伊東良徳の超乱読読書日記

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マーティン=L=キング [新装版]

2016-09-18 13:59:27 | ノンフィクション
 アメリカ公民権運動のリーダーであり、ガンジーとともに「非暴力不服従運動」のシンボル的存在でもあるマーティン=ルーサー=キング牧師の伝記。
 著者が牧師であることもあり、牧師・宗教家としてのキングの生きざま、思想に焦点を当て、キングがその名を付されたマルティン・ルター(マーティン=ルーサーはその英語読み)との対比を意識的に取り上げている点が類書との違いとなっているように思えます。
 また、キングの誕生日(1月15日)を国民の祝日とした際(1986年)のレーガン大統領の演説を皮肉って、キングの思想と記憶を支配体制に取り込もうとするものと批判する序文に象徴されるように、通常の伝記で中心となるモンゴメリーのバス・ボイコット運動からワシントン大行進・「私には夢がある」演説までを超えて、その後のキングのベトナム反戦、暗殺の直前に計画を進めていた「貧者の行進」へと続くラディカリズムへの傾斜にも焦点を当てています。
 私としては、1957年5月17日のワシントンDCでの「投票権をわれらに」の演説で、「われらに投票権を与えよ。そうすればわれわれはもはや、連邦政府に反リンチ法の通過を嘆願したりしない。われわれは自分の投票の力によって、南部諸州の法令集の規則を書き、頭巾をかぶった暴力犯罪者の卑劣な行為に終止符を打たせるであろう。…」などと黒人が平等に選挙権を行使できればあとは投票の力で差別を解消していけると述べたことを、1968年1月に貧者の行進に向けた声明では「われわれはアメリカ社会の構造に関して、投票権やレストランで食べることのできる権利は、重要ではあるが、この国の『動力工場』にはその力を浸透しておらず、したがって生活条件に実際何の影響も与えてはいないことを、洞察している。われわれが学んだことは、アメリカにおける実りある生活には金が必要だということである。なぜならこの社会は、金なき者にはいかなる流動性も創造性も、また力も提供してはくれないからである。」とした、キングの思考の中での変化、キングがそれをどのように言い訳/説明しているかに強く関心を持ちました。状況の変化に応じて、また過去の判断の甘さを乗り越えて、主張は変えていかなければならない場面は少なからずありますが、それをどう説明するか、悩ましくも興味深いところです。そこは踏み込んだ記載がなく残念に思いましたが、それは少しないものねだりでしょうか。


2016年2月25日発行(旧版は1991年11月) 梶原寿 清水書院センチュリーブックス「人と思想」シリーズ
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