ダグ・カーンのサウンドは、思いがけずバーなどで耳にしたりするとおっカッコいいねと思ったりもするのだが(そういうコンピ、あるでしょう)、とは言えそれは70年代カラーによるところも大きい。わたしはと言うと、ルネ・マクリーン目当てで『Revelation』(1973年)を持っていた程度。
ふと気が向いて、デビュー盤といまのところの最新盤(たぶん)を聴いてみた。
『The Doug Carn Trio』(Savoy、1969年)がリーダーとしてのデビューアルバム。
Doug Carn (org)
Gary Starling (g)
Albert Nicholson (ds)
普通のオルガントリオである。「My One and Only Love」や「Sometimes I Feel Like a Motherless Child」を聴いても瞠目するようなところはない。オルガンという楽器のイケイケ性を活かしたところも特にない。なんだかもの静かで考え深い人のようである。
この後、ダグ・カーンはBlack Jazz Recordsに吹き込みはじめ、ジャズの曲に歌詞を付けるなど、精神性を前面に押し出してくる。やはり惹かれるのはそちらか。なお、同時期にアース・ウィンド・アンド・ファイアのアルバムにも参加しているそうで、それならば聴いてみたいところ。
いまのところの最新盤は、『My Spirits』(Doodlin' Records、2015年)。
Doug Carn (org)
Howard Wiley (ts)
Teodross Avery (ts)
Deszon Claiborne (ds)
ここでもカーンのオルガンはこれ見よがしに押すスタイルでもなんでもない。曲はオリジナルに加え、リー・モーガン、ホレス・シルヴァ―、ソニー・スティット、ジーン・アモンズのものと渋く、ここにもカーンの美意識が反映されているように思える。押しまくりでも精神性爆発でもなければ、なかなか注目を集めるのは難しいに違いない。しかし、シルヴァ―の名曲「Peace」が震えながら出てくるとわけもなく感動したりして。
それにしてもテオドロス・エイヴリーの名前を久しぶりに見た。90年代にデビュー作なんかが割と注目された人であり、まだ40代。当時も本盤でも何がこのテナー奏者の個性なのかわからないのだが、最近またリーダー作を出しており、何となくまた聴いてみたい気分。