伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

イエスの幼子時代

2017-04-06 01:18:38 | 小説
 難民キャンプからスペイン語圏の架空の町「ノビージャ」にたどり着いた初老の男シモンが、船中で知り合った母親探し中の5歳の少年ダビードとともに住処と仕事の割り当てを得て、ダビードが知り合った近隣の少年フィデルの母親エレナに言い寄って肉体関係を結び、近隣で見かけた独身女性イネスにダビードを押し付けながら、イネスがダビードを気に入って独占すると疎外感を感じて不平を言い募って干渉し、イネスが無頼漢のセニュール・ダガに惹かれると嫉妬してあいつとは付き合うなと説教するという中で、ダビードは読み書きも算数もできるのにできないふりをしたり奔放/気まぐれにふるまって周囲の大人から睨まれて…という展開の小説。
 この作品は、「イエスの幼子時代」というタイトル(原題もそう)からして、ダビードの成長過程がテーマのはずですが、シモンの視点で描かれているため、ダビードの内心は不確かで、ダビードは天真爛漫/天衣無縫というか気まぐれで奔放にふるまい、シモンやイネスに対しても嫌いと言ってみたリ好きと言ってみたり一貫性を感じにくく、「成長」したのかどうかもわかりにくくなっています。そして語り手ともいうべきシモンが、前半では、周囲の人々がみな鷹揚に親切にふるまう中ただ一人不平不満ばかり言い募り気難しく自尊心ばかり強い嫌な奴で、身勝手な要求・ふるまいを続けているくせに、ダビードの奔放なふるまいには突如秩序を重んじるように言い募りそれも権威主義的に上から目線で言うことを聞かせようとし、しかも他人(教師、カウンセラー、役人)がダビードとシモンに法と秩序を守るように求めるや今度はそれが気に入らないと文句を言いだすという、他人に厳しく自分には甘い、他人の権威主義には反発しながら自分は弱いものに対しては権威主義的という、どうにも共感しがたい人物なので、読んでいて、私は不快感がずっと付きまといました。人間って、こういうわがままでしかも自分がわがままとは気が付かない愚かな存在ですね、というのがテーマと読めばいいのかもしれませんが。
 この作品自体では完結せずに、続編の「イエスの学校時代」が刊行予定ということですが、「訳者あとがき」がいう「こんなに続編を読みたいと思った小説はない」(374ページ)という心境には、私は程遠いです。


原題:The Childhood of Jesus
J・M・クッツェー 訳:鴻巣友季子
早川書房 2016年6月25日発行 (原書は2013年)
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