本日の午後第一番に渋谷区立松涛美術館では「月-夜を彩る清けき光」を見てきた。三菱一号館美術館の内覧会の前である。ずっと以前にここを訪れていたのではないかと思っていたが、そんなことはなかったようだ。
域は井の頭線で渋谷駅の次の「神泉」駅で降車し、お昼を食べてから松涛美術館にたどり着いた。さまざまな月を貼り付かせた作品を見てきた。私は歌川広重の「名所江戸百景」のシリーズ中、特に「永代橋佃しま」「月の岬」「よし原日本橋」「月に雁」の4点が気に入った。また「武蔵野図屏風」、「砧打図」(富岡鉄斎)、尾形乾山の「定家詠十二カ月和歌花鳥図角皿」も惹かれた。
広重の風景画は東海道五十三次を含めそれなりに見ているが、「月に雁」を除いて「月」という視点でまとめてみた記憶はない。いづれも情緒溢れる作品で、これからは広重の風景画を見る時にはこの視点を忘れずに鑑賞しようと思った。図録や解説書などで幾度もみている「月に雁」ではあるが、実際に見ると雁が手前に浮き出ているように見える上に、夜空の藍、月の形、雁の首の長さ‥とてもバランスよく配置されていることにあらためて惹かれた。
いづれもポストカードなどはなく、残念な気がした。図録も1500円と安かったものの今回は遠慮した。
久隅守景の「瀟湘八景図」と海北友松の「洞庭秋月図」は11月の展示である。広重の作品でもいくつも後期に展示されるものがある。60歳以上が半額ということもあり、他の美術展のついでにでも再訪したいと思う。なお、川瀬芭水の月もすばらしいのだが、川瀬芭水は1点も展示されていなかった。あれもこれもというわけにはいかないが、私としてはちょっと寂しかった。
建物もユニークで、中庭の一階からは噴水が沸き上がっていた。今回の企画、私にはとても嬉しい。このような切り口の企画展をこれからも期待したい。