伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

くすりをつくる研究者の仕事 薬のタネ探しから私たちに届くまで

2017-06-13 22:24:00 | 自然科学・工学系
 京都大学大学院薬学研究科の教授・准教授ら研究者が、薬の製造に関する各分野の研究の現状と難しさなどを解説し薬学研究の魅力を論じた本。
 多数の研究者の分担執筆のため、執筆者により、基礎研究に没頭する人から製薬ビジネスに近い人、薬学を志す学生を勧誘すべくわかりやすく語ろうとする人から自分の研究紹介に徹しかみ砕こうとしない人、など章ごとの読みやすさ・読後感が様々ですが、薬学研究の魅力を語ろうというところではスタンスが統一されているように感じられ、学者さんの分担執筆した本としては、読み通そうという意欲があまり落ちずにすみました。
 前半の薬効を有し医薬品となる化合物やその候補の発見、選別、製造、デザインなどの話が、メインなのでしょうけれども、私には、生体のリズムにより(1日の時間により)病気の症状や薬の効き方も変化するという第9章、同じ薬でも効く人と効かない人がおりそれは薬に対する生体の感受性の個人差のほかに薬の吸収・分布・代謝・排泄の個人差による(後者の影響の方が強い)という第12章の5、そして薬をどのようにして薬が作用すべき場所に届け適切な濃度で適切な時間保つかというデリバリーコントロールが重要だという第10章、そして薬の併用や食物との相互作用に関する第12章の8、9が大変興味深く思えました。最後の食品との食べ合わせでは、高血圧の薬や免疫機能を調節する薬など様々な薬の体からの消失(代謝)をグレープフルーツジュースの成分が遅らせ、その結果薬の効果を増強するとともに副作用も増強する(その成分は、グレープフルーツの「皮」に含まれているので、グレープフルーツを食べても摂取されないが、機械絞りのジュースだと含まれるのだそうだ)とか、血栓を防止する薬ワルファリンの効果は納豆やクロレラを食べると弱まる(後者は、聞いたこともあった気がする)とか(279~282ページ)、人間の体だから簡単でも一律でもないとは思うけれども、難しいものだなと思いました。
 解熱・鎮痛薬の代表ともいえるアスピリンは、柳の樹皮や葉に含まれ、古代中国では歯が痛い時に柳の小枝で歯の間をこすっていたようで、これが「楊枝」の起源だって(14ページ)・・・ふ~ん。


京都大学大学院薬学研究科編 化学同人 2017年3月30日発行
『本』 ジャンルのランキング
コメント (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 定年認知症にならない脳が冴... | トップ | 日中漂流 グローバル・パワ... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
無題 (こむろ)
2017-06-16 13:11:05
 短大の時の一般教養の授業で薬は使い方次第で薬にもなるし毒にもなると習いました。私自身は今では病気がちなんで薬を毎日服用していますが、使い方は厳守しています。
コメントありがとうございます (伊東良徳)
2017-06-16 19:55:56
こむろさん、コメントありがとうございます。
私は、基本的に薬を飲まないので、ふだんはあまり考えてないのですが、個人レベルでは、さらにいうとお医者さんでも、使い方が十分にわからないところがあるのではないかと考え込んでしまいます。ものすごく多くの薬があり、その相乗作用がすべて事前に確認されているということはないと思います。さらに、薬以外の食べ物との相乗作用も考えると・・・

コメントを投稿

自然科学・工学系」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL