鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2007.6月の「戸塚宿・藤沢宿」取材旅行   その1

2007-06-18 22:31:43 | Weblog
 この「福寿観音」が位置するところは、超近代的な最新鋭(高機能型)マンション群と、かつては寂しい尾根道だったであろう旧東海道が接するところ。「福寿観音」は、その狭い境内にある「福寿観音縁起」によると、この東戸塚周辺の都市開発を進めた福原政二郎という人物の信仰していた観音を祭ったもの。この30年間で、この辺りの風景は激変したはずです。「激変」のきっかけを作った人物が、実は「観音」を信仰し、旧東海道に接するところに、「オーロラシティ」を含む東戸塚一帯を見下ろす形で「福寿観音」を設けているということに、私は何かミスマッチな、違和感を覚えるとともに、ここが何か暗示的な空間であるようにも思えました。

 今回の取材旅行の目的のひとつは、品濃一里塚から戸塚宿へと向かう東海道の道筋をしっかりと確認することでした。昭文社の『ウォーキングマップル 神奈川』(1997発行)によると、平戸小学校入口の手前で、東海道は右手に折れているのです。前回は、そのことをしっかり確認せず、尾根筋の道なりに平戸小学校の入口付近のところを通り過ぎてしまったのです。

 何らかの標示があるはずで、注意しながら東海道を歩き始めました。

 左手に「果樹もぎとりの里」の看板。この辺りでは、梨・栗・桃・ぶどう・柿・梅が栽培されているらしい。

 やがて道が二手に分かれます。左手を行くと、平戸小入口へ。すなわち、前回たどった道。右手の道はすぐに坂道になっています。

 右角にある家はSさんというお宅。そのS家の前、道を隔てた隣家の垣根を見ると、ありました!、標示が。

 垣根に半ば埋もれた形で。

 「旧東海道(品濃坂) 右直進 歩道橋渡る」

 と書いてある。

 これじゃ、よほど注意していないと通り過ぎてしまう。

 右手に折れて坂道を下っていくと、前方に丹沢山系が望めました。

 坂道を下りて途中で石段を下りると、歩道橋(品濃坂歩道橋)の手前に、「品濃坂」の碑がありました。その碑の屋根の表面には、「品濃坂周辺案内図」と「『江戸名所図会』の科濃坂、権太坂ともいう」の絵が描かれていました。

 東海道は、この「品濃坂歩道橋」(環状2号線に架かる)を渡って左折し、道なりに品濃小学校前を通って、品濃口に至る道筋であることをこの案内図で確認。

 『江戸名所図会』によれば、この坂の上がり口には、左手に茶屋があったことがわかります。茶屋の右隣に、小さな鳥居と祠(ほこら)がある。棒に掛けた大きな荷物を担ぐ人足や駕籠かき、菅笠を被った旅人や馬に乗った旅人がいる。道幅は予想外に広いが、坂道の両側には山林が迫っています。

 当然、かつては環状2号線はなかったわけで、このあたりの東海道の風景は、まったく激変しているはず。

 品濃坂歩道橋を渡り、左に階段を下りてすぐに右折。ゆるい坂となり、突き当たりには品濃坂下公園が見えます。その坂を下りていくと、やがて幅広の通りにぶつかり「坂下」という名のバス停がありました。ここから東海道はバス通りになっているのです。

 右手に、立派な古そうな門がある。表札を見ると「H」さんという方のお屋敷でした。

 しばらく閑静な住宅街の間を行きます。ところどころ、紫色や桃色の紫陽花が咲いている。

 突き当たったところが国道1号線の「海道橋」。横断歩道を渡って、川(川上川の左側)に沿って進むと、行く手正面に雪を被った白い富士山が見えてきました。思わぬところで、富士山が見えてくると、やはり感動を覚えます。

 左側を流れる川は、平戸永谷川。川を覗くと二匹の黒い鯉が泳いでいました。

 やがて道は国道1号線にぶつかり、赤関橋を渡ります。赤関橋を渡って左側の道へ入っていき、再び国道1号線にぶつかります。

 右手に「山崎製パン(株)横浜第一工場」、そして「ポーラ横浜事業所」。

 しばらく進むと左手に「ファミリーマート」。その右隣の広い敷地に、場違いのように、古い土蔵がポツンと建っている。敷地内に車が数台停まっていますが、人が住んでいるような気配はない。案内板のようなものはどこにもありません。

 道の向こう側に、「横浜市地域史跡横浜市教育委員会 柏尾(かしお)の大山道入口」の標示があり、東海道を渡りました。車通りが激しく、信号付きの横断歩道でないところを渡るのは、容易ではありませんでした。


○参考文献

・『ウォーキングマップル 神奈川  歩く人の地図』(昭文社)

 ※この地図は、大変重宝しているのですが、今はどこの本屋にも置いてないようです。大変くわしく、また正確で(今回痛感しました)、実際に道を歩いて作ったものでしょう。「平戸永谷川」のところでは、「川にコイが泳ぐ」と書いてあるし、「山崎製パン」のところでは、「パンのいいにおいがする」と書いてあります。今後も、街道や古い道の取材をする時は欠かせない重宝なマップです。
 
  


 


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