ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

小さな国の小さな町の物語(3)

2008-09-30 14:58:01 | Weblog
 小さな国を後にし旅に出た少年は、ほとんどは自分の足で、時には船で旅を続けました。少年は色々な国で色々な人と出会い色々なことを学びました。
 少年は旅の間に出会う人の世話になり、靴を作ってはお礼に代えました。そうして少年は旅を続けたのです。
 夢追い人にもたくさん出逢いました。世界一の画家を目指す人、一流の楽団への入団を目指す笛吹、世界一の羊飼いになりたいと願う人、七つの海を荒らす海賊になりたいと豪語する人・・・よりどりみどり。
 少年は自分の夢について考えていました。そして、少年は世界一の靴職人になるための努力を惜しもうとはしませんでした。どこの国のどこの街に行っても、少年の作る靴の評判はすこぶる良く、どこの国のどこの街でも少年は人々から「ここに残って最高の靴を作り続けてくれ」と引き止められました。それでも少年はさまようように旅を続けました。時には雨に打たれて時には嵐に見舞われ・・・。
 少年は決して夢を忘れることはありませんでした。そして少年は迷うことなく旅を続けました。

 いかにも素敵な紳士から誰もが夢見るようなプロポーズをされた少女は、その小さな国中の噂とは裏腹に、プロポーズを了承してはいませんでした。なぜなら、少女の心の中には、いつも少年がいたからです。

 プロポーズをされた数日後、二人が落ち合う約束の場所にいつまでも少年が現れないので、靴屋を訪れた少女は少年が旅に出たことを知らされました。そして靴屋の主人から「婚約おめでとうございます」と祝された時、道を往く人々から受ける数々の「おめでとう」の言葉を聞かされた時、初めて事の重大さに気づきました。少女は少年を失ってしまったのです。世界で一番大切な人が少女のそばからいなくなってしまったのです。そして少女は自分を責めました。少しでも心を揺るがせてしまった自分を責めました。少年が少女を想うのと同じくらい、少女は少年を愛していたのです。