伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

何者

2016-10-14 01:30:08 | 小説
 明るく人懐こく小器用にふるまえるバンドヴォーカルの神谷光太郎とルームシェアする学生劇団員二宮拓人が、思いを寄せるが本人は光太郎と付き合って振られながら光太郎のことをあきらめきれない田名部瑞月とその友人の留学帰りの小早川理香+理香と同棲する哲学者気取りの宮本隆良らとともに、協力したり対立・反発しながら就活を進め、思うに任せぬ成り行きの中でもだえ苦しみつつ、自己のアイデンティティを確立しよう(「何者」かになろう)とする青春小説。
 世渡り上手な人気者光太郎に対して憎めないけどなんか苦手だなぁという思い、瑞月のまっすぐな純粋さに抱く好感とその瑞月の心を光太郎に奪われることの切なさを、語り手の拓人と共有しながら、隆良への反感、隆良への/隆良からの、理香への/理香からのささやかな悪意に違和感と戦慄を覚えます。そのパターンで比較的安定して展開する前半・中盤から、理香と拓人が絡んで暗転するラストがほろ苦い。
 客・消費者の立場からは、どうということのない、むしろ評価の低い企業にまで、就活という場面ではしっぽを振り、媚びへつらい、他者からの評価に一喜一憂し、内定が出ないというそれだけのことで自分の評価を下げ自信を無くしていく姿、私は就活というものを経験していないので本当のところはわからないけれど、就活とその洗脳力の怖さを感じます。就活の過程で学生をどう扱うかに垣間見えるように、対客や商品、広告力では一流(かもしれない)企業が、対労働者ではどれほどずさんで傲慢かをたびたび実感している労働者側の弁護士としては、そんなにしてまでありがたがって入社するほどの会社なのかなと、立ち止まって考えてほしいなと思います。


朝井リョウ 新潮社 2012年11月30日発行
直木賞受賞作
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