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残像 (2016/ポーランド)(アンジェイ・ワイダ)  80点

2017-06-30 20:34:16 | 映画遍歴

巨匠の遺作とやらを随分見てきた。恐らく作家は遺作なんて考えずに映画を撮っていたのであろうから、遺作なんてという括りで映画を語ることは意味のないとは分かっている。でも語りたい、のである。

90歳。体力の衰えも顕著なはず。でも映像への衰えは全く感じられない。冒頭の、丘の上に立つ教授とその教え子たちの牧歌的な美しさはみずみずしく美しい。ワイダが映像を作品の中心に据えていたことが分かる。

光と影を意識した映像は続く。映像派の僕はやはり最近この手の映画にお目にかからなかったこともあり、嬉しい。ワイダって、まだまだイケる。

そして、主人公が部屋で絵を描いていると、瞬時に部屋が真っ赤に照らされるスターリン像のシーンである。これは凄い。あの全体主義の奇妙さと暗黒さを一瞬にして映像で説明してのける。この映画の白眉たるところである。

それからはしつこくしつこく、決して転向しない男の生きざまを描く。信念の人である。周囲は彼を遠ざける。誰も味方がいないその暗黒。スープ皿をなめる男の執念が彼のほとばしる精神力をオーバーラップさせる。

結局彼は転向せず、細い道を歩むしかなかった。暗闇の道である。光も射さない。けれど死しても彼は自分の思念を変えることはなかった。それは、ワイダ自身の思いでもあったのであろう。

実に力強い映像が全体をみなぎっていた。しかも美しい。映画作家として彼は遺作として稀有な作品を残したといえるだろう。こういう僕の思いはタルコフスキーの「サクリファイス」以来である。

巨匠の遺作には意外と凡作が多いと思う。それに意味はないかもしれないが、やはり映画ファンとしてはかなり残念な思いもするのである。そういう意味でもこの映画は収穫作であります。実にうれしい。

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