【Culture & Marketing】 コンテンツ プロデューサーの徒然

音楽を中心としたカルチャー・サブカルチャー、そしてマーケティング関係で私の琴線に触れた事柄や書籍を徒然に紹介いたします。

「重層的な自分」から生まれたヒット (『第四の消費』 三浦展 より)

2012年07月26日 | カルチュラル・キーワード備忘録
重層的な仮面は、少なくとも嘘の自分ではない。こうして、ここに「複数の自分」という現代特有の自己意識が生まれることになるのである。

企業にとって、自分らしさ神話の戦略は消費者を簡単に踊らせる手法というわけではない。およそ共犯関係というものがすべてそうであるように、共犯者同士はつねに相手を疑い、相手から裏切られる。同様に、「複数の自分」を持つ消費者は、企業にとってはますますとらえがたいものに「進化」してしまったと言える。

第三の消費社会の後半である一九九〇年代には、それらの「複数の自分」を持つ消費者の増殖が不可解な現象を生み出した。音楽CDが典型的だが、一部のCDが数百万枚のメガヒットとなる半面、数百枚単位で売れるマニアックなCDも確実に存在するが、数万枚の定番的なヒットがなくなるという事態である。これは「複数の自分」という視点を導入しないと理解できない現象である。

仮に一〇〇万人の消費者がいたとしよう。そして彼らがそれぞれ一貫したひとつの自分を持っていたとしよう。彼らの二五%が同じ志向性を持っているとすれば、二五万枚のセールスが期待できる。

ところが彼らがそれぞれ四つの自分に分裂していたとしよう。すると一〇〇万人でありながら「自分」の数は四〇〇万ある。四〇〇万の「自分」が二五%支持すれば一〇〇万枚のセールスが可能になる。つまり一〇〇万人全員が同じCDを買うということが起こる。これがメガヒットのからくりではないかと思う。

(中略)「同調する自分」に訴求すればメガヒットが生まれ、「差別化する自分」に訴求すればセールスは極小化する。逆に、「ひとつの自分」の時代のような中くらいのヒットが生まれにくくなったのである。

これは、生活水準が上がり、相対的にCDの価格が下がったことも背景にはある。若者の可処分所得に対してCD(昔はLP)の価格が高ければ、自分が一番好きなCDだけを買う。CDの価格が安ければ、自分が本当に好きな一枚と、あとは試しにみんなが好きなCDを一枚といった買い方ができる。そうなればメガヒットは生まれやすい。しかも一九九〇年代は、そこに団塊ジュニアという人口の多い世代がいた、ということであろう。

(同書131~132ページより)

ここで三浦のいうところの「重層性」「複数の自分」という概念は、目新しくはない。
またCDだけの話ではない。
以前、何度も書いたが、90年代後半に市場規模がマックスとなった業種は少なくはないのだ。
三浦の論じる「第二の消費社会」と「第三の消費社会」の異なる点、それが、「『ひとつの自分』の時代のような中くらいのヒットが生まれにくくなった」ことである。

では、なぜゼロ年代になってから「売れなく」なったのか?
まず、そうそう卓越した才能は生まれないということ。
メガヒットの後には「飽き」がくること。
「踊らされた感」もある。
「大ヒット」の構造を考えてみよう。
「大ヒット」とは、「本来、買わなくてもよかった」層(グレー層、ライト層)が買ったからこそ「大ヒット」となるのである。
だから、「何で私はあのときあれを買っちゃたんだろうか?」という醒めた感覚が生起するのだ。

それが私がずっと前から言ってきた持論だ。

また、三浦の定義するところの「第四の消費」がゼロ年代前半から始まったこともある。
(「第四の消費って何?」という人は書籍を読みなさい!)

が、一番大きい要因は、三浦も指摘するように、90年代後半に人口ボリュームである団塊ジュニアの諸君の消費意欲だろうね。この時期を過ぎれば、結婚・出産・育児もあっていくら団塊ジュニアの諸君もそうそう、生活必需品以外の支出は抑える。

(もう時効?と考えてるから云うけど)私は30代後半のとき、団塊ジュニアの女性(当時は20代後半)とお付き合いしていたことがある。
彼女の部屋のCDのコレクションを見たとき、彼女の「複数の自分」というものを強く実感した覚えがある。
短い間だったので、彼女から彼女の本当の「パーソナル・ミュージック」(拙著PDF版111~118ページ参照。男性と正反対で女性は隠しがち・・・)のことを聞くことはなかった。

では、これからどうなるのか? どうすればいいのか?
それは生活構造の変化の話であり、有償の仕事の話になるのでここでは書かない(笑)。

第四の消費 つながりを生み出す社会へ (朝日新書)
三浦 展
朝日新聞出版

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