Sightsong

自縄自縛日記

齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』

2016-07-28 23:20:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(Travessia、2010年)を聴く。

Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)

故ペーター・コヴァルトのコントラバスを、コヴァルトがドイツの自宅を開放した場・ORTにおいて弾いている。

以前にどこかで、テツさんが、バール・フィリップスのコントラバスを弾くとバールさんの音が出る不思議さについて書いていたように記憶している。そうなれば、ここで聴ける演奏は、まるで絹のようなコヴァルトの音なのか。そのような気もするし、そうでない気もする。

どちらかと言えば、楽器の呪縛というよりも、場の強さに対峙して弾く切迫感を強く感じる演奏である。びぎん、げいんと弦がはじける音も、胴の共鳴が周囲のもろもろを呼び寄せるような感覚も、叩くと響くとが重なった音も、何か(コヴァルトか)に想いを寄せるような念も含めて、違う相のものがあい混じっている。

●参照
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミッシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミッシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン


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2 コメント

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このCDについて (tetsu saitoh)
2016-07-31 10:17:50
紹介・批評ありがとうございます。
このCDの成り立ちは、1ヶ月間ORTでのレジデンスがあり(国際交流基金助成)その際にORTに置いてあったペーターの楽器を使用できることになり、その記録として個人的にSONYのPCM-D50で録ったものでCD化するつもりは無かったのですが、ORTへの感謝と持続のために制作し、多数寄贈しました。また、現在の大事な共演者ジャン・サスポータスを紹介してくれた元々がペーターさんでもあるので、ジャンの愛犬とお子さんの後ろ姿をキャプチャーしています。
日本での販売のために当初曲目解説を付けていました。↓
===== ort1 =====
普通、弦に指を触れるくらいにしてハーモニックスを出しますが、ちゃんと弦を押さえて、微妙な ビブラートを加えると高次ハーモニックスがでることを 2 年くらい前に発見しました。ちょうど ホーミーのような感じです。仮にホーミーハーモニックスと名づけます。実音とホーミーハーモ ニックスを即興的に組み合わせるととても刺激的です。その奏法を中心に試みています。
===== ort2 =====
私の考案した変則チューニングでの演奏です。もう 10 数年やっています。これを見つけたときの ことは今でも鮮明に覚えています。奈良の室生寺付近でした。ソロで関西を中心に頻繁にツアーを していて、音楽ファンでない聴衆の率がとても多いツアーでした。そんな状況だからでしょうか、 すこしでも聴きやすくしようと、伴奏とメロディーを一緒に弾くことをさまざま試みていました。 演奏直前の楽屋代わりの部屋で発見。この発見からさまざまな曲・方法・考え方が生まれ発展して いきました。最初の出てくるメロディは「西覚寺」です。
===== ort3 =====
E 線のみの演奏です。私の使用している E 線(GAMUT 社・tetsu version)は超極太です。(今、 一般的に使われているコントラバス弦の一番太い弦が、私の使っている一番細い弦とおなじ径なの です。)太い・長いということは、雑味のあるハーモニックスを出すことが出来ます。しかも糸巻き をゆるめてどんどん低い音を出しています。この試みはかつて「audio basic」での井野信義さんと のデュオ CD で試みたのですが、さらに徹底してやりました。 私にとってのベースはつくづく倍音と雑音ですね。
===== ort4 =====
コントラバスの打楽器化は私の最初期からの試みです。かつてブラジルのビリンバウを知って、 とても心動かされ、その奏法やリズムをコントラバスでやっていました。その後、韓国の箏をしり アジェンは弓で弾き、コムンゴは木の棒で叩いて演奏するのを見て更に感じ入り、その後、トラン シルバニアのガルドン(ガードンと読むのかもしれません)という楽器の演奏を聴いてさらに自分 の身体にある音と一致するようでした。モロッコのグナワ音楽をしり、ゲンブリという楽器の演奏 を聴いて、ますますこの傾向への確信を得ました。ジャン・サスポータスさんがモロッコ生まれで 18 歳まで育ったと言うこともあり、演奏しました。いつか一緒に訪ねてみるつもりです。 この演奏では、グナワのオリジナルメロディを拝借しています。
===== ort5 =====
韓国の音楽のビブラートは普通のビブラートの範疇を超えて大きく揺れます。そこに惹かれました。
この演奏は、左手で棒をもち、指の代わりに棒で音程を出し、ゆらしました。
ギターで言うボトルネック奏法に近いかもしれません。
===== ort6 =====
3 曲目と打って変わって超高音を意識した演奏です。 これは左手にスティックを持って駒の近くで弦を横に押さえます。
===== ort7 =====
ちょっと 4 ビートです。私にしては、めずらしい?
===== ort8 =====
私がこの数年やり続けているベースの横置き奏法での演奏です。安定していない楽器をカタカタと
揺らし、江戸時代の女性用あんま笛を吹き、弓を2本もって駒の右と左を弾きます。
このことは何回も書きましたが、普通のテクニックを使えない方法として開発しました。
ちょっとシャーマニックな演奏かもしれません。
Re: このCDについて (齊藤)
2016-07-31 11:49:28
ありがとうございます。確かに私のCDにはこの詳細な解説がありませんでした。これを拝読しながら再聴しています。
3曲目のベースという楽器が崩壊しそうなほど低音でびりびりと響く音が印象的だったのですが、そういうことなのですね。
7曲目の「ちょっと4ビート」、なるほど「往来トリオ」を想起させるものがあります。
それにしても、「ホーミーハーモニクス」も、韓国伝統音楽からの大きな揺らぎも、何度聴いても、とても魅力的です。

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