電話の目覚ましをセットしたつもりが、していなかった。
本来なら3時半に起きて、4時10分には夫は家を出ていなければならない。
ゴハンを目指して我先に階段を駆け下りてゆく猫達に続いて走り、なかば投げるようにカリカリゴハンをボウルにいれ、
昨夜詰めておいた夫のランチを保冷剤とともにランチバッグに入れた。
座って朝食を食べる時間などないので、車の中で食べられるよう、洗った洋梨をタオルに包む。
「ごめん、ごめん、ごめん」
ハイスピードで髭をあたり、着替えて降りてきた夫に謝る。
「大丈夫、大丈夫、心配しないで。起こしてくれてありがとう」
夫が出かけたのは4時38分。
外は雨で、道路は濡れている。ハイウェイを使ってゆくので、無事に着きますように。
以前にも、こんなことがあった。
前の夫が、お得意様を駅で見送るので〇時(何時か忘れた)に起こしてほしいと言ったが
目覚ましがうまくセットされていなくて寝過ごした。
その時の前の夫の私の責め様といったら見せてあげたいぐらいだ。
「俺だけ行かなくて恥をかいた」「なぜ目覚ましをかけておかない」「なにやってるんだ」
私はその何倍も自分を責め、相手の怒り具合にいたたまれなくなり、プチ家出をした。
実家に行き「もうこれで離婚だ」と、どんよりと落ち込んでいる私に母と姉が言った。
「そんな大事なお得意さんなら自分で目覚ましかけて起きればいいんだよ」
「そうそう、あんたを責めるなんでお門違いもいいとこだ」
今なら、わかる。
ほんとうに母たちの言うとおりだ。
他にも見送る人たちがいたなら、べつにいいじゃないか。天皇陛下でもあるまいし。
こんなふうに、『あの時、さっさと離婚してしまえばよかった』ということが山ほどあるが
私には、あの任期を勤め上げる必要があったのだろう。
4時23分に飛び起きた時、私は瞬間にあの過去の場所に戻っていて
心臓が縮むような感じがした。
「またやってしまった、私が悪い」
けれど、私がどんなに自分を責めても、夫はまったく平気でいつもどおり。
「すごく道がすいてて間に合ったよ」
夕方、遅刻しなかったか尋ねた私に、そう言って笑った。
あの時にできた心のシミが、薄くなって消えていく。
たぶん、今は私が私を、もっと大切にすることができているから、
自分につらく当たっていた頃に自分で作ったシミを、こうして地道に消してゆくことができるのだろう。
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ゴハンを食べたいのはわかるけど目覚ましが鳴るまでもう少し待ってヨ、と眠りに入りかけ、
しばらくして何か予感がして携帯電話の時間を見た。
4:23
えッ・・・これって4時23分のことか?
飛び起きざま、夫を揺すった。
「ごめん!遅くなった!!」
「んー、何時」
「4時23分」
夫も飛び起きた。
携帯電話の目覚ましをセットしたつもりが、していなかった。
本来なら3時半に起きて、4時10分には夫は家を出ていなければならない。
ゴハンを目指して我先に階段を駆け下りてゆく猫達に続いて走り、なかば投げるようにカリカリゴハンをボウルにいれ、
昨夜詰めておいた夫のランチを保冷剤とともにランチバッグに入れた。
座って朝食を食べる時間などないので、車の中で食べられるよう、洗った洋梨をタオルに包む。
「ごめん、ごめん、ごめん」
ハイスピードで髭をあたり、着替えて降りてきた夫に謝る。
「大丈夫、大丈夫、心配しないで。起こしてくれてありがとう」
夫が出かけたのは4時38分。
外は雨で、道路は濡れている。ハイウェイを使ってゆくので、無事に着きますように。
以前にも、こんなことがあった。
前の夫が、お得意様を駅で見送るので〇時(何時か忘れた)に起こしてほしいと言ったが
目覚ましがうまくセットされていなくて寝過ごした。
その時の前の夫の私の責め様といったら見せてあげたいぐらいだ。
「俺だけ行かなくて恥をかいた」「なぜ目覚ましをかけておかない」「なにやってるんだ」
私はその何倍も自分を責め、相手の怒り具合にいたたまれなくなり、プチ家出をした。
実家に行き「もうこれで離婚だ」と、どんよりと落ち込んでいる私に母と姉が言った。
「そんな大事なお得意さんなら自分で目覚ましかけて起きればいいんだよ」
「そうそう、あんたを責めるなんでお門違いもいいとこだ」
今なら、わかる。
ほんとうに母たちの言うとおりだ。
他にも見送る人たちがいたなら、べつにいいじゃないか。天皇陛下でもあるまいし。
こんなふうに、『あの時、さっさと離婚してしまえばよかった』ということが山ほどあるが
私には、あの任期を勤め上げる必要があったのだろう。
4時23分に飛び起きた時、私は瞬間にあの過去の場所に戻っていて
心臓が縮むような感じがした。
「またやってしまった、私が悪い」
けれど、私がどんなに自分を責めても、夫はまったく平気でいつもどおり。
「すごく道がすいてて間に合ったよ」
夕方、遅刻しなかったか尋ねた私に、そう言って笑った。
あの時にできた心のシミが、薄くなって消えていく。
たぶん、今は私が私を、もっと大切にすることができているから、
自分につらく当たっていた頃に自分で作ったシミを、こうして地道に消してゆくことができるのだろう。
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