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■ 販促施策・ポケットテッシュは語る!マーケティング環境、変化の兆候!

2010年09月14日 | Weblog
■ 販促施策・ポケットテッシュは語る!マーケティング環境、変化の兆候!

日経本誌の日曜版・エコノ探偵団の
「ティッシュ配り、なぜ減った?」
という記事は、
今の経済、マーケティングの実情を反映した内容で面白かった。

今回は、その記事にマーケティング的な意味を味付けして見る。

A.ポケットティッシュ配布の現状:

ポケットティッシュの配布数は、
統計によると数年前に比べて半分ぐらいに減っているという。
全体生産量をみると、6-7年前は30億袋ぐらい、
今では10-15億袋ぐらいまで落ち込んでいるという。

なぜ配布数が激減しているのか?

理由の1:
企業や店が不景気で販促費を減らしている。

例えばティッシュと言えば消費者金融である。
消費者金融会社は過剰金利問題で業績が苦しく、
制度改正で貸し出し残高が伸びず、
大幅な経費削減に迫られティッシュ配布の数を減らしている。
メガネスーパー、KDDIもやめたという。

理由の2:
受け取る消費者側の反応が今ひとつよくない。

今はお店にいっても
箱型ティッシュや濡れティッシュが準備されており、
ポケットティッシュを使わなくなっているという。

冷静に考えて見ると、ポケットティッシュが頻繁に配られていた時でも、
家の隅っこには、もらった手配りティッシュがたくさんあまっているという感じだった。
実際に、今は10人の3人ぐらいしか受けとらなくなっているという。

理由の3:
差し出されるポケットティッシュを受け取るときにストレスが生じる

微妙な心理だが、
道でポケットティッシュを差し出されて、それを受けとるときに気恥ずかしくて嫌、
という人も多いようだ。

理由の4:
配布ポケットティッシュを使うのが恥ずかしい:

実際に配布されたポケットティッシュを使うときに、
店や企業名がついていると人前では使いにくい、恥ずかしいという心理がある。
また、デザインが安く、チープな感じで人前にだせるものではないともいわれる。
実際に、女性が人前でそれを使うシーンはちょっと想像しにくい感じである。

理由の5:
販促の手法ミクスに異変が起きている

電子クーポンのようなIT的な仕組みの方が経費も掛からず、即効性があり、
集客効果が高いようだ。
この5番目の話はかなり本質的な話であり、要注意である。
販促の世界にITが導入されて久しいが、
今本格的に試行・応用が進んでいる。

理由の6:
ポケットティッシュとは違う配布(もらいたい)ニーズが出てきている。

配布というと「ポケットティッシュ」だけが主流ではない。
季節的な要因だが、
今年のような猛暑だと「うちわ」配布の方が喜ばれるらしい。
最近は「化粧落とし」や「めがね拭き」、「携帯電話画面拭き」も増えているという。
夏場だと「ウェットティッシュ」も増えているらしい。
冬場だと「カイロ」も人気だという。

配布は、機械的に「ポケットティッシュ」で!
という単純な図式はもう成立しない。
プレミアムの世界にも、多様化が進んでいるということらしい。

理由の7:
はっきり言ってポケットティッシュがあきられた

実はこれが一番大きい要因と考えられる。
ズバリ、飽きられたということである。

マーケティングで最も気をつけなければいけない状況、
「ユーザーの飽き」という、
マーケティング地盤(マーケインフラ/ユーザーの信任)の熔解現象が起きているということだ。

何だまたティッシュか??!!というイメージのものに、
人は大袈裟に言えば感動はしない。
感動しなければそれを配布しているスポンサーの店・企業に対して
親しみ、好意という感情は湧いてこない。
従ってマインドシェアは生じてこない。
マインドシェアが生じなければ実際の行動(購入)シェアは発生しない、
ということになる。

ポケットティッシュはもらって損するものではないが、
嬉しくて仕方が無いというものではなくなってきている。
費用対効果で疑問符をつける企業が増えてきている。

たかが販促物とはいっても、
人の手に渡る、目にさらされるものである。
日々の改善、革新がなければ飽きられて陳腐化して通用しなくなるのは当然である。
今のままのポケットティッシュでは現状を打破するのは難しい。
また、IT販促?という異次元の競合販促施策への対応は、
一種の情報戦であり、
「ただでもらえるテッシュ」という持ち味だけで対抗できるものではない。

配布ポケットティッシュ数の減少には、
マーケティングの様々な背景・環境が横たわっている。
実に奥が深い、つくづく実感する。

B. 配布ポケットティッシュの効果:

しかし、何だかんだといっても、
今までポケットティッシュが配られそれなりの成果が上がっていたのは、
なぜだろうか?
一時期、一斉を風靡した手配りティッシュの効果とは何か。

効果1:看板効果
もらったポケットティッシュがいつも身近にあり、店名、企業名が目に飛び込み記憶に残る。
その店や企業の商品を利用しようと思うと、
それが「検討企業群のエボークトセット」に入り、購入・利用対象の店・企業のひとつになる

効果2:感謝効果
ポケットティッシュを使う機会があると、そのちょっとした便利さで感謝の気持ちが生じ、
何かがあればその店・企業の商品を使って見ようと思うきっかけになる。

効果3:単純プレミアム効果
どんなものでも、ただでもらえれば人は嬉しいもの。
頻繁にもらえれば何となく記憶にも残る。
配布の効果が生じたことになる。

但し、上記のような効果が生じるには、
閾値を越える配布数の確保が必要になる。

閾値の考え方で一番わかりやすいのは薬の服用量である。
薬は、ある程度の量を服用しないと効果を発揮しない、
それまでに服用したことに意味がなくなるような最低必要量(閾値)というものがある、
という概念である。
少ないまき方では、渡らない人が大半、たまたま1回だけ渡っただけということで終わってしまう。
ティッシュをもらったことが、
本当に単純なただの落し物を拾ったような感覚の些細な経験でしかなくなる。
ある程度の数をもらえて、初めて閾値を越えてそれが記憶に定着していく。

また、実際にポケットティッシュをもらわなくとも、
あちらこちらで配布しているシーンを見ていると、
擬似的な配布効果をもたらし、店・企業名が記憶に残っていくという効果が生じる。

以前は消費者金融業界各社があちこちで配布していたので、
実際に小額の資金が必要となったときには、
消費者金融の利用という選択肢もあるのかな、
というマインドシェアが生じ、
業界全体がポケットティッシュ配布の利益を受けていた。

今のように配布数が少なくなってくると、上記のような効果がますます生じにくくなり、
ジリ貧状態になってくる。

一般的に、配布メディアの効果を有効たらしめるには、
・成長業界があちらこちらでじゅうたん爆撃のように蒔く/スケールの追求、
・ターゲットを決めてそこに集中的に配布しその人たちには喜ばれる/CSの追求、
のどちらかの要件がいる。

前者のケースは、今ではなかなかなさそうだ。
少し昔の話だが、ソフトバンクが赤袋(接続キット入り)であちらこちらで無料インターネット接続の販促をしていたのは記憶に新しい。(あんな技は孫さんでなければ到底できないこと)

今後は、後者のような蒔き方を戦略的にできるかがポイントになる。
例えば、ゲーム業界が携帯電話画面拭きをゲームイベントで配布するなどの方法である。
その場合、チープなものではなくターゲットにふさわしいテッシュの外側(パッケージ)、内部の携帯等々のデザイン感覚も求められてくる。

C.たかがポケットティッシュ、されどポケットティッシュ:

以前、エステ・消費者金融・かつら・健康食品等々の
広告・宣伝活動の効果測定を行ったことがある。

これらの業種は、広告・宣伝が「営業行為」そのもので、
その広告・宣伝表現から問い合せを促し、
資料請求から購入・利用まで導くような特殊な業種である。

これらの業種の販促効果測定の結果を見ると、
利用者一人当たりの獲得費用では、ポケットティッシュはそれなりの上位にいた。
今はそれが通用しなくなっている。

これは何を意味しているのか?

別の効率の良い販促手段が、
単純にポケットティッシュにトレードオフした(取って代わった)ということではない、
というところに悩ましさがある。

要するに、その業種を「見える化」している、
その業種を代表するようなシンボリックな販促施策の減少という「現象」は、
実はその業種の衰退を意味しているのだ。
例えば、消費者金融におけるポケットティッシュのような例である。

たかが販促、されど販促である。

販促施策の中でも、その業種を象徴的に示すものは、
単なる販促の手段ではなく、
その業種そのものものマーケティングのエネルギーを示している、
と考えるべきである。
配布ポケットティッシュは、
上記のような業種の栄華盛衰を示す「インデックス」となっている。
その業種の「今」を的確に物語っている。

ある業種の消長は、氷山の一角的にいろいろなところに現れる。

販促は販売現場そのものである。
そこにはマーケットの状況が刻々反映されてくる。
ポケットティッシュの減少という「現象」は、
決して瑣末的な話ではなく、マーケットの声を代弁した大きな意味を持つものである。

単に販促物と侮ってはならない。

たかが販促物、されど販促物である。
販売・販促現場に秘められたマーケットの兆候を見逃してはならない。

ポケットティッシュは、何かを語っている!!

まとめ:

マーケティングの現象には「ことの本質」が現れる。
ポケットティッシュ配布数が大激減した。
ここから何を読み取るか?!

1.まず、配布方のプレミアムにはメリットを感じなくなってきている???
例えばテッシュという現物が、
いま欲しいわけではない、無いと困るわけではない。
だから配布されていても、気にも留めない。

2.ITによるポイント・クーポンの方が、
直裁的で、マニュアル的で、短絡的で、
ノウハウ本がはやる時代には受ける(仮説)。

・今、目の前にあるメディア(携帯電話)による販促の方が、
時間消費的にも、手間消費的にもスムーズだ?
・自分が関心の有る店、企業から直接的にメリットをもらう方が得だ?
・店、企業にとっては商売直結型の販促の方が効果が見えやすい、管理しやすい、儲かる?
と皆が考え始めている、

もう少し生活者心理に立ち入った仮説を立てるなら、
即物的、機能的な販促志向がマーケット、生活の底流に流れている!
そういう時代なんだ!
と考えてみる必要性がある。

ポケットティッシュの語りは、なかなかの味わいがある!!

この稿おわり


追記:

別の例として/以下も最近よく聞く話である。

営業主体の訪問販売業種で、
「営業」というコミュニケーション&リレーション方式による業績、効率が極端に悪くなったときは、
それはその他の販売手段を探せばいい、営業方法を改善すればいい、
という単純な話ではなく、

そのビジネスモデルそのものを陳腐化させる、廃止するくらいの
重い意味があると考えなくてはいけない。

廃止というのは極端かもしれないが、
本気でビジネスモデルの革新を断行しなさい、
というマーケットからのサイン・シグナルと考えるべきである。

「営業行為」は、訪問販売のシンボリックな販売・販促手段である。
訪問販売という業種・業態を象徴する行為である「営業」に何かおかしいな?
と感じるようなことがあれば、
真剣にその原因を考え、手を打つべきである、という話である。

今回のブログは、
現場の現象が、実は本質的は問題提起をしてくれている、
そのような研ぎ澄まされた感覚を持てるように、
マーケティングセンスを磨くことが大切である、という説教染みたお話でもある。

販促効果もそうだが、現場の小さな現象は、
意外と本質を突いた兆候を示している可能性がある?、
という感覚で現場を見るように日頃から訓練をしておく必要があるように思う。




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