伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体

2015-10-03 22:24:00 | 自然科学・工学系
 脳が快楽を感じている時に分泌され、各種の依存症ともかかわるドーパミン等の脳内麻薬について説明した本。
 「はじめに」で、何かを成し遂げ、社会的に評価されて喜びを感じるとき、友人や家族や恋人から感謝やお祝いの言葉を聞いて幸福感に包まれるときには、食事やセックス、そのほかの生物的な快楽を脳が感じているときに分泌されている物質と同じ「ドーパミン」が分泌されている、人間は目の前の餌を食べたいという生理的欲求とぶつかり合う遠い将来を見据えた行動や一見役に立つのかどうかわからない科学や芸術に向けた知能的行動を行うときに快楽物質を分泌し、頑張っている自分へのご褒美のしくみを築き上げ、進化してきたのではないかという問題提起をしています(4~5ページ)。
 セックスの快感もドーパミンを分泌する報酬系の働きが関係している(100~101ページ)とされ、オスが浮気をするかどうかについて相手のメスに愛着を形成するホルモンであるバソプレシンの受容体が腹側淡蒼球に多いと浮気が少なく、腹側淡蒼球にはドーパミンを放出する神経が伸びている側坐核から神経が伸びており、この神経がバソプレシン分泌にかかわっていると考えられる(151~153ページ)とされています。「はじめに」の問題提起からすると、特定の相手(恋人、配偶者)からの感謝・賞賛、よい関係を継続する幸福感といった「社会的報酬」についても検討されてよさそうですが、この問題では言及されていません。
 また、社会的報酬によるドーパミン分泌そのものについては、19名に対する機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)による実験(画像スキャン)(129~131ページ)が示されているだけです。まだわからないところが多いということなのでしょう。最後の言葉が「実験デザインを構築するのが難しいため、まだそこまでは、脳科学的なエビデンスが得られていないのが現状です。若い科学者のみなさんにぜひ、こうした課題に取り組み、ヒトの快楽や幸福、認知の構造をさらに解明していってもらえたら、こんなに素晴らしいことはないと思っています」(169ページ)ですから。でも、2004年修士課程修了の著者は、もう「若い科学者」じゃないの?


中野信子 幻冬舎新書 2014年1月30日発行

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