Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

加藤楸邨「雪後の天」より

2017年05月29日 20時51分30秒 | 俳句・短歌・詩等関連
 加藤楸邨の「雪後の天」より
★痩せはてし写真の祖母や蛍籠 「17年抄」の「夢と鯵」から
★蛍籠軍歌さくさくさくさくと      同上
★明易き葉がささげたる青蛙       同上
★鯵くふや夜はうごかぬ雲ばかり     同上

 初夏の句を探していたら、加藤楸邨の句集にこの4句があった。昭和17年というとミッドウェー海戦が6月初旬であるから、ちょうどその自分の句であろう。国内では軍や政府の発表で戦勝気分であったようだが、実際はこののち敗戦に向かっていく。
 第1句、老い、病、などで痩せた祖母の写真が飾ってあるのであろう。そして蛍籠の取り合わせは、作者の思い出の中にある祖母との交流の場面に生きているのであろう。それが戦争という厳しい状況の中でいとおしく迫って来る、というのであろうか。
 第2句、蛍籠と軍歌、この取り合わせがわかりにくい。軍歌さくさく、というのも今の私たちにはよく理解できない。多分戦意高揚のために街中に流され、そこここから溢れている様と、蛍を大切に蛍籠に入れて喜んでいる子等の明るい声が対比されているのかと想像はしている。
 第3句も私にはわかりにくかった。戦争の影はどこにも見当たらないと思うが、「葉がささげたる」がわからないでいる。初夏の頃の葉の先に小さな青蛙が載って、葉を押し下げているのを明け方に発見したのだろうか。ただし露時の明け方の湿気の多い朝の大気を思い出してみるのもいいかもしれない。
 第4句、鯵の美味しい季節である。この初夏の晴れる日の多い時期、夜の空に浮かぶ雲も、透明度の高い夜の空に雲の白がとても映える。この雲の美しさをちゃぶ台に前に座って夕食を摂る家族を配することでの効果というものが何となく想像できる。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。