Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。体力作り、俳句、山行、美術館・博物館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。

「鈴木其一展」後期展示(その2)

2016年10月19日 17時02分08秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等


 鶏の作品というと今は若冲がまず思い浮かべられる。私も同じである。やはり若冲の鶏の作品をはじめて見た時の驚きは忘れられない。若冲は鶏をじっくりと見て、写生したといわれている。
 しかしその描かれた姿態は決して日ごろ鶏が見せるポーズとは違う。歌舞伎の訳者のように大向こうを張ったような、「どうだ」と云わんばかりのポーズである。芝居がかっていて、そして自己顕示欲十分な性格だったのだろうか?伝記や解説からはそのような性格は伝わってこないので、よくわからない。
 若冲の鶏は好きであっても長時間眺め続けたり、見る回数や時間によっては、疲れてしまう。一度見るとしばらくは作品から離れて他の作品を見たくなる。若冲でいえば水墨画が見たくなる。あるいは広重などでいえば東海道五十三次などの作品に気持ちが向かってしまう。
 しかし其一のこの「鶏に菊図」は、若冲を念頭に置いているように見受けられるけれども、1mを大きく超える画面の割には、控え目な印象で、若冲ほどのアクの強さは感じられない。同じ赤系統の色も控え目である。鶏よりも番の鶏を取り巻く白い菊のアーチの方が主役である。雄鶏の腹から尾羽まで、雌鶏の尾羽の濃い緑も印象深いが、赤も茶もくすんでおり、わずかに深い青い色がアクセントとなっている以外は、鳥全体として大人しいし、時間が停まっている。顔も若冲ほど個性的な顔をしていない。
 どちらかというと私が鶏を見てホッとするのはこちらの作品だとおもう。あまり動きは感じられず、其一にしては地味な配色である。しかし白にしろ、たらし込みを使った葉にしろ、羽の色にしろ、微妙な色のグラデーションは念入りに仕上げられている。部屋に飾って普段見ている分にはこちらの方が落ちつくのは間違いがない。
 解説では大名・豪商に注文作品らしいという。控え目な構図と配色は注文主の意向だった可能性はある。

   

 次は「瀧上白衣観音像」。私が着目したのは観音よりも観音が乗っている龍。前期展示の時に昇龍図を取り上げたが、その時に直立して躍動感があって、いかめしい緊張した顔つきの龍に惹かれたが。今回は観音の読書に支障がないようにおとなしく乗り物の役に徹している龍に親近感を持ってしまった。乗っている観音が揺れないように気を使って運転しているドライバーのようでもある。そしてそんな対比が、どこかホッとする作品である。色彩と構図の緊張感あふれる会場にあって、どちらかというと後期展示の仏画のコーナーはホッとする空間であった。
 同時に同じ水墨画である「昇龍図」と「瀧上白衣観音象」とを比べると、今回の「瀧上白衣観音像」は静的な情景である。「昇龍図」は天に昇る躍動感あふれる作品。違う種類の緊張感や動きを描く力というものに驚いている。
 そして両者の雲の様子が、風神雷神図屏風とも大きく異なっていることにも気がついた。昇龍図の雲はその形から龍の影でもあるらしく、どこかおどろおどろしい。



 なお、前期展示作品の「虚空蔵菩薩像」も忘れられない作品であった。こちらの作品は作品の背景の噎せ返るような青、そして菩薩の頃もは赤と緑。このような色彩の氾濫に付随する緊張感にびっくりした。隣にあった「釈迦三尊十六善神像」も善神が所狭しと密集していたが、それ以上の緊張感があった。
 静かな祈りの空間を演出するというよりも、人を威圧するような空間をもたらすような配色である。現在ファインバーグコレクションとなっており、解説を読んでもどのような依頼で作成したかわからない。このような威圧するような効果を生んでいる色彩、その目的は何だったのだろうか。虚空蔵菩薩はこのような色合いで荘厳される菩薩なのだろうか。虚空蔵菩薩は「虚空のごとく無量の智慧や功徳を蔵する菩薩」(岩波仏教辞典)と云われる。
 そのような虚空蔵菩薩の在り方とは別に、其一という人は、現代の言葉を使えば色彩の心理学的な効果ということについて、自覚的だったのではないか、と思った。
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2 コメント

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Unknown (RW)
2016-10-19 22:22:28
鶏の作品といえばやはり若冲しか思い浮かばなかったのですが、鈴木其一という方は初めて知りました。「鶏に菊図」是非観賞して見たいものです。
RW様 (Fs)
2016-10-20 11:02:46
鈴木其一、最近ようやく注目されるようになりました。根津美術館で「夏秋渓流図屏風」を見ると多くの方はその名を忘れなくなるそうです。
是非今後着目してください。

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