別に期待してた訳じゃなかった。
けど、そこには素敵な出会いが待っていた。
数年ぶりにやって来た、とある町の神社。
町外れに位置しているためか、地元の人でも滅多に訪れることはない。
事実、私が境内に足を踏み入れた時も、人は誰一人としていなかった。
とりあえずお参りして行こう。
そう思った私は、本殿へと歩みを進めたのだった。
鳥居から本殿までの距離はおよそ20m。
その間には等間隔に石畳が敷かれている。
私はゆっくりと、しかしテンポよくその上を歩いた。
後ろから私を照らす太陽が影を作り、それを踏んで進んでいく。
長く伸びたもう1人の自分と戯れているような感じがした。
途中にある段差を越える。
神聖な場所に入ったんだと半強制的に認識させられる。
かといって、私のスタンスになんら変更はない。
ただお参りをするだけだ。迷うことなく前へ進む。
本殿の目の前にやって来た。
そして気付いた。柱の影からこちらに注がれる視線に。
まだ子供の猫が、不思議そうにこちらを見つめている。
微動だにしない子猫。私の体も固まったままだ。
どうすることもできないまま、時だけが過ぎていく。
「穢れなき眼」で誰かに見つめられた時、
私はまるでメドゥーサに出会ったかの如く、身動きが取れなくなる。
己が犯してきたカコの過ちに対する罪悪感と背徳感に苛まれるからだ。
自らのアイデンティティが揺らぐ。
そこに言葉はなく、ただこちらを見つめる視線があるだけだ。
それなのに、大きく揺さぶられる自覚しているはずの自己。
私は自責の念にとらわれたまま、どうすることも出来ない。
いつまでも膠着状態は続くと思われた。
けど、新たな局面がやって来た。明けない夜はないのだ。
意外にも状況を打開したのは私自身だった。
「ガラングァラン」という音。
ふいに当初の目的を思い出した私は、お参りを実行した。
瞳を閉じて祈る幸せ。明日も晴れ渡った空が見たいと願った。
それだけ。ただそれだけ。
目を開け、再び柱の向こうに目をやる。
すると、そこにはもう子猫の姿はなかった。
よくは分からない。
けど、1つの壁を乗り越えた気がした。
それはとても小さな壁だったけど、今の自分にはそれで十分だった。
別に欲なんかない。最初からそうだったじゃないか。
つまらないことに思い悩むことはやめよう。
「他人の評価を気にするなんて、お前らしくもない。」
心の中で誰かがつぶやいた。
今だから分かる。きっとそれはもう1人の自分だ。
踵を返し、再び私は石畳の上を進む。
帰路につくためではない。次の目的地に向かうためだ。
旅は終わらない。いや、むしろ始まってさえいない。
目の前に大海原が広がっている。舵を取るのは自分自身だ。
自分に言い聞かせるように、頭の中で繰り返した。
反芻しては、その言葉の持つ重みを噛み締めた。
沈む夕日に照らされて、
後ろにはさっきよりも長い影が伸びていた。
オマケ。境内にいた別の猫。
この子は後日、改めて登場予定。お楽しみに。
さてと、一呼吸おきますか。
清々しいお参りだったようですねぇ。
にゃんこの澄んだ瞳がすべてを物語ってます。
あ~私ならものの3行で終わってしまいそうな情景なのに…
タツヤさんってスゴイ。。
実はこの神社、私にとって一番馴染み深い神社なんです。
清清しい気持ちになれたのも、そのためかもしれません。
本当は子猫の写真と
「見つめられると動けない」って言葉だけで記事を構成させ、
それで完成にしてしまおうと思ってたのですが、
つらつらとペンを走らせてしまいました(^_^ヾ
私のいつもの悪いクセです。なんとかならんのか。
無理やり小説っぽく仕上げたら、
言わんこっちゃない、文章力の無さが浮き彫りに(-_-;)
読書を全くしないと、こうなっちゃうんですね(爆)
それでも褒めてもらえたので、嬉しいです。ありがとうございましたっ!