伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

なぜ、あの人の頼みは聞いてしまうのか? 仕事に使える言語学

2014-05-27 22:45:50 | 実用書・ビジネス書
 言葉のチカラで人を動かす方法、特にビジネスの場でのその応用を論じた本。
 頼みごとをするときには、相手の自由度を高める(命令形ではなく相手に自分で選択させる)、仮定法過去や間接疑問文など持って回ったまどろっこしい言い方をした方がいい、それがていねいな真心のこもった言い回しだとかいうことを英語を始め世界中のさまざまな言葉に同じ傾向が見られるなどと説明しています(48~50ページ、106~112ページ)。実例として示されるのは英語だけですが、何となくこういうふうに言われるとそうかなあと思ってしまいます。著者の言葉のチカラで言いくるめられてるだけかもとも思いますが。
 その言葉が発せられた状況の下で標準的な表現を無標の言葉、標準的でない表現を有標の言葉として、有標の言葉をうまく使うことを勧めています。挙げている事例は、やや奇をてらった感もありますが、コミュニケーションのヒントではあります。
 全体としては、やや統一感に欠ける小ネタの集合という感じもします。
 ①常に機会を求め=「飲みの席には這ってでも行け」「ノーと言わない大人になりなさい」、②あきらめないで努力して=「あきらめたらそこで試合終了ですよ」、③成功すると自分に言い聞かせ=「できるかできないかじゃない。やるかやらないかだ」、④固執しないでフレクシブルに=「階段を上がれば見える違った景色がある」、⑤リスクを恐れず挑むこと=「書けば官軍」「やらない後悔よりやる後悔」が、著者の人生の指針にもなっているとか(76~81ページ)。このあたりは、人を動かすというよりは自己暗示という感じですが。
 著者のプロフィールは「明治大学法学部教授」で専門は司法コミュニケーションの社会科学的分析、法言語学、理論言語学で、「自身も会社を経営するなどビジネスにも通じている」とされています。「発話行為というのは、話し手と聞き手の間で、必ずしも一致するわけではない」と言ってその例で「霊感商法のセールスマンが、『ご家族のこともいろいろとご心配でしょうし』と気遣いのつもりで発した言葉を、聞き手が『その商品を買わないと自分の家族に危害を加えられる可能性がある』と解釈してしまったら、『脅迫』ということになります」(40ページ)とまるで霊感商法の加害者が気遣いのつもりで言っているのに被害者が勝手に取り違えたというように書いています。被害者側にではなく霊感商法セールスマンの側に寄り添って助言するという書きぶりを平気で選択するセンスは、私の理解を超えています。ちょっと引いて読んだ方がいいかなとも思えました。


堀田秀吾 2014年2月10日発行 ちくま新書
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3 コメント

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ありがとうございます (堀田秀吾)
2014-06-19 13:56:49
 著者です。拙著を大変丁寧にお読みいただき、また詳細なレビューをお書きくださりありがとうございました。
 さて、何点かコメント(弁明)させてください。

1)「このあたりは、人を動かすというよりは自己暗示という感じですが。」という部分については、第二章のテーマ(およびタイトル)が「ことばを変えて、自分を変えろ!」ということですので、自己暗示の話をしているのは、一応、論点としては外れていないつもりでした。本のタイトルが少々ミスリーディングでした。申し訳ございません。

2) 「霊感商法の加害者が気遣いのつもりで言っているのに被害者が勝手に取り違えたというように書いています。」
という部分につきましては、ここで言いたかったのは、話し手の意図よりも聞き手の意図が重要ということだけで、とくに霊感商法の肩を持つつもりもございません。しかし、確かに読み返してみると、ご指摘の通りにも読めます。今後、参考にさせていただきます。
 伊東先生はご職業が弁護士ということで、ご参考までにお話しておきますと、2について、実は、霊感商法そのものではないのですが、こういう実務上の事例に出くわしたことがございまして、例としてもわかりやすいと思い、近い形で紹介した次第です。その際、確かにご指摘いただいたような配慮が欠けていたように思います。今後、気をつけたいと思います。(センスが悪いと言われてしまえば、まったくその通りで返すことばもございません。)

 大変参考になるご意見をありがとうございました。今後ともご指導のほど、よろしくお願いします。
コメントありがとうございます (伊東良徳)
2014-06-19 20:58:35
厳しい書き方をした記事に対し、大変謙虚なコメントをいただき、恐縮します。
消費者側の弁護士で、かつては霊感商法の事件を相当程度やっていた(もちろん被害者側で)こともあり、霊感商法のセールスマンを免罪するような表現を見て感情的な書きぶりになってしまいました。
本のタイトルは、出版社側が付けるのが通常で著者の意見が通らないこともままあり(私も経験しています)タイトルと中身があってないのは著者のせいともいえないと認識しています。
ありがとうございます (堀田秀吾)
2014-06-20 03:08:38
早々のリプライをありがとうございました。

学者業界は人の論考を批判するのが基本ですし、
科学や学問、もっと一般的にアイディアや技術
というものは、批判があって初めて発展して
いくものだと考えておりますので、
むしろ、先生のように丁寧にお読みいただいた
上でのご指摘はありがたい限りです。大変勉強に
なりました。ありがとうございました。

先生の一層のご健勝、ご活躍を心より祈念しております。

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