ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

壁と天井のある部屋

2010-10-14 08:56:58 | 2010夏北海道ツーリング~旅日記

オーストラリアを旅していた時の話。六十日間連続、テントで寝泊まりした。毎日500キロをノルマとして走る。何しろ東西4000キロ南北3000キロ、横にも縦にも長い島国、季節の進みを追い越すように気候が変わって行く。スタートは熱帯雨林気候のケアンズの秋、気温は40度を越す。熱帯、砂漠性、亜熱帯を通り抜けて南へ進むと、二ヶ月後には温帯性気候の真冬のエリアへ。気温は10度以下。
六十日目、キャンプサイトの受付のお姉ちゃんに、凍死されたら困るからキャンプはやめてと頼まれた。今日になっていきなり凍死なんてするもんか!と、テントの中で白い息を吐きながら、寝袋を頭まで被って凍えながら眠った。六十一日目、キャンプサイトに常設されているキャラバン(キャンピングカーみたいなもの)に泊まった。日増しに厳しくなっていく寒さに白旗を揚げたというわけだ。何しろ、風は南極から吹いてくる。


キャラバンに入って想ったこと・・・壁ってすごい、天井があるってすごい。キャラバンに設置された固いソファに座りながら、大雨に怯えながら過ごした夜のことや、砂嵐に飛ばされそうになった夜のことを振り返った。そう、壁ってすごいんだ。天井ってすごいんだ。・・・風も雨も防いでくれる。・・・雷だって恐くない。




北海道、三十七日間の旅。そのほとんどの夜をテントの中で過ごした。テント生活は嫌いじゃない。むしろ好きだ。モンゴル人が住むゲルのように、どこへでも運んで行ける自由さが好きだ。
でも、テントはいつだって危うい。
今回は二日目にしてポールが一本折れた。それから二日間はフニャフニャのテントの中で眠った。三本のポールのうち一本が抜けているのだから、どこからどうみても変な形に揺れる、それは危うい居住空間。強い風が吹けばイチコロだ。
瞬間接着剤と針金とガムテープで補修した。テントはなんとか元に近い形に戻った。
十七日目、折れたポールの違う箇所が折れた。応急処置をして凌ごうとしてみたら、前に折れた箇所が又折れた。今度は修復不可能なほどに折れてしまった。
三十日目にホームセンターで、案外良さげな代替部品を発見した。長ネジとボルト。それでなんとか見てくれは良くなった。それまでの二週間、足下がグニャッと曲がったテントを張り続けた。そのほとんどの日が強風。グニャグニャテントはなんとか持ち堪えてくれた。


テント生活は嫌いじゃない。むしろ大好きだ。






帰宅して、自分の部屋で眠る。温かいベッドは久しぶりだった。毛布にくるまったら、あまりに温かくて幸せな気分になった。でも何よりも、壁と天井があるってことが特別だった。壁と天井の存在・・・それはとても凄い事だ。素晴らしく凄い事だ。


ぐっすりと眠った夜に、僕は夢を見た。緑濃い草原に通る一本道を走っていた。見た事の無い場所だ。それは旅の続きだ。僕のバイクには、もちろんテントと寝袋が積んである。まだ、こんなに素敵な場所がある。・・・幸せな気持ちになる夢だった。目が覚めると、それは夢だった・・・それは少し寂しい夢だった。


僕のカラダはもう現実の中にいるのに、僕のアタマはまだ旅をしているみたいだ。

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