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北海道 大雪山系の山岳遭難

■北海道 大雪山系で 痛ましい山岳遭難があった。

現時点でも 様々な情報が伝えられているが、背景的要因を含めた 山岳遭難についての詳細が明らかになるのは 相当先のことであって、事故の痛ましさを思えば 断片的情報を元に あれこれコメントするような気には ならない。

およそ 大自然のなかでは 人間の存在などちっぽけなもので 私の 乏しい経験の中でも、山中では 人智を越えた 想像以上の場面に 出くわすことは 往々にしてある。

もとより 大自然相手では 100パーセント絶対安全などということなどあるはずもない。

山の中では 何が起こるか分からないので 明日は 我が身かもしれないと自戒し 過去の遭難事例を繙いて どうすれば少しでも 危険を回避することができるのかと 常に考え行動する 事ぐらいしか 私にはできない。

■過去の山岳遭難について いえば 大正12年1月の槇 有恒氏一行の松尾峠での遭難の昔の時代から 色々な 手記、記録、報告などが公表されて 書籍、 山岳雑誌、会報とか、「山岳遭難事故報告書」などにあるほか、 春日俊吉氏、 小島六郎氏などから 山岳遭難を題材にした数多くの著作が出ている。

最近の山岳遭難では 一連の「ドキュメント ○○遭難」シリーズなどがある。

『ドキュメント気象遭難 』羽根田 治著2003年6月 山と溪谷社
『ドキュメント滑落遭難 』羽根田 治著2008年7月 山と溪谷社
『ドキュメント道迷い遭難』羽根田 治著2006年1月 山と溪谷社
『生還 山岳遭難からの救出 』羽根田 治著2000年11月 山と溪谷社
『ドキュメント雪崩遭難 』阿部幹雄著 2003年2月 山と溪谷社



■そのなかで 『ドキュメント気象遭難 』
「夏・台風・トムラウシ山-低体温症」94~144ページがある。

愛知と福岡の2パーティー、2名が遭難死亡した2002年7月のトムラウシ山


この取材にあたって著者 羽根田 治氏は 愛知のパーティーでは
「亡くなった方の夫が、「こういう事故を繰り返さないためにも取材に応じてあげてくれないか」と説得してくれたようだった。」
と 協力的な対応で 生存者など関係者からの直接インタビューができた。

ところが もう一方の福岡パーティーからは 全く反応がなかったという。

というのも この本が出たのは 2003年で翌2004年旭川地裁で 福岡パーティーのガイドだった方への 地裁判決がでた。

2002年は十勝岳、黒岳での遭難もあったが、2004年には、1999年の羊蹄山、2002年トムラウシ山のツアー登山での事故で地裁判決出たのである。

愛知と福岡の二つのパーティーで 取材の対応に大きな差が出たのも この裁判があったためだろう。

一方は羽根田 治氏の取材に応じ 真実がかなり明らかになり 事故の再発防止の手がかりになりそうな ことも 少しは明らかになった。

しかし羽根田 治氏の努力にもかかわらず 福岡のパーティーでは 責任を追及される関係者からの取材は全く塞がってしまった。

山岳事故で刑事責任を追及することには 色々な意見があるだろうが、責任を追及すれば関係者の口は全く塞がってしまい およそ事故の再発防止という点では マイナスになる。

■この点 アメリカのNTSB(国家運輸安全委員会、National Transportation Safety Board)は 航空機などの事故の再発防止を主眼に 真の原因を追求し これまでに 「空の安全」に 大きな寄与をしてきたといわれている。

パイロットへの個人責任の追及より事故の再発防止に力点を置くことには 違和感もあるが 事故の教訓を生かすことができる。


http://www.ntsb.gov/

勿論 一般的な刑事犯罪の世界では 責任追及は当然だろう。

■しかし予見不可能な想定外な事が起こるのが山の世界。
複雑多岐な背景的要因がある山岳遭難で 勧善懲悪的な時代劇ドラマのように「これにて一件落着」として、報復的な懲罰を与えるというのは
事故の再発防止の観点からは 決して いい結果に結びつかない事が多い。


登山も含め 世の中 なんでも 訴訟社会ではあるが、昨今では 医療訴訟を恐れて産婦人科医の医師のなり手が少なくなったとか。

(『登山の法律学』)

ツアー登山などでは 民事訴訟での高額の判決、和解も出てきている。近頃 山岳会や山岳部の活動までもが 全体的に萎縮し 低迷してきているのは なにかと法的な責任追及を恐れる 意識が底辺にあるのも一因のような気もする。


2009年のトムラウシ山遭難事故も 多分 関係者の口は 重く、『ドキュメント気象遭難 』として 遭難事故の再発防止に つながるような真実解明は かなり先のことであろう。



ツアー登山

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コメント
 
 
 
Unknown (torlls)
2009-08-02 01:37:55
下記のサイトをご覧下さい。生々しい現場のの証言です。

北海道大雪山系 トムラウシ山 大量遭難を考える。 今回の事故について戸田新介様のご意見 と 幾つかのご回答
http://subeight.wordpress.com/2009/07/31/mr-toda-text/
 
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