伊東良徳の超乱読読書日記

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社労士がこたえる社員が病気になったときの労務管理 すぐに役立つ!治療と仕事の両立支援ハンドブック

2017-08-18 22:01:40 | 実用書・ビジネス書
 従業員が病気になったときの健康保険からの傷病手当金(休業補償)、高額療養費等の保険給付、休職と復職、復職できずに退職したときの保険(健康保険の切替や傷病手当金の継続給付、雇用保険の受給)、家族が病気になった際の介護・看護休暇や介護休業中の雇用保険からの介護休業給付、(使用者に実施が義務づけられる)健康診断、障害者雇用(法定雇用率)等について、会社の人事労務担当者向けに解説した本。
 健康保険関係の給付関係だけでも、ずいぶんと細かい場合分けがあり、正確に理解するのはたいへんだなぁと実感します。もともと社会保険関係、特に医療保険と年金関係の法律は条文も複雑で読みにくく改正も頻繁なので、多くの弁護士にとっても苦手分野ですが、こういうのを読むと、ますます質問には詳しくは社労士なり健康保険組合、年金機構に聞いてくれといいたくなります。頻繁に「顧問社労士がいれば」とか「社労士に相談してください」と書いているように、社労士の営業拡大を意図して書いているのでしょうけれど。
 タイトルからして「労務管理」と銘打っているように、あくまでも使用者(経営者)側での対応を説明した本です。Q&Aの形式をとり、Qの多くは従業員ないしその家族側からの質問になっているので、従業員・労働者側からの読み物とも錯覚してしまいますが、実質は、会社が従業員からそういう質問を受けたらどう回答するか、基本的には(法律を守りつつ)会社の利益を守るためにどう従業員等を説得するかという観点で書かれており、そういうものとして読むべきだと思います。労働者の健康管理義務が強調され(4ページ、5ページ、17ページ)、「病気にかかったことを会社に伝えると解雇されるという話を聞きましたが、本当ですか」という質問に対して「いかにもありそうな噂ですが、よく考えてみましょう。結果的に退職になるケースがあるとしても、病気の種類も、重さも、個人差があります。(中略)配置転換や時間短縮をすれば、続けて勤められるかもしれません。もちろん、しばらく休業して様子を見る場合もありますが、会社は、その間にあなたの代わりに仕事をする人を、早急に手配しなくてはなりません。このようなことを踏まえて、早めに会社との話し合いを始めるのが、あなたの義務といえます。」などと答えています(18ページ)。後者などまったく会社側の利害だけしか考えていません。労働者の立場(質問者の立場)に立つならば、病状の程度(どの程度就労が可能か)、病気の原因、休業制度の有無・内容とこれまでの運用などにより解雇ができない(解雇されても裁判等で闘える)場合があることを検討して答えることになりますし、病気に関する情報の提供義務に関しては、この本でも紹介されている(180~181ページ)東芝(うつ・解雇)事件最高裁判決が「上告人が被上告人に申告しなかった自らの精神的健康(いわゆるメンタルヘルス)に関する情報は、神経科の医院への通院、その診断に係る病名、神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とするもので、労働者にとって、自己のプライバシーに属する情報であり、人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であったといえる。」としていることからしてこの本の回答(労働者に病気の情報の告知義務がある)は問題があるといえます。


古川飛祐 税務経理協会 2017年7月1日発行
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