★盆の月ひかりを雲にわかちけり 久保田万太郎
★刃をわたるごとく父来る盆の闇 八田木枯
第1句、この盆の月はかなり膨らんでいる月。半月よりも太い月であってほしい。月の光が溢れるようにして、月の周囲にある雲を照らしている。これは月の光でなければならない。この月の光は泉の水が滾々と途切れることなく、そして空気などの泡が入らないあふれるような光でなければならない。
第2句、この父は亡くなった父なのか、あるいは病身の父が盂蘭盆会に合わせて仮退院してきた父なのか、ふと感じた。素直に読む限り亡くなった父の魂を迎えている盂蘭盆会だとは思うが、幽明境を異にする父と子に限らなくともいいように感じた。
そして「刃をわたる」の感じ取り方がポイントだ。静かに、すべるように、質感が無く、どのことばもうまく言い表せない。確かに「刃をわたる」なのだ。これは幽霊の体温のなさの延長などと俗っぽい感覚ではいけない。「刃をわたる」に父と子の微妙な親子関係が反映している。父は子に、子は父に何かを言いたいのであろう。しかしそれはそれぞれの個としての生き方に触れて、それを否定してしまいそうな危うい何かにつながる、親子関係では禁忌に触れるものなのである。
そんな関係を背負いながら盂蘭盆会は連綿と続く。その連続は刃をわたるようにちょっとしたことで破綻をきたしてしまうような親子関係の危うい連鎖で繋がっている。
★刃をわたるごとく父来る盆の闇 八田木枯
第1句、この盆の月はかなり膨らんでいる月。半月よりも太い月であってほしい。月の光が溢れるようにして、月の周囲にある雲を照らしている。これは月の光でなければならない。この月の光は泉の水が滾々と途切れることなく、そして空気などの泡が入らないあふれるような光でなければならない。
第2句、この父は亡くなった父なのか、あるいは病身の父が盂蘭盆会に合わせて仮退院してきた父なのか、ふと感じた。素直に読む限り亡くなった父の魂を迎えている盂蘭盆会だとは思うが、幽明境を異にする父と子に限らなくともいいように感じた。
そして「刃をわたる」の感じ取り方がポイントだ。静かに、すべるように、質感が無く、どのことばもうまく言い表せない。確かに「刃をわたる」なのだ。これは幽霊の体温のなさの延長などと俗っぽい感覚ではいけない。「刃をわたる」に父と子の微妙な親子関係が反映している。父は子に、子は父に何かを言いたいのであろう。しかしそれはそれぞれの個としての生き方に触れて、それを否定してしまいそうな危うい何かにつながる、親子関係では禁忌に触れるものなのである。
そんな関係を背負いながら盂蘭盆会は連綿と続く。その連続は刃をわたるようにちょっとしたことで破綻をきたしてしまうような親子関係の危うい連鎖で繋がっている。