團十郎丈のいない團菊祭。
菊五郎自身もテレビで「相棒がいなくなっちゃった」と漏らしてたわけですし、團菊祭と銘打たず、
今月は坂東家の襲名公演でいいのではないでしょうか。
彦三郎改め初代楽善、息子の亀三郎改め彦三郎、その弟の亀寿改め亀蔵、新彦三郎の息子・亀三郎ちゃん。
めでたい舞台には、4人のお名前が記されたシックな祝い幕も掛かっています。
九代目彦三郎を襲名した亀三郎は口跡が良く、実力派の役者です。
幕開けの「対面」では、荒事の曽我五郎をきっちりと務めています。
身体能力も高い彼は、腰を落として荒事に懸命に取り組んでいますが、以前に松也君が同じ役を務めた際も
「腰を低くして大声を出せば荒事になるわけではない」と評されていたことが思い出されました。
新彦三郎さんには今後、彼のすっきりとした持ち味を生かしたお役でどんどん主演を務められることを期待します。
「口上」では、4歳の新亀三郎ちゃんが可愛らしくも堂々とご挨拶。
隣の権十郎さんが終始、かいがいしく「はい、右向いて左、はい、上」とお世話をしているのが私の席からだと
よく見えるし聞こえるしで、親族一同勢揃いの温かい雰囲気がとても素敵でした。
亀蔵も時折、横を向いて甥っ子の亀三郎ちゃんを見て優しく微笑んでいました。
その後、伊達家の御家騒動を芝居にした「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の「床下」で、ザ・荒事な
松緑@荒獅子男之助を見ると、「荒事は一夜にしてならず」と感心させられます。
ネズミに変身した、主役の海老蔵@仁木弾正に逃げられて「取り逃がしたか」という「かーっ!!」がカッコいい。
この演目のために取った最高の1等席で見る、すっぽんから現れる海老さまが妖しい~。
悪事の証拠となる連判状を口にくわえて、「してやったり」という憎々しい顔で悠々と去っていく場面。
すっぱんから完全に上がると海老さまはカッと白目を剥きます。
どうやってるんだろう~、怖いよ~、不気味さ満点だわぁ。
その後、「フフン」という表情で花道を歩いていくときの横顔は本当に美しく、「なんでこんなに鼻の形が綺麗なの?」
「いつ見ても睫毛が長い~♪」と堪能しました。
と、このように花道での姿は素晴らしいのですが、「刃傷」で立ち回りになるといつもの「ガルル」と唸る癖が……。
仁左さまも幸四郎も、そんな唸り声は上げません。
もう少し、クールな悪の雰囲気を出す工夫が欲しいと思います。
姿も声も申し分ないのですから、この役、必ずモノにしてください!
27日千穐楽。