★春近し時計の下に眠るかな 細見綾子
この句を最初に読んだとき、私は「眠る」の主語は「春」だと勘違いした。「春近し時計の下に春眠る」のように読んでいた。確かにその方が口調はいい。滑らかだ。しかし省略した主語が「春」というのもよく分からない。だいたい「眠る」の主語が「春」の場合こんな省略はまずしない。そうすると主語は「私」しかない。
では次に「私」と「時計」の関係がわからなかった。「私」が「時計の下」に眠っていることが何か意味があるのか。寝室には時計は大体ある。その時計の下で眠る「私」が「春近し」と感じるとはどういうことなのか。
本日この句をツィッターで見つけた時、この句の状況がわからずにそのまま電車の中で窓越しの陽を浴びながら、うつらうつらと寝てしまった。
ようやくこの時計が今風の音のしない電池で動く時計ではなく、柱時計・振り子時計ではないか、ということに思い至った。
そう、昨晩の春の到来を思わせる暖かい大気を感じた時、夜中に柱時計の音を耳にしたのではないか。そしてその音と春の到来が近い大気の様子がどこかでダブって聴こえたのではないか。時計の音までもが春の湿り気や温みをもって聞こえたのではないか。それは実に心地よい眠りを用意してくれたのではないか。すっかり春というわけではないが、温みのある春は「春眠暁を覚えず」である。
電車の中でうつらうつらしながら、心地よい眠りに陥る幸せを感じた。
この句を最初に読んだとき、私は「眠る」の主語は「春」だと勘違いした。「春近し時計の下に春眠る」のように読んでいた。確かにその方が口調はいい。滑らかだ。しかし省略した主語が「春」というのもよく分からない。だいたい「眠る」の主語が「春」の場合こんな省略はまずしない。そうすると主語は「私」しかない。
では次に「私」と「時計」の関係がわからなかった。「私」が「時計の下」に眠っていることが何か意味があるのか。寝室には時計は大体ある。その時計の下で眠る「私」が「春近し」と感じるとはどういうことなのか。
本日この句をツィッターで見つけた時、この句の状況がわからずにそのまま電車の中で窓越しの陽を浴びながら、うつらうつらと寝てしまった。
ようやくこの時計が今風の音のしない電池で動く時計ではなく、柱時計・振り子時計ではないか、ということに思い至った。
そう、昨晩の春の到来を思わせる暖かい大気を感じた時、夜中に柱時計の音を耳にしたのではないか。そしてその音と春の到来が近い大気の様子がどこかでダブって聴こえたのではないか。時計の音までもが春の湿り気や温みをもって聞こえたのではないか。それは実に心地よい眠りを用意してくれたのではないか。すっかり春というわけではないが、温みのある春は「春眠暁を覚えず」である。
電車の中でうつらうつらしながら、心地よい眠りに陥る幸せを感じた。