鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2012.1月取材旅行「日本橋〜板橋〜戸田」 その11

2012-02-13 06:17:34 | Weblog
 「坂下1丁目」の歩道橋の手前に、「高崎93km さいたま10km 戸田橋1km」の道路標示。

 「志村坂下通り」と交差したのが15:07。そして「高島通り」と交差したのが15:11。

 村尾嘉陵は「中山道大宮紀行」(文政2年)で、「志村の坂」(清水坂)を下った後、「たどるたどる」縄手を歩いていきましたが、「右も左も蘆荻(ろてき)のみ」で、「水鳥の声」が寂しげに低く聞こえてきた、と記しています。

 しかし、現在は、志村坂下の国道17号線沿いはビルやマンションが建ち並び、国道17号線はもちろんのこと、「志村坂下通り」も「高島通り」も、大小の車がひっきりなしに行き交っています。

 かつては荒川沿いの湿原地であったこのあたりの風景は、200年ほどの間で激変しているわけですが、しかし、それは特に戦後のことでした。

 地下鉄東西線の開通で、あの『青べか物語』の浦安が激変したように、このあたりは都営三田線の開通によって激変したらしいことは、先ほどの「清水坂」の案内板の記述からも察することができました。

 「日本橋から15km」地点を通過したのは15:15。

 「御成塚(おなりづか)通り」を越えて、「志村橋」というバス停を通過したのが15:19。

 この「志村橋」は「新河岸川」に架かる橋でした。両岸は黒ずんでしまったコンクリート堤防で護岸されています。

 その橋を渡った向こうが「舟渡(ふなと)三丁目」。

 「舟渡」交差点を過ぎると、国道はゆるやかな登り坂になりますが、これは荒川を越える「戸田橋」へと続くため。

 私は、その左側の道をまっすぐに進み、荒川の堤防に突き当たったところでコンクリートの石段を上がっていきました。

 右手上には、「戸田橋519m」「荒川」の道路標示が見える。

 その「戸田橋」の南詰に至ったのが15:29。

 橋上からは荒川の流れと広い河川敷が望め、ようやく村尾嘉陵の「右も左も蘆荻(ろてき)のみ」「水鳥の声啾々(しゅうしゅう)たり」の雰囲気をわずかながら味わうことができました。

 川面には、浚渫船らしい大型の四角い物体が停まったように浮かんでいるばかりで、それがあたり一面の冬枯れの景色の中で、物寂しい雰囲気を強調しています。

 蛇行する荒川の上流には、うすく山影が左右に延びているのが見えますが、あれが秩父山地あたりだろうか。

 橋上の県境を越えて埼玉県戸田市へと入り(15:34)、北詰に至ったところに「曲尺手高架橋」と記された道路標示がありました。

 「曲尺手」は「かねのて」と呼ぶ。

 左手に見える鉄道高架は「埼京線」と「東北上越新幹線」。

 堤防から歩道を下って「川岸3丁目」の交差点を左折し、その「埼京線」の「戸田公園」駅へと足を向けました。

 かつては、この荒川に架かる「戸田橋」はなく、中山道を行く旅人は「戸田の渡し」で渡し船に乗って荒川を渡りました。

 村尾嘉陵も、この「渡し船」に乗るわけですが、ある旅人が、「私は水戸殿の身内のものである」と言って渡し守を起こして舟を出させたので、それに便乗して渡し船に乗りました。その船の上から、後を振り返ると、やや横雲がたなびいて山の梢を立ち離れるのが見えるばかりで、なおまだ薄暗いためにあたりの景色はほとんど見えなかった、と記しています。

 この振り返った時に見えた山とは、かつて志村城があったという台地であったのかも知れない。

 荒川の低湿地帯からは、南に丘陵(台地)とその谷戸が見え、清水坂(志村の坂)は、その低湿地帯から台地上へと上がっていく(板橋宿方向へ)曲がりくねった坂道であったのです。

 その左折した通りを進むと、「←戸田競艇」と記された案内標示があり、この近くに「戸田競艇場」があることがわかりました。

 「埼京線」と「東北上越線」の高架の手前で、「戸田公園」駅の方へ右折していくと、その道路沿いに緑地があり、石碑や小学生の造形作品が並んでいました。


 続く(次回が最終回)



○参考文献
・『板橋区史通史編 上巻』(板橋区)
・「史料から見る19世紀前半の板橋宿─その再現の試み─」吉田政博(『板橋区立郷土資料館紀要 第14号』)
・『江戸近郊道しるべ』村尾嘉陵・朝倉治彦編注(東洋文庫/平凡社)
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東北上越新幹線 都営三田線 地下鉄東西線
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