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連載エッセイ しとせいかつ 第8回 夏、すりきず、焦げて図太い向日葵がすき   亜久津歩

2015年08月01日 | エッセイ

  青い空は動かない、
  雲片(ぎれ)一つあるでない。
    夏の真昼の静かには
    タールの光も清くなる。

  夏の空には何かがある、
  いぢらしく思はせる何かがある、
    焦げて図太い向日葵(ひまわり)が
    田舎の駅には咲いてゐる。

  上手に子供を育てゆく、
  母親に似て汽車の汽笛は鳴る。
    山の近くを走る時。

  山の近くを走りながら、
  母親に似て汽車の汽笛は鳴る。
    夏の真昼の暑い時。

           (「夏の日の歌」中原中也)


夏の詩は、情景の詩も、戦争の詩も多く読んできたが、近頃はこの一篇がよく浮かぶ。そして浮かびあがる度に、この「母親」が実母よりも自分自身へと近づいてくる。だがわたしの汽笛はきれぎれだ。妊娠6カ月、幼稚園児の息子は夏休み、炎陽とふたつの火球にしぼられる日々である。

そんなこんなで今年も2/3を終え、「しとせいかつ」も第8回。ふりかえると、詩がすき。たのしい。そんなことばかり書いている。逆に、ネガティブなことはあったかな…とぼんやり考えていると、ちょうど(?)若い詩人からある相談を受けた。それで思うところもあり、今回はわたしのちょっとした“すりきず”について。2つばかりお話ししたい。

 

「詩を汚すな」と言われたことがある。社会問題やメッセージあるいは個人的な欲求を作品に持ち込むなということであったり、商業的な活動や大仰な広報は控えよということであったりした。
「影では“みんな”言っている」
「誰も言ってくれないだろうから“あなたのために”教えてあげた」
この定型のようなアドバイスも合わせて頂戴したが、“みんな”とは誰かと尋ねて回答を得られたことはない。書き手として「もしかしてわたし、つぶされちゃう?」と感じる勢いであったが、元より地味なこともあり実害はなかった。

2

インターネット上の詩歌の催しに参加したときのこと。その日、ある地域に不幸があったとニュースで知った。わたしはただ、詩を書いていた。そこへ不意に「不謹慎、非常識、無自覚だ」というお叱りが届いた。ネットの匿名アカウントならまだしも、存じ上げている詩人の名に驚いた。大量ながら要点が不明瞭であったので、最低限の御返事に留め失礼した。こちらも実害はない。

 

詩は、そんなにちいさく不自由だろうか。わたしなどに、貶められてしまうほどに。

いつ何をどのように言葉にするかを引き受けることは、発する自身にしかできない。誤ったと解れば改めるが、「目上の方に怒られたから」「否定されたくない」「嫌われるのがこわい」なんてつまらない。どれほど未熟であっても、詩を愛する者としての矜持くらいは持っていたい。




このような言葉が届くとき、手段はおよそSNSなどのメッセージやコメント機能で対面ではない。無防備なところへまとまった量が届くので、勢いに押されしょぼくれることもある…が、ほんの“すりきず”だ。遭遇したらお茶でも淹れて一息つき、できれば誰かに話そう。内容も、身になりそうな批判だけ憶えたら(これは意地)さっぱり忘れて、次のことを考えよう。


詩人は気難しいとか嫌なことが多いとかいう話ではない、こんなケースは殆どない。ただ詩に限らず、良くも悪くも声の届きやすいインターネットで作品を公開したり、目につきやすい活動をしたりしている者には、つきものと言えるかもしれない。

わたしの場合、記したように今のところ実害はない。念のためメールやスクリーンショットを保存してはいるが、使い道はなさそうだ。むしろ、気づいて心配してくれた方やトラブルがきっかけで良好な関係を築けた方もいるので、やや楽観的に捉えている。そういう部分が余計にいらいらを買ってしまうのかもしれないが、「詩を選ばざるを得なかった者同士…」という意識が、どこかにあるのだと思う。

しかし些細な摩擦でも、ひとりで書いていたり詩を始めて間もなかったりした場合、「全体から拒まれた」ように感じてしまうこともあるだろう。そんなとき、この愚痴っぽい小咄が、微かでも何かの予防線、誰かの免疫になれば幸いである。

あ、「もう書くな」と送られてきたこともある。いつだったかは忘れた。
もしもーし、2015年、夏!暑いです!
図太く元気に書いてまーす!!

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