伊東良徳の超乱読読書日記

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真夜中に戸をたたく キング牧師説教集

2007-12-03 22:33:16 | 人文・社会科学系
 1950年代~60年代のアメリカの公民権運動(黒人解放運動)の指導者だったマーティン・ルーサー・キング2世の説教集。
 日本語版では2003年発行の「私には夢がある」の続編。「私には夢がある」の方がキング牧師の指導した非暴力抵抗運動を語る説教・講演が比較的多かったのに対して、この本ではキリスト者としての生き方や信仰告白的な説教が多いように感じられます。
 その中でも「あなたの敵を愛せよ」と「アメリカの夢」は、運動的にも優れた説教だと感じます。「あなたの敵を愛せよ」で、敵をも愛すべき理由としてキング牧師が語ったのは、憎しみには憎しみをという考えは憎悪の連鎖・憎悪の悲劇を招く、破滅を避けるためには憎悪の連鎖を断ちきる強さが必要である、憎悪は憎悪の心を持つ人の人格を歪める、そして愛こそが/愛だけが人を/敵を変える力を持つこと(82~87頁)。この苦しくも美しい論理とともに、被抑圧者が抑圧に対処する方法としては、憎悪ではなく愛を持ってしかし譲歩せずに非暴力抵抗運動を行うことこそが唯一の方法でありまた現実的であるという認識が、このキング牧師の説教を裏打ちしていることは見逃せません。「アメリカの夢」では非暴力抵抗運動と愛を語った上で、キング牧師が1963年に行った「私には夢がある」の説教の後、その黒人と白人の共存の夢が度々悪夢に変わり粉砕されたことを告白しながら、しかし、なお「私には今朝、まだ夢がある」と聴衆に語りかけるキング牧師の言葉(135~137頁)の悲痛さ、せつなさとたくましさに感じ入りました。
 説教を続けて読むとどうしても同じエピソードが何度か使われていることに目が行きますし、全体としては、キリスト教会的な関心での編集が目につきますが、それでもなお素朴な感動に打たれる1冊だと思いました。


原題:A Knock at Midnight
クレイボーン・カーソン、ピーター・ホロラン編 訳:梶原寿
日本キリスト教団出版局 2007年9月10日発行 (原書は1998年)
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