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『手話でいこう:ろう者のいい分聴者の本音』

秋山なみ・亀井伸孝、2004、『手話でいこう:ろう者のいい分聴者の本音』、ミネルヴァ書房

著者ふたりはろう者と聴者のカップルである。本書ではろう者の秋山なみは「ねこ」、亀井伸孝は「かめ」と表記される。この二人の会話(手話と口話、文字による)のやり取りが意表をついている。「意表をつく」という表現がそもそも、無知をさらけ出しているのだが・・・。つまり、「ねこ」は手話と口話を駆使するのだが、「かめ」は手話しか方法がない。両者にとって筆談は共通の媒体である。さらに、手話は聴者にとっては第二言語であるので流暢ではない。両者の関係がとても興味深い。ろう者の文化や感じ方を理解するだけではなく、普段聴者同士ではでてこないトピックについて会話を交わす二人のやり取りも大変興味深い。
例えば、音に対する感覚の違い。聴者は聞こえる音のボリュームや響きについて敏感である。わざわざいうまでもないことのように思うこと自体、聴者の世界が当たり前であると思い込んでいるからである。それに対して、ろう者は音に対する感度は低い。いうまでもなく、程度の違いはあるにしろ、聴者に比べて聴覚感度が低いことがろう者であるのだから。二人は、音についても、意見をことにする。新居に移ったときろう者の「ねこ」は音については「気にすることなく」物を置いたりぶつけたりする。それが、聴者には気にかかる。マンションの上下左右の隣人たちとの関係は、微妙な音の否応ないやりとりが、問題なのである。だから、「かめ」は静かにしようようというが、「ねこ」はなぜ気にしていなければならないのかという。二人の最初の大げんかの種になったという。「気にするのは当たり前でしょう」というのはやすいけれど、これは、あくまでも聴者の論理。ろう者は人口の1%とのことであるので、マイノリティだから、99%の聴者の論理に従うべきとするのかどうか。問題はもっと深い。聴者に代表されるマジョリティはマイノリティに対する聞く耳の感度は低い。これは、変だ。
ろう者の手話は世界で120あまりも知られているとのことである。手話は、音声言語(音声情報を媒介とする言語)と同じく、文法も語彙も持つ人類の言語のひとつである。音を使う言語を使うのが多数派を占めているが、それとて、必然性はない。たまたま、音声言語が選ばれたにすぎないといってもよいだろう。
さらに、現実には、音声言語だけではなく文字言語(視覚情報を媒介とする言語)も持っている。もちろん、文字言語は音声言語に即していることが多いが、それでも、同じ言語でも音声言語固有の表現、文字言語固有の表現をもっている。どちらかで表現する方がふさわしいとの感覚も持っている。
手話は手や身体の動き(表情も大切)を要素とする人類に固有の言語のひとつなのである。さらに、ろう文化は建築にも深い影響を持つことも知らなかった。これは、意外だった。視覚に頼るのでアトリアムのような構造が目立つという。これは、アメリカのろう者の大学、ギャローデット大学で二ヶ月を過ごした彼らの報告のなかで述べられている。

以前、見たウィリアム・ハート主演の「愛は静けさのなかに」というろう学校を舞台にした映画では、暗い水の中(プールの中)というのが重要なシーンとなっていた。音声が伝わらない水中では聴者はコミュニケーションできない。また、暗ければ視覚に頼る言語をもちいるろう者はコミュニケーションできない。両者がフィフティフィフティである場が暗い水の中だったのである。

ついでながら、映画検索しているうちに見つけたのが、「デフ映画データベース」というサイトだった。
http://www.deaf.or.jp/movie/

実は、今年六月、「かめ」ととある会合で知り合った。彼との会話はとても刺激的だった。一方的にいろんなことを教えてもらったという意味なのだが、その後、ようやく二人の本を読むことができた。遅まきながら。ありがとう。

<11月3日付記>
ブログでこの本を紹介しているとことは少ないことがわかった。あさっていくうちに、以下のようなサイトを見つけたので、リンクしておく。
http://www.wombat.zaq.ne.jp/wanderers/

手話でいこう―ろう者の言い分 聴者のホンネ

ミネルヴァ書房

詳細を見る

2005-11-02 16:40:56 | 読書 | コメント ( 3 ) | Trackback ( 1 )


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コメント
 
 
 
TBありがとうございます。 (ドシル)
2005-11-03 13:33:59
はじめまして。

TBかりがとうございました。

TBいただいた記事↓よりもう随分前ですが、

http://docile.way-nifty.com/nwes/2005/10/post_b9e3.html



今年6月にこの本についての記事を掲載していますのでTBしておきますね。

偶然、著者が私の友人の友人ということもあり早い時期に手にしました。

最近また、どこかの新聞に紹介されたようですがたくさんの方に読んでいただきたい1冊ですよね(^^)
 
 
 
間違えました^^; (ドシル)
2005-11-03 13:36:58
「手話でいこう」の記事を書いたのは、6月ではなく1月の間違いでした^^;
 
 
 
コメントありがとうございます (sig_s)
2005-11-03 14:51:09
ドシルさん、コメントありがとうございました。「ほぼ日」のリンクが直接記事に飛んでいなかったので、蛇足ですが、いかに追加しておきます。

http://www.1101.com/editor/2005-01-14.html
 
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『手話でいこう』ろう者の言い分 聴者のホンネ (Let it be...)
先日、手話サークルの友人が1冊の本を貸してくれました。 タイトルは表題の通り。 「ほぼ日」でも紹介