伊東良徳の超乱読読書日記

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最新 映画産業の動向とカラクリがよ~くわかる本 [第3版]

2017-05-14 21:36:45 | 実用書・ビジネス書
 映画産業の市場の動向、映画ビジネスの関係者の業務・分担、タイアップなどについて説明した本。
 「カラクリ」などという言葉がありますが、裏話的な話や掘り下げた話は見当たらず、表面的公式見解的なことを淡々と書いているように思えます。
 「第2章 日本のアニメ産業の動向」「4 海外市場の動向」では、「まず北米市場において、これまで最も多くの興行収入を上げた日本のアニメ映画は『ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(一九九九年公開)で、興行収入は八五七四万ドルになっています。また『ハウルの動く城』(宮崎駿監督)が二〇〇五年に公開され、四七一万ドルの興行収入を上げています。同じスタジオジブリの『千と千尋の神隠し』もヒットするなど映画の本場ハリウッドでの日本アニメに対する評価は高くなっています。」(44ページ)と書かれています。「クールジャパン」とかいって日本のアニメは外国でも高く評価されていると喧伝されていますが、こういう書き方はどうなんでしょうか。日本のアニメ作品をその物語性や作画の丁寧さなどの面から高く評価する人は、ハリウッドにも当然にいるでしょうし、私もそういう点で日本のアニメ作品を貶めるつもりはありません。しかし、こういう書きぶりでは、「クールジャパン」とかいっている連中と同様、読者は日本のアニメ作品がアメリカでも大ヒットしたかのように誤解し、アメリカでヒットした故に日本のアニメは高く評価されていると誤解してしまうのではないでしょうか。アメリカでこれまで一番ヒットした日本のアニメ映画「ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」(Pokemon : The First Movie)は、アメリカ歴代ランキングでは200位圏(1億8000万ドル台の上の方)もほど遠く、1999年公開映画のランキングでようやく25位です。2番目にヒットした「ポケットモンスター 幻のポケモンルギア爆誕」(2000年)(Pokemon : The Movie 2000)の興行収入4376万ドルは2000年公開映画のランキングで59位、ジブリアニメの中でアメリカでの興収が最高の「借りぐらしのアリエッティ」(2012年)の1919万ドル、「崖の上のポニョ」(2009年)の1505万ドル、「千と千尋の神隠し」(2002年)の1006万ドルのいずれも公開年のランキング100位(大抵は2000万ドル台の上の方)にも届いていません。日本のアニメ映画で、アメリカで大ヒットした作品はなく、せいぜいポケモン2作品がふつうレベルで「ヒット」したという余地があるという程度という客観的な認識をまず持つべきだと、私は思います。逆に、日本での興行成績を見ると、もちろん、日本のアニメ映画が上位を占めているのですが、その中で「アナと雪の女王」(2014年)が歴代3位(「君の名は。」は、結局、これを抜けないようです)、「ファインディング・ニモ」(2003年)が歴代21位、「トイ・ストーリー3」(2010年)が歴代26位など、アメリカのアニメ映画作品が相当に受け入れられています。外国市場でヒットしているという点からすれば、日本のアニメ作品はアメリカのアニメ作品に遠く及ばないとみる必要があるでしょう。
 こうした客観的なデータ(今どき、私のような素人でも簡単に探すことができます)を掲載しないで、日本のアニメ映画がアメリカ市場でヒットしているかのような誤解を与えるような文章をプロが書くことには強い疑問を持ちます。それも、2007年の初版より後のアニメ作品の情報が全く入っていないのも不思議です(初版出版の少し前の「ハウルの動く城」を取り上げて、その後それより数倍の興収を挙げた作品を紹介しないというのでは、フェアでもないでしょう)。
 予告編の制作で、「ときには本編にない映像を作るなど、観客に期待を持たせるために、様々な工夫が要求されます。」(113ページ)って、それは「工夫」じゃなくて、「だまし」「詐欺」だろうと思うのですが、映画業界人は、観客に対する誠実さというのは気にもかけないものなのでしょうか。そういう感覚だから、上述のように客観的な事実を無視して日本のアニメ映画がアメリカでヒットしているかのような書き方も平気でできるのかと思ってしまいます。


中村恵二、荒井幸博、角田春樹 秀和システム 2017年4月1日発行(初版は2007年10月、第2版は2012年8月)
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