世界の詩最新事情

毎月1回原則として第3土曜日に世界の最新の詩を紹介いたします。アジア、ラテンアメリカ、中国語圏、欧米の4つに分け紹介。

第3回 カルメン・ボウリョサ (Carmen Boullosa)―メキシコ― 久保 恵

2017-06-06 02:58:57 | 日記
世界の詩最新事情〔ラテンアメリカ〕
このラテンアメリカのカテゴリでは、スペイン語で書かれた詩を紹介する。
ラテンアメリカの国々は宗主国からの独立、軍事独裁といった大きな歴史的事件を共有しており、その中で自らの文化・歴史的ルーツや社会意識を織り込んだ詩が多く書かれてきた。今日、詩の主題は多様化し、国ごとの特徴を示すのは難しい。しかし、詩人による朗読会や、愛好家たちによる詩作のワークショップが盛んに開かれたりしていることからも、文学の中でも詩が高い地位を占めていることが見て取れる。また、若手の小説家たちの中にも詩を書く者が多い。

カルメン・ボウリョサ(1954年生まれ、メキシコ)
詩の他に小説、脚本、演劇作品も手がける。自伝的要素やメキシコの歴史を扱った作品が多い。出版した詩集は15冊を超え、現在も精力的に執筆を続けている。女性という要素を強く押し出した詩で知られている。



暗い水

カルメン・ボウリョサ


それは夜に険しくなる平原について話すこと、
果てしなく暗く、
地平線へと静かに際限なくあふれ出す

壊れた環、相手にされることなく広がるざわめきは、
数多の戦線に向かう軍隊と化する、
際限のない音、際限のない無理解

(あなたの匂いは特異な揺るぎなさ、
昼の味で唯一残っているもの)

わたしは手を開いている 様々な手触りの中でほどける
落ちる暗い水にさわるために
意識的に手を開いた わたしは何にも引き止められず、何も引き止めない。
この清らかな荒ぶる流れの中でロンダ¹ で遊べなくなってしまった。
この動きの中に 動くための手つかずの最後の隙間を置いてきてしまった、
最後の、そして永遠の砦を。

もうわたしを世界から区別するものは何もない。

-そう、あなたは特異な揺るぎなさ、夜の片側でわたしに近づくために
わたしを待ち受ける確実な瞬間、でもあなたは
暗闇が平原にもたらすものに名付けることができる唯一のこだま-

もうわたしを世界から区別するものは何もない、わたしは何も引き止めないのだから。
でも(風がゆるやかに吹いている)風に乗ってやってくる塵の一粒一粒が、水の一滴一滴が
わたしの中に入る前に一瞬動きを止める。
わたしを世界から区別するものは何もない、それは確かだが、何もわたしを貫かない。
すべてが、わたしを穿つ前の一瞬、わたしに印をつけ、支え、境界を定めるのだ。

¹ロンダ:手をつないで輪になり、歌を歌いながら回る子供の遊び。
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