伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ほろびぬ姫

2014-05-17 20:29:01 | 小説
 余命幾ばくもないことを知った高校教師生島新時が、高校時代に家出してから行方不明だった一卵性双生児の弟盛時を探し出し、自分が死んだ後の身代わりをさせようとして、盛時を妻の下に通わせ、新時は目に見えて衰え行くというシチュエーションの中で、妻みさきの思い、反発、心の揺れを描いた小説。
 容姿が瓜二つであれば、夫の弟を愛せるのかというよりも、夫からそのような要求があり夫がそのような計画を立てた時に妻は何を思うのか、それをおいても夫が死に行く時妻は何を考えどういう行動に出るのかがテーマとなっています。前者は、一卵性双生児がいない大半の人にとっては問題にもなりませんが、後者は多くの人にとって問題となり得ることです。死に行く過程で妻とどのように心を通わせられるのか、どのように接するべきか、接していけるか、考えてもしかたないかも知れませんが、考えさせられます。
 みさきの視点で語られ、夫の新時も弟の盛時もともに「あなた」と表記され、最初戸惑いますが、慣れてくると「あなた」が新時と盛時のいずれを指しているのか比較的スムーズにわかります。同じ言葉/代名詞を用いながら文脈で鮮やかに使い分けられる日本語表現の豊かさを感じました。
 弾けるようなラストは、印象的ではありますが、物語の収拾に苦慮して投げ出したような感じもします。


井上荒野 新潮社 2013年10月30日発行

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