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『エニグマ アラン・チューリング伝(上)(下)』

アンドルー・ホッジス、2015、『エニグマ アラン・チューリング伝(上)(下)』、勁草書房

映画「イミテーション・ゲーム」を見たことに端を発し、出版された2015年に入手したとき本の30ページほど読んだところで放置していた本書を再び手にとることになった。

原著は数理物理学者の著者が1983年に出版したものだが、注記が多く、また、資料に基づくチューリングの言動や行動についての著者の理解の記述が長く続き、なかなか読み進めることが難しい。また、寓意を含む記述が多く、なかなか読み進めることができない。しかし、本書を読むことで映画の脚本がどのようにエッセンスを抽出したかがわかってきて、二重三重の意味で興味深かった。だから、原作を読んでから映画を見るだけでなく、映画を見てから原作を読むというのも悪くはない。

映画は、本書の内容を忠実に描くというよりも、むしろ時代に翻弄されたチューリングに焦点を当て、特に、ナチス・ドイツの暗号機械「エニグマ」の創り出す暗号を、機械が作った暗号は機械が解読すると考えたチューリングが、結果としてコンピュータの原型となる仕組みをつくって、解読していった過程を中心に描いていて興味深かった。また、その過程で出会った一時婚約していたショーン・クラーク(異性)とチューリングの同性愛との関係にも焦点を当てた。また、映画では暗号解読のための機械をチューリングに「クリストファー」と呼ばせるのだが、正しくは、若くしてなくなったチューリングの友人のクリストファー・モーコムが、チューリングに暗号の面白さを伝えたことを映像的に伝えようとした創作である。本書ではチューリングにより「ボンブ」と名付けられていたことが書かれている。

本書は、チューリングの生涯が、ビクトリア朝から20世紀初頭のイギリスの社会的背景やパブリック・スクールの伝統、男性優位社会、キングス・カレジの自由主義的な雰囲気、ナチス・ドイツとの戦い、暗号解読戦略、同性愛が東西冷戦下の情報戦略にとってマイナスであったことなど、様々な要因によって左右されたこと、また、チューリングが晩年明らかにしようとした人間の心のあり方が多様なこと(本書ではチューリングの言葉に従い中心のない「たまねぎの鱗片」のアナロジーを用いている)、したがって、チューリングの理解も一筋でなかなわないこと、その死についても、自殺(衝動的なもの、あるいは、計画的なもの)、事故死と謎めいている。

さて、本書は先に記したように原著の出版は1983年のチューリングの名誉回復以前のことであったが、2010年の生誕百年、2013年のチューリングの名誉回復、2014年の映画公開、さらには、AIがハイライトをあびる現代、こうした時代的な背景に基づく翻訳本の出版ということも、まさに、チューリングの生涯を題材にして本書が描こうとしていた、時代の流れによって人間そのものや人間の生の営みが大きく左右されていくこと、出版の事情も時代の流れに翻弄されたチューリングの人生のようにも見えてきた。


エニグマ アラン・チューリング伝 上
アンドルー・ホッジス
勁草書房




エニグマ アラン・チューリング伝 下
アンドルー・ホッジス
勁草書房

2017-08-09 11:26:16 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


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