洗濯船府内航海日誌

大分市府内町2-22に異業種交流会「洗濯船」のお店を出店しました!
この飲食店兼物販店を舞台にしたフィクションです。

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お知らせです

2017-07-11 16:39:17 | 大分市
いつも閲覧頂き誠にありがとうございます。

「通り抜けお買い物カフェバー洗濯船」のFBページを作成いたしましたので、リアルな情報はこちらからチェックしてくださいませ。

妄想バリバリのフィクションは今まで通りこちらでお楽しみください。(´ω`*)

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日は暮れて・・・

2017-07-03 15:08:33 | 大分市
「そろそろですね。」

エーコは店内に備え付けられた大型ハイビジョンテレビを見ながら翌日分の仕込みで忙しそうな田吾作に話しかける。

「え?何だってぇ!?」
流石に厨房ではテレビの音が邪魔になってエーコの声が聞き取れないらしい。

「そろそろおの先生が来る時間ですね!」
エーコは、今度はテレビのボリュームに負けないように大きな声を張り上げる。

「うるせえよ!テレビを消せばいいだろうが!」
タオルで手を拭きながら田吾作が出て来た。

「ちわ~っす・・・」
元気のない声で挨拶しながら長身で痩身な男性が項垂れながら店内に入って来た。

「ほら~、やっぱり来たじゃないですかぁ!」
エーコは勝ち誇ったように言い放つ。

「はぁ~・・・もうだめだ。今日もフラッシュバックに苦しみました・・・はぁ・・・」
疲れ切った様子の『おの先生』。

彼は行政書士の有資格者なので『法律の先生』と言う意味を込めて仲間は『おの先生』と呼んでいる。
昨年末に彼女に振られてからというもの毎日気分が塞ぎこんでしまうようだった。
落ち込みが酷い時には田吾作に励まされ、ここ最近は少しずつ快方に向かっているように見えたがまだまだこの調子なのだ。

「なんだよ、また『亡霊』に苦しんでるのかよ?芋引くねぇ、お前さんも。」
やれやれといった表情で田吾作がおの先生を迎える。

「早く元気になりたいっす。」
低いテンションで応えるおの先生。

「よせやい!貧乏神が入って来るわい!シャキンと話さんかい!」
何事にも縁起を担ぐ田吾作はテンションが低いことを一番嫌うのだった。

「いいですよ。貧乏神が入って来たら僕が連れて帰ってあげますから・・・」
何とか明るくしようとは思っているようだがどこかまだ自滅的なおの先生。

「お前さん、頭は抜群に良いのにメンタルだけはガラス細工だな。」
呆れた様子の田吾作。

「きっとおの先生にも今度こそ良い恋人が現れますよぉ。」
エーコがありきたりな慰めを口にする。

「それは・・・いつですか?僕なんか無理っすよ・・・」
どこまでもネガティブなおの先生。


「とにかく旨い飯でも食って元気出せ!すぐに作ってやるから。」
田吾作は気を取り直して料理を始めた。

「すみません、あ、出来ればお魚料理でお願いします。昼の肉がまだ胃に残ってるんで。」

「調子に乗りやがってぇ。金払えよぉ~!」
とは言いつつも一度も支払って貰ったことのない田吾作。



「ほらよ。連子鯛の紅甘夏仕立て。」
カウンターで項垂れていたおの先生は料理を見るや目に輝きを取り戻した。

「うぉ!う、美味そうやないですか!!」
恐る恐るナイフとフォークで連子鯛をめくり上げ、下に何が隠れているのか確認するおの先生。
下にはソースとして煮込んだ玉葱と人参のみじん切りが紅甘夏の果肉で囲まれていた。

「美味しそうですぅ!妻の私にも作ってください!!」
エーコは慌てた。

「あ、すまん。魚はそれが最後だ。」

「え~~!!この泥棒猫ぉ!!」
今度はおの先生に八つ当たりを始めるエーコ。

「お前ほんと食い意地だけは宇宙一だな。」
呆れかえる田吾作をエーコはうっすら涙を浮かべた目で睨んだ。

「美味ぇ~!!」
さっきまでのドンヨリ感はどこへやら、おの先生が絶賛する。

「私にも一口~~!!」
皿に飛びつこうとしたエーコを咄嗟に躱し皿ごと持って逃げるおの先生。

「おいおいおい、皿を割るなよ!高いんだぞソレ!」

すっかり賑やかになった店内。
おの先生もすっかり元気を取り戻した様子である。
しかし彼らが楽しげになるほど、それを苦々しく睨みつけている者が居た。

「ぶるるる~?!きゅ、急に寒気がしてきましたけど??」
おの先生が突然悪寒に襲われた。

「ふん!天罰が下ったんですよ!」
一口も料理にありつけなかったエーコが憎たらしそうに吐き捨てる。

「風邪のひき始めが肝心だぞ。早く帰って寝た方が良いぞ。」
田吾作が心配そうにおの先生に帰宅を促す。

「そうですね。お腹も一杯になったし。今日はこれで失礼します!じゃ!」
来店時とは打って変わって笑みを溢すようになったおの先生。

店から出るおの先生の背中を刺すように見つめる影。

「あ、そういえば・・・あれ?」
何かを思い出したように、おの先生は急に向きを変え店に戻って来た。

「ん?どうした?」

「いや、今そこの壁の前に誰か居たような・・・?」
不思議そうに目を擦るおの先生を怪訝な表情で見る田吾作。

「あ、そうじゃなくって、この間のお借りしたお金を支払い忘れてたのを思い出したんだった。」

「金を貸した??あ~、ひょっとしてステーキハウスの件か?」

「それですよ、それ。」

「いーのかい?貰っても。」

「きっちり貰ってください!先生の告白代理に行ったんですから!」
まだ怒りが治まらないエーコは厳しい口調でおの先生に詰め寄る。

「いや、払います払いますって!だから戻って来たんじゃないですか。」
そう言うと慌てて支払いを済ませるとそそくさと店を出て行くのであった。

店を出るとおの先生は電車の時間に間に合うように急ぎ足で駅を目指す。
駅のホームに立ち、ようやく落ちつきを取り戻したおの先生。

「でも、不思議だよなぁ。あんなにはっきり人影が見える幻覚なんて。ま、まさか元彼女の生霊?!ぶるるる~~、ナンマンダナンマンダ。彼女に適度な天罰が下りますように!!」
ホームに立ったまま意味不明な祈りをするおの先生であったが、案外一番真実に近いところが見えているのかもしれなかった。

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類は友を呼ぶ?

2017-06-27 10:22:23 | 大分市
梅雨の雨がシトシトと降り注ぐ中、やや小ぶりの傘のせいで背広の袖が濡れて後悔する金庫番こと「あべ君」。

洗濯船はそもそもが異業種交流会からスタートしているのだが彼はその初期メンバーの一人である。

普段は金融関係の仕事をしているため「金庫番」の仇名が付いたのだが、彼もまんざらではないようであった。


「こんなに雨に降られたら飲食店じゃなくても売り上げに響くよなぁ。」

ボーイソプラノのような綺麗な高音の持ち主だが、独身時代は今より10kgは痩せていたのでイケメンでもありかなりモテたようだった。


彼が足早に向かった先は「通り抜けお買い物カフェ 洗濯船」である。

「こんちは~!」

喉の奥に鈴でも付けてるようなリンリンと心地よく響く声で挨拶しながらウナギの寝床のような店内へ入って行く。


「あ!田吾作さ~ん、あべさんが来てくれましたよ~!」

入るなりエーコが嬉しそうに田吾作を呼ぶ。


店の奥の厨房で仕込みをしていた田吾作がタオルで手を拭きながらノッソリと出て来た。

「おぅ!良くぞ来てくれました!」

田吾作も無精ひげだらけの顔で満面に笑みを湛えて金庫番を迎える。


「お疲れ様です!近くを通ったもので。で、どうですか、ここは?」

あべ君は少し心配そうに田吾作に尋ねる。


「どーもこーもねぇよ。人が通ってねぇや。」

駅ビルが100年ぶりに改修されて超大型商業ビルに生まれ変わって、府内町を中心とした中心市街地は人の流れがすっかり変わってしまった。


「この雨ですからなおさらですよね。う~ん。」

腕組みしながら田吾作の気持ちを忖度するかのごとく困った顔をして見せる。


「ははは、そんなに力まんでいいよ。こっちはそれなりに切り抜けるから。」

田吾作は『金庫番』の心遣いが嬉しい様子で笑って見せる。


「それにしても忙しい日と暇な日の差が激しすぎますよぉ。」

エーコが口を挟む。


「それも全て意味があるんだよ。ダメならダメで、上手く行くなら行くで。まあ楽観的に頑張るしかないわな。」

実のところ田吾作にも多少の焦りはあった。

だが焦っても悲観しても愚痴をこぼしても、それら全ては『時間の無駄』と常日頃から考えるようにしていたので態度には表れることは無い。


「でもここは場所は物凄く良いはずなんですけどねぇ。何か手があるはずじゃあないかなぁ。」

あべ君も何とか田吾作たちの力になりたいと知恵を絞る。


「ははは、儲けるアイデアを生み出すのは俺の本職だよ。気持ちだけで嬉しいよ。ありがとな!」

そういうと徐に良く冷えた杜仲茶のグラスを差し出す。


「あ、ありがとうございます!これめっちゃ飲みやすくて体にもいいっすよね!」

旬の逸品 石川では大分産の杜仲茶を扱っているのだが、洗濯船メンバーもすっかりハマってしまいリピート購入者が多い。


「なんせ俺たちが剪定してきたんだからな!わはは。」

最近では農家の高齢化が進み農作物の収穫が出来ずに畑で朽ちて行くことが多い。

そこで田吾作たちは自分たちで収穫する代わりに安くそれらの農作物を分けてもらうことにしている。

農家からすればそれでも大助かりらしく喜ばれているのだった。


来店客も居なかったのでしばらくの間色んな世間話に花が咲いた。

それでも、3杯目の杜仲茶を飲み干すとあべ君が席を立ち仕事に戻ると告げた。


「今日は心配して来てくれてありがとう。ここは何とかするから自分の仕事に精を出してくれ。」

すっかり元気を取り戻した田吾作とエーコを見て安心した様子で店を後にするあべ君。


「俺らは本当に素晴らしい連中に恵まれてるな。嘆いていたら罰が当たるか。わはは。」

「そうですね!愚痴をこぼす暇があるなら皆が勝手に来たくなる仕掛けの準備をするか掃除をしましょう!」

「何だよ、それ。俺の受け売りじゃねぇかよ。」

「てへへ。」


楽し気な二人を刺すような視線で見つめる者がこの店に居ようとはこの時はまだ田吾作たちは知る由も無かった。






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ア―ユーハングリー?

2017-06-24 11:41:55 | 大分市
「今朝も食べる暇が無いのですかぁ?」
青果市場をうろつきながらエーコが不満げに田吾作に問いかける。


「お客さんの喜ぶ顔を想像してみろ。腹なんか減ってても元気が湧くだろ?」
仲卸の店頭に並ぶ赤パプリカを一つ取り上げるとエーコの事など気にしてない素振りで吟味する田吾作。


「でも毎朝4時30分に起きて活動開始してるのに朝食の時間も取れないのはどうかと・・・」



「ちゃんと食ってるだろうが、11時ごろだけど。」



「それは昼食ですよぉ。何か食べましょうよぉ~。」



「そんな暇はない。夜の『酒肴 田吾作』の予約が入ったから活きの良い魚を仕入れに魚市場にも行くからな。」



「え~~~~~」

魚市場は広大な市場の敷地内に青果市場と並んで立地している。
そのため歩いても移動できるのだが、空腹のエーコがすんなり頷くはずもなく、車で移動することにした田吾作たち。



「あらお久しぶり。」

いつもの買い付けの鮮魚の仲卸の店頭に着くと女将さんが気さくな笑顔で迎えてくれる。



「実は飲食店も始めちゃいまして。刺身用の活きの良いの何かありますか?」



「ははは、何でもやるんやな!活きの良いのあるでぇ。今日はカキダイ、別名ヒゲソリダイが入っちょんでぇ!」

魚屋さんらしく女将さんの活きも良い。



「あら別嬪さん、今日は元気が無いねぇ。」
田吾作の横でブスッと膨れているエーコを見つけて早速声をかける。


「だって何も食べてないんですよぉ。」



「腹減っちょんのかえ?これ食いよ。」

そう言うと女将さんは手作りのスパゲッティ―が挟まったサンドウィッチを一つエーコに手渡す。

「ありがとうございます!!」
途端に機嫌を直すエーコ。

「ばかやろう!大して仕入れる訳じゃないのに甘え過ぎだろうが!!」

「あはは、ほんと今日は赤字やな!」
豪快に笑い飛ばす女将に田吾作は申し訳なさそうに頭を下げる。

「これ美味しいでモグモグ・・・!」
語尾がはっきりしないほど口一杯にサンドウィッチを頬張るエーコ。

「あんたサンドは逃げんのやけんゆっくり食べよ。わはは。」
女将さんは子供のようなエーコを面白くて堪らないといった様子で見守るのだった。

ひとしきり魚介類を吟味した後に、全ての必要な食材を手に入れた田吾作たちは店舗準備と納品配達とで別行動に移った。

9時過ぎには開店準備を始めた田吾作。
ほどなく常連が入って来るとランチをオーダーした。
だが、実は看板には「11時から」と書いてあった。
それでも気にする風でもなく田吾作はすぐにランチの用意に取り掛かった。

こうしてまた忙しい一日が今日も始まった。

「もう一個サンド貰っとけば良かったですぅ~!」
その頃エーコは配達車の中で空腹を抑えきれずに叫んでいたのであった。




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始まりはいつも突然に?!

2017-06-21 10:48:38 | 大分市
4月も下旬となると柔らかな風が心地よく頬を撫でるようになっていた。

アイドリングの振動も加わって、思わず眠くなってしまいそうなのを堪え目を擦る田吾作。

後部座席のドアが勢い良く開きエーコが乗り込んでくる。

「はい、プリン貰いました!急いで市場に向かってください!」

「俺は運転手かよ?」

「はいはい。時間が無いですから!」

田吾作の不満げな様子を気に留めるでもなく急かすエーコ。

大分市中心部にひょんなことから店舗を構えることになってからというもの毎日が時間との闘いである。

オープンは4月16日。

「いやぁ~これだけ見事な内装工事が出来るなら田吾作さん、街中で一緒に面白いことしませんか?」

友人宅を激安で改造し異業種交流会『洗濯船』の秘密基地にしたことがキッカケで、現在のビルのオーナーさんと知り合った。

廃墟同然だった部屋がわずか3万円で海賊船の船長室のような内装に変身したのだから驚くのも頷ける。

そんな田吾作さんとメンバーのデザイナーさんの能力を街中活性化につなげられないかという提案から開店することになったのだった。

そもそも異業種交流会「洗濯船」とは田吾作がはじめた会である。

元は「一隅を照らす人になろう」ということで無料で経営学習会を開いていたのが始まりの会である。

それだけに困った人を見つけたら全力で応援するような人ばかりが集まって来たのだ。

この会も今年で12年目。

ようやくメンバー間の信頼関係も強くなり、また各メンバー一人一人が実力を付けて来た。

おかげで彼らが想像したことは面白い程実現するようになったのである。

この「通り抜けお買い物カフェ洗濯船」という店名も飲食店と物販がセットになった、いかにも異業種交流会らしさを表している。

「買ってよし、売ってよし、世間よし。この三方よしの面白い商売を実践しながらさらに面白い仕掛けを仕込んでいくぞ。」

当初、田吾作の意気込みは相当な物だった。

しかしゴールデンウィーク以降パッタリと街中の人通りが止まった。

流石にこれには田吾作も青ざめた。

そこで物販をメインにしていた店舗を飲食店として機能させることを思いついたのが5月25日。

田吾作とデザイナーが厨房を工事して飲食店としての許可が取れたのが6月1日。

これまた激安で工事完了。

幸いなことにメンバーには空調配管や水道工事や電気工事が出来る人が居たのだ。

彼らも遊びの感覚で応援してくれるものだから工賃は無料。

あれもこれもほとんど無料で本格的なことが出来てしまうのが洗濯船の凄いとこである。

飲食店としてオープンして今日までにランチの予約が入るようになった。

野菜たっぷりのサンドが2つ、季節のカットフルーツ、温泉卵かミニオムレツ、杜仲茶か黒豆茶までついてワンコインなのが受けたようだった。

そして洗濯船らしく一風変わった能力者が徐々に集まってくるようにもなったのである。

そこで彼らとの出会いと日常を航海日誌として留めておくことを田吾作は思いついたのだ。

実はこれには前例があったのだ。

現在、田吾作夫婦は石川青果という八百屋を継承しているが、このネットショップを作った際に色んなキーワードで検索にヒットするように当時の会のメンバーとの出会いを小説に書き留めていた。

それが後年、テレビの有名なプロデューサーだか映画監督だかが店までやって来て「雰囲気ありますねぇ。これ映画にしましょう!」ということがあったのだった。

この時は実質的に店舗運営を田吾作一人で切り盛りしていたので作家としてロケに同行出来ずに泣く泣く諦めた経緯がある。

「今度は変わりが一杯いるから映画化できるぞぉ!!」

正味の話がこんな下心満載なだけである。

果たしてこれから田吾作たちがどんな仕掛けで府内町を活気づけるのか、楽しみである。
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