「詩客」エッセー 第2週 

毎月第2土曜日に、遠野真さんの連載エッセー全13回、藤原龍一郎さん、北大路翼のエッセーを各1回掲載いたします。

いちばん美味しい星の食べかた 第12回 桑子真帆としあわせの両立 遠野 真

2016-12-08 19:33:19 | 日記
 彼女がいて恋愛が幸せなとき、漫画を読まなくなる、ということを不思議がっている間に十代が過ぎた。

 桑子真帆の顔を見ないとちゃんと眠れない。
 録画は味気ない。生で夜中に動く桑子真帆を見るまで寝たくはないのだ。

 他の重大な幸福が、僕から漫画やゲームを奪ったように、幸せはいつでも自設定かつ自達成だ。もし幸福に個人的な尺度がないのなら、すなおに両取りを目指せばいい。
 だのにどうして僕は漫画やアニメやエロゲーから離れてしまったのだろう。
 どうしていつか十一時の桑子真帆に合わせて飲み会を抜け出さなくなるのだろう。
 そうしないのは怠惰だけのせいじゃない。生きていく流れのなかで幸福が効率化し、絶対量は減っていく。当たり前のことだけれど。
 ちいさなしあわせを過剰に飾り立てて、言葉にしたいとはおもわない。

 初めて言葉で何かを表現する人になりたいと思ったのは小学3年生のとき、授業中の妄想だった。小説家がいいけど、小説ほど長いものが書ける自信はないし、じゃあ詩人になればいいじゃん、と考えるのは人情で、所詮は人情だから、そのあと、詩人になるにはどうしたらいいのか調べるようなことはしなかった。
 幸福の理論値の周辺にほかの幸福はない。しかし、理論値的な幸福を阻むことは幸福の否定でもある。

 桑子真帆が笑んでいる。
 桑子真帆の笑顔は動作でなく状態なのがいい。
 最高かよ、というネットスラングのことを少し考える。
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