むらくも

四国の山歩き

牛の背・天狗塚…徳島県

2016-02-23 | 四国の山歩き
牛の背、天狗塚               うしのせ、てんぐづか



山行日                   2016年2月18日 
標高                    1757.2m、1812m
登山口                   三好市東祖谷西谷林道 堰堤西
下山口                        同上    天狗塚登山口
駐車場                   なし(林道広い路肩)※天狗塚登山口付近に有り
トイレ                   なし
水場                    オカメ避難小屋付近
メンバー                  ピオーネ、むらくも



この冬は比較的暖かく、山に積もる雪は例年より極端に少ないところへ、4~5日前の気候などは五月上旬並みの気温まで跳ね上がってしまい地肌が剥き出しになった。
そんなおり、16日、阿讃山脈上空に重たく分厚い雲が覆い、カーテンを垂らしたような雪が降り、久方ぶりに山は一面白くなった。
翌日、道端で出会った、標高927mの雲辺寺山から降りてきたお遍路さんの話では、20cmの積雪の中を白い息を吐きながら歩いてきたとのこと。
天気予報を見ると、翌18日は平野部でも氷点下1度、日中の気温も一ケタにしか上がらない見込み。
今季、四国での雪山は、この機を逃すともううしろにはそうはないかもしれない。

前夜、久しぶりに棚から取り出したワカンをザックに括り付けたあと、お風呂に飛び込んで、ささっと布団に潜り込んだ。
行く山は牛の背から、天狗塚へかけての周回。
牛の背は茫洋としていて、まるで自分の人生のようで、霞がかかったようにぼやーっとしていてなにがなんだかわからないといった風情で、常にボケーッとして過ごしている人間としてはなんとなくおのれの姿をみているようでイヤなのですが、なんでかしゃん惹かれる。
ひょっとすると思いとは裏腹に、心の底ではとらえどころのないのっぺりした牛の背中のような台地が好きなのかもしれない。
稜線を歩いていると、背中に跨っているようで、歩く後方ではときおりモリッとした段クソが捻り落ち、ハエをピシッと叩く尾の音が聞こえてくるようなのどかな山だ。



標高410m、猪鼻トンネル手前の気温は-3度、走る路面は不凍結剤を撒いているのか、濡れたように鈍く光る。
しかし、まだ朝靄の残る祖谷トンネル付近に差し掛かっても道には雪がなく、トンネルを抜けたところでやっと、除雪した雪の筋が申し訳なさそうにして道端に残っていた。
例年のこの時期とは大違、これじゃー、山は霧氷どころではなくて、ワカンの出番はないかもしれん。

落合郵便局を過ぎて、西山林道へ入ってすぐに、工事中につき4km先より全面通行止めの看板があった。
西山集落あたりからところどころで道が白くなり光りだした。
四駆に切り替え、ノロノロっと高度を上げていく。
4km先ってどこらへんやろ、天狗塚登山口よりは手前やろか、妻と二人で首をひねりながら車を走らせる。
路面には複数の真新しい轍がついていた。
同じく登山者の方の車かと思ったが、違っていた。
堰堤付近にはいくつかの重機が置かれ、工事関係者の車が止まり、作業が行われている。

路肩に駐車し、作業をされてる方に駐車のお断りと、歩いての通行が可能かどうかお伺いしたところ、かまわないよとのこころよい返事。
駐車地点からピストンでもいいかなと思ってたが、これで周回OK、あとは積雪次第。

従前は堰堤から取りついて登ってたが、歩きよい林道が堰堤ちょい西側に造成されていて、そこから歩き出す。
時刻は8:15出発。
林道の積雪は10cmあるかなしか、空気は冷たく暖かい車内で温もっていた体は一気に冷え、目も覚める。
空は浮浪雲が浮かび、陽は真っ青な空気を一気に突き刺すようにして山に降り注ぎ、樹木や道に積もった雪に反射し眩しい。


   西山林道駐車地点からの風景              林道登山口       

林道の幅は2.5mくらい、積もる雪はちりめん模様に影を作り、綿あめのようなふわふわッとした柔らかさ。
道はところどころで九十九折れにクキッと曲がり、緩やかな傾斜を描いていて、年寄りや女性の足には随分と優しい。
見覚えのある造林小屋が左下林の中にあって、気温が上がればたちまちにズリ落ちそうな雪が薄く屋根にへばりついていて、トタン屋根の波跡のようなつららが細く垂れさがっていた。


            林道                     造林小屋                 

周辺をつつみ込みながら漂う霧や白銀の雪原が幻想的な世界を作り上げるように、普段うっとう暗い植林もいったん陽光があたればそれなりに美しく見せてくれる。
開けた場所に出た。
カミキリムシの幼虫がミカンの木に穴をあけ、果木を台無しにしてしまうが、駆除のため白いペンキ状の薬が幹にベタベタ吹き付けられる。
それと同じ姿をした雪を纏った樹木の向こうには祖谷山系の山並みが、白い頂をキラキラさせていた。


           植林                   林道カーブから眺めた景色      

林道はいったんネットを張ったところに出て、以前の山道と合流するが、わたしたちはあくまでも林道を追う。
お馴染みの尻尾を引きずったネズミの足跡が戦車のようにコトコトと雪の上を這いずり、一つの穴へ消えている。


        アニマルトラック                    巣穴?

林道は途中いくつかの枝道があって、かつての堰堤からの山道から眺めた景色を思い出しながら適当に登っていくが、稜線の手前で林道を離れ上へ。
そこそこの大きさの岩があって、そこが亀尻峠から続く尾根道との合流地点(亀尻分岐)です。
熱いお茶を飲み、一息入れるが、帽子をかぶった頭からは湯気が立ち上り、空気は冷たくて熱いようなひやこいような、「おやじ、ひやあつ大一丁」体はうどん状態だ。
岩の左横をすり抜けて、ここからはいよいよ牛の背への尾根ルート、標高は1240mに達しているのでこれから先の積雪の状態が気になるところです。
やや短くザレたトラバース気味の山道をクキクキと三回折れ曲がるが、足元は少々あぶなかっしくて、こういうところでは簡易アイゼンが滑り止めになって助けてくれる。


         亀尻分岐                       斜面         

林床の尾根道をほぼ直登するが、カモシカと思われる足跡が先導役を果たしてくれる。
多くの動物は人のふみ跡を利用することで知られていますが、人もまた山道以外のところでは獣道を利用することがときおりある。
ふみ跡の全くないヤブを歩くよりは、獣道は断然歩きよくなによりも速くて安全かつ合理的。
カケスがジェーと鳴く。
おや、カケスって夏鳥と思ってましたが、留鳥なんですね。


     先行するアニマルトラックを追う妻         風に飛ばされたドライフラワー             

植林帯が終わり、自然林が増えてくるとやがて登山道は尾根左側が切れ落ちるような斜面になり、景色が開ける。
ヒガラかなにかの小鳥の鳴き声が聞こえ、随分と癒される。
樹木が少なくなり、笹が増えてくるともう森林限界地が近くなったことを示す。
雪質はあいかわらずふかふかでしたが、30cmを越え、深いところではずっぽり膝まで潜り込む。


    標高おおよそ1540m付近風景        標高おおよそ1570mの雪の状態

森林を抜けたところで、登山道を離れ、西(右)の高いコブへ寄ってみた。
そこからは中津山や国見山、そしてかつて歩いた樫尾阿佐尻山や三方山がくっきり。


                   森林を抜けて笹原へ

積雪は笹原を埋め尽くしてあたり一面銀世界、とはなってませんでした。
雪の上にわずかにミヤマクマザサの葉やコメツツジの細い枝が出て、風の跡を残してます。

前方の針葉樹の林からピーッと鹿の高い鳴き声が響き渡り、私たちの前を一斉に横切った。
普段ならドドドーッと地響きが聞こえるのですが、今日ばかりは音もなく、鹿たちのしなった弾力のある黒いシルエットが雪原を走り抜けてゆく。


           風の跡                        鹿

鹿とカモシカとわたしたちの足跡以外にはなにもない静かな雪原を、ときどき振り返りながら上り詰めてゆくが、いつもながらきつい。


                      妻はやや遅れ気味

いったい何度足を止め、息を整えただろうか、やっと雪の中にくっきりと目にしてわかる十字路に到着した。
この笹の中に残った十字路は古からの道だと思われるが、展望の優れた三角点のあるミツコバと言われるところをほんの少し無視したような位置にある。
亀尻から登ってきて、そのまま十字路を直進すると、ミツコバには寄らず、天狗塚へ行く。
右(南)に折れると谷道かもしくはオコヤトコへ下る。
昔、修験者の休息の場所であったといわれるミツコバ付近がなぜ十字路にならなかったのか不思議ですが、案外重要なポイントではなく、気まぐれに立ち寄って景色を眺めただけの休息地点だったのかもしれない。

左(北)に折れ、6分で三角点・古味に到着、時刻は11:54だった。
雪は風で飛ばされるのだろう、天狗の頭がちょっこり見える牛の背稜線の積雪は思ったほどにはなかった。


     十字路から眺めた天狗の頭             三角点・古味         

シートを広げて食事とした。
冬の時期はカチカチに凍り付くおむすびは敬遠してパン、妻は熱いお湯を注いでインスタントラーメン。
展望が素晴らしくて、幾重にも山襞が刻まれた祖谷の山並みをしばし眺め楽しむ。


                寒峰、前烏帽子、落禿、落合峠

食事が終わって立ち上がった瞬間、天狗塚方面の真っ青な上空に、きらりと光る真っ白な機体がこちらに向かって一直線に飛んできた。
手を振った。
ロックウィングともウィングウォークともバンクを振るともいうそうですが、翼が左右に振られ、手ふりに応えてくれた。
頭上をぐるっと旋回して、もう一度ウィングウォークを繰り返しながらこちらに近づいてくる。
妻がズームでカメラキャッチした。
機内でパイロットが手を振っている姿が写っている。
楽しくてヤケに感動しました。


                     吸い込まれそうな青空と白い翼

エンジン音をかすかに響かせて、西の空へ去っていくのを見届けたあと、天狗塚へと歩く。
真横から吹き付ける風が冷たく顔の皮膚がピキピキと痛い。
風に乗った雪が足元に舞い、キラキラとダイヤモンドのように光りをまき散らしながら谷へと吹き飛ばされてゆく。


          牛の背Ⅰ                     牛の背Ⅱ

天狗の池で天狗塚をバックにカメラを構えたが、液晶モニターに写る雪景色は真っ黒で何も見えない。
構図が決められず適当に撮ったら、天狗の頭がちょん切れてしまった。


                    天狗塚と天狗の池

吹きおろす冷たい風は襟元から体の中へ浸透して、汗ばんだ首筋を乾かせてはくれるが、シャツまでは乾かしてくれなくて、なんとなく肌着がべたっとまとわりつくような感じだ。
天狗が目前に迫ってきた。
顔をグッと上へ持ち上げ、天狗を仰ぎ見ながら急斜面に取りつく。


                      天狗塚直下

笹や木の枝をつかみながら体を持ち上げる。
汗が噴き出してきた。
3~40歩ほど足を持ち上げては休み、その都度後ろから来る妻と牛の背を振り返る。


                      牛の背全景

13:48、雪が風で吹き飛ばされ地肌が露出した山頂に到着。
そこには動物の足跡が残されていた。


        天狗塚山頂                   山頂のアニマルトラック

熱いコーヒーをいっぱいと思ったが、急いで下山することにして、写真を撮るにとどめた。


                  国見山・中津山・寒峰

今日は比較的大気が澄んでおり、大山までは見えなかったものの笹ヶ峰と石鎚山が小さくくっきり。


                     落合峠・矢筈山

剣山と次郎笈が三嶺の奥に見え、地蔵の頭から続く尾根先には綱附森、やれ、この稜線はまだ一部しか歩いたことがない。
待っとれや、必ず行くきんなと綱附に向かってつぶやいた。


                 地蔵の頭・西熊山・三嶺

南の谷道への尾根には、幾筋もの獣道が雪の上に血管のように浮き出ている。


                    谷道への尾根

西山分岐に向かって天狗を下り、鞍部にある岩場を過ぎて、天狗を振り返ってみた。
わたしのなかでは、天狗は何度も何度も振り返らずにはいられない山で、百名山の石鎚山や剣山もこれほどには振り返えることはない。


           下山開始                       天狗塚

西山分岐の陰に回ると風が無く、シートを広げて一休み。
山で淹れた熱いコーヒーは格別な味がして、美味しいと感じる。
そしてなぜかホッとするのです。

さて、ここからは下山口のある西山林道までは下る一方。
吹き溜まりのひざ上までの雪を跳ね上げながら下るが、何度か雪の下の不安定な石のために膝から崩れ落ちて、ちょっとしたはずみに一度は顔から雪に突っ込み、もう一度は靭帯断裂した後遺症の残る左ひざを石に打ち付け、あまりの痛さにうずくまってしまった。


           西山分岐                   下山Ⅰ

おおよそ1700m付近まで下って左後方を振り返ると、ちょうど牛の背と天狗塚の一部を見ることができる。
ここが天狗を見るラストの見返り坂だ。


            下山Ⅱ                    ダケモミ

ダケカンバやダケモミのピークを越えて、作業道のある伐採地までたどり着く。
あと一息だ。


         1476mピーク              東祖谷久保と矢筈山

16:38、鉄階段のある登山口へ下山。
青空に月がポツンと浮かぶ風景を眺めながら西山林道を堰堤方向に下って行った。


       天狗塚登山口間近                     月

林道はところどころで真っ白に凍り付き、念のために装着したままにしていた簡易アイゼンの爪が、バリバリ音を立てて道にへばりついた氷を突き破る。
堰堤付近の林道復旧工事は今日の作業は終了し、朝、作業をしていたみなさんは引き上げてしまっていて静かだった。
※工事期間の終了予定日は本年3月29日。


          西山林道                  工事をする堰堤付近

林道歩きが42分、やれやれの思いでやっと駐車地点に戻りました。
長かった。
陽が西へ傾き、山はピンク色に染まってます。
久しぶりの雪山歩き、帰宅してお風呂で体をほぐし、念入りにストレッチをしましたが、翌日から二日間もひどい筋肉痛で、階段を上がるのにギクシャクグクシャク、妻と二人の腰カガメロボット歩き、辛かったわー。


   駐車地点と左山手に登山口の林道             夕景

登山口8:15-尾根分岐9:09-11:54ミツコバ(三角点・古味)12:25-天狗の池13:03-天狗塚13:48-14:30西山分岐14:47ー1476P15:49ー下山口16:38-17:20駐車地点


グーグルマップ(登山口などがわかる地図)→こちら
ルートラボ(距離、時間がわかる地図)→こちら
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6 コメント

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??? (坊主)
2016-03-03 18:41:07
むらくもさんが見当をつけたとこは500mはありそう。
450mだと421の尾根の450m付近の等高線の間隔が広くなっとんで、ここに小ピークでもあるんやろか?
ピンポーン (アンジーパパ)
2016-03-03 21:53:36
ご名答U+203CU+FE0F
風呂上がりの寛ぎタイム (むらくも)
2016-03-03 22:47:46
やられたー。
負けたー。

その尾根にも目をつけてたのよ。
ただ、県境尾根からだいぶ下やし、ピークらしいところもないしね。
それと決め手になったのは、常政から神社への道が歩きよい道が過去にはあっただろうから、それをなぞると、パッと目に飛び込んだのが166mPのちょい東に延びている車道だったんだわ。
そうなんだ、△174.1の東の谷下へ延びているくねくねとチヂれたような池傍への車道だったんだ。

ヂッグジョー、グヤジーイ!

今日の日中は暑かったなー。
汗が噴き出たわ。
むふふ (坊主)
2016-03-06 15:00:21
G+315ST+NH4Dやな。

鳴嶽方向にきれいな尾根がのびとるのお、周回でけそな。

猿額山は。400m~430mと450m~500mがなだらかになっとるけん、ふもとからはちょっとしたピークに見えるんかなあ。
天気持ちましたなー (アンジーパパ)
2016-03-06 21:56:23
むらくもさん、坊主さん今晩は。
天気予報で今日は最初から諦めてましたんよ。
ところがどうです、持ちましたがな。
朝の内に飯野山のエビネロードを歩いただけでしたわ。
夕方までちゃんと持つんなら貝の川股歩いたら良かったわ。

ところで猿額山の事ですがエントツ山さんの掲示板に投稿しました。
坊主さんが見当を、付けたように肩になってる
と思いました。
しかし雰囲気としてはあの辺りアバウトに
猿額山と呼んでいたんではないかと思っています。
またよくご存知の方がおられたら教えてください。
帰りはP162の尾根に入ってしまい最後まで尾根を通して歩こうとしたのですが木の密集が酷くなったんで適当に降りました。
ログ上の下の方で二つの線が合わさる辺りが
前宮です。

犬返しの鐘撞きに行かんとね。
むしっとした一日でした (むらくも)
2016-03-06 23:54:17
あららら
またまた、読みが外れてしまいました。
△174.1の尾根を辿るものと思い込んでましたが、166の尾根だったんだ。
あきません、わたしゃ、とことんダメですわ。
標高420から次の肩の450までは等高線がややせりあがってますね。
そして480から平たんになってるので、ふもとから眺めると一つのピークにみえても不思議ではないかもな。
一応グーグルマップの航空写真と、別途地形に切り替えて等高線を入れた地図とで確かめてはみたのですが、結局わからなかった。

木曜あたりから天気は荒れそうですね。
お山では雪がちらつくかも。

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