ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

#14 ノーノーミンノーノーミンノーノーミンノークライ。

2017-06-15 03:27:18 | Weblog


十四曲目。第2部の七曲目。「裸の王様」(cd未収録)

去年の夏の台風。僕の畑は水没した。僕の耕運機も水没した。そのまま放っておいたら、予想通り二度と動かなくなってしまった。
水没を機に、僕は農民を辞める宣言をして旅に出た。
でも、それは嘘だったのである。そう、僕は今も農民なのである。

放っておいた畑。草がスゴイ。何もかもスゴイ。荒れ地だ。ここはただの荒れ地だ。そして、僕には耕運機がない。

手にするのはクワ一本。ザ・農民である。

クワを入れて土を起こす。起こした土を手でほぐす。ほぐしながら、雑草や雑草の根を取り除く。バカみたいな作業である。今時、こんな事をしている農民がいるのか?と思いながら、少しずつ少しずつ進む。畝を一本作るのに半日かかる。

ノーノーミン・ノークライ。泣かない農民はいないのである。
ボブマーリーの唄を歌いながら、少しずつ少しずつ、畝を作るのである。

きっと、また台風がやってきて、僕の仕業は、またすべて流されてしまうのである。

でも、それでもいいのである。

ノーノーミン・ノークライ。泣かない農民はいないのだから。

ズンチャズンチャ、ズンチャズンチャ。レゲエのリズムなのである。


裸の王様。

僕がオーストラリアを旅していたのは、二十歳を少し過ぎた頃である。若かった。とても若かった。

しかし、当の本人は、自分を「若い」とは思っていなかった。全然思っていなかった。
もう立派な大人である。オーストラリアまでやって来て、仕事を探して、車を買って、国中を駆け巡っているのである。

仲間の中には、僕よりも若いヤツらがたくさんいた。だから、僕はもうすでに「若くなかった」し、「若いっていいよな」と思ったりもしていた。僕はすっかり大人だった。

僕はもうすでに大人だから、なんでも分かっていたんだよ。だって、もうすっかり大人だから。

四ヶ月程暮らしたメルボルンを発つ朝。仲間たちに別れを告げる、輝かしき出発の朝である。

僕の車の中に入れてあった荷物がことごとく盗まれてしまっていた。人生の中で、一番呆然としたのは、あの時だったのかもしれない。

何もかもなくなってしまった。何もかもというのは嘘だが、何もかもに等しいくらい何もなくなってしまった。残ったのは、着ていたTシャツとジーンズと、ギター一本。

笑えなかった。きっと、僕は泣いていた。

出発は数日遅れた。友人の家で数日を過ごした。

友人や友人の友人が、色々なものを持って集まってくれた。・・・可哀想な僕のために。洋服がたくさん集まった。

集まってくれた友人の友人の歳上の女性が僕に言った。

「大変だったね・・・。でもね、こういうのもいつか、笑い話になる時が来るからね・・・。頑張っていきなさい」

僕は大人だったから、彼女の言っている意味が少しも分からなかった。
こーんな酷い目に遭って、それが笑い話になる時なんて来るわけないでしょうが!なーんにもなくなっちゃったんですよ!なーんにも!

その後も僕は生きた。時に懸命に、時に流れるままに。

帰国してすぐに、集まってくれた仲間に、この出来事を面白おかしく話している自分に気づいた時・・・「あっ!」と思った。

・・・笑い話になってるじゃん・・・。

僕はこの話を、もう何百回もしている。荷物をぜーんぶ盗まれて、そりゃあ大変だったんだぜ!という話を何百回もしているはずだ。

僕は若かった。大人なんかじゃなくて、子供だった。
何も知らずに、分かったような気でいるだけの、ただの子供だった。

僕の旅の糧というのは、そういったモノたちのことをいう。

そうやって、少しずつ大人になってきているはずだけど・・・きっと、まだまだ、何も知らない子供なのです。

僕に「生きる知恵と勇気と優しさ」を教えてくれるすべての人とすべての旅に、心からの「ありがとう」を。


「裸の王様」

くわえ煙草のブルージーンズ ちょっとしゃがれた声で
想い出すのはどれもこれも笑い話ばかり
生きるために必要な術を手に入れたような・・・入れていないような
あやふやさも・・・また笑える話

十五の夜に初めて一人旅に出た
夜行列車に乗り込んで 西へ西へ西へと向かった
ポケットの中の切符を強く握りしめていたのは
やっぱり少しだけ 不安だったからなのかもしれない

地平線が見渡せるオーストラリアの荒野で車がぶっ壊れた
泣き出しそうだった ちょっと泣いていた 結構泣いていたのかもしれない
神様を恨んだ なんで俺ばかりこんな目に遭うのか?
見上げると 空に虹が架かっていた

永遠の中僕は生きる 永遠の中僕は死ぬ
この世界は僕のものだ だって僕が目を閉じれば
ほら・・・この世界は消える


アフリカモロッコの砂漠で迷子になった
ただ途方に暮れていた ちょっと泣いていた どうしたらいいのかわからなかった
砂漠の真ん中で一人赤ん坊のように
一人泣いていた それでもなんとかするしかなかったんだ

情熱の国スペインで列車に置いてけぼりにされた
夜が更けて来て 寒くなってきて 震えながら過ごした闇の中で一人
空が白み始め始発の列車が駅に滑り込んで来るまで
僕は街中を走りながら寒さをやり過ごしたんだ

永遠の中僕は生きる 永遠の中僕は死ぬ
この世界は僕だけのものだ だって僕が目を閉じれば
ほら・・・この世界は消える

振り返ってみると上手くいったことよりもいかなかったことの方が多かった気がする
でも考えてみると上手くいかなかったことなんて何一つなかったような気もする
恐いものがないわけじゃないけれど 怖がって何もしないのは嫌だな・・・
そんなことを僕は想うようになったんだ

優しい人になりたいと僕は想う
優しくされた分よりももっと優しい人になろうと僕は想う
この世界に渦巻く敵意ってやつに太刀打ち出来るのは
笑顔と優しさ・・・それしかないんじゃないかと想うんだ

永遠の中僕は生きる 永遠の中僕は死ぬ
僕はこの世界の王様なんだ だって僕が目を閉じれば
ほら・・・この世界は消える

僕はこの世界の王様なんだ
だって僕が目を開ければ ほら・・・この世界が現れる


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