Sightsong

自縄自縛日記

侯孝賢『非情城市』

2012-12-29 20:29:46 | 中国・台湾

侯孝賢『非情城市』(1989年)を観る。もう久しぶりの再見だ。

物語は、1945年8月15日、天皇の玉音放送をラジオで聞きながらの出産シーンではじまる。しかし、日本の植民地支配の終焉は、台湾人(本省人)にとっての真の解放ではなかった。支配層は、大陸の国民党(外省人)へと変わり、本省人たちは強権的な扱いに苦しむこととなった。本省人と外省人との軋轢は、やがてたび重なる衝突となり、1947年、陳儀将軍が蒋介石に依頼したことによる大弾圧「二・二八事件」が起きる。この白色テロにより、多くの本省人が突然投獄され、処刑された。

この映画は、ある本省人の家族と、そのひとりと結婚しようとする女性の家族の運命を中心に描かれている。短気な父と長兄が家を仕切り、二男は出征して戻らず、三男は意志薄弱で上海やくざの甘言に乗せられて身を滅ぼし、口がきけない四男(トニー・レオン!)は義憤に駆られて行動し、逮捕される。

それぞれの気持ちの発露が、侯孝賢ならではの長回しと風景描写のなかに置かれ、大きな語りを創出していく手腕は見事である。

息苦しさを覚えながらもずっと映画に引き込まれた。そして、語りが終わった後、何とも言いようのない感情の波がやってきた。

やはり名作に違いない。

●参照 侯孝賢
『冬々の夏休み』(1984年)
『戯夢人生』(1993年)
『ミレニアム・マンボ』(2001年)
『珈琲時光』(2003年)
『レッド・バルーン』(2007年)

●参照
丸川哲史『台湾ナショナリズム』


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