伊東良徳の超乱読読書日記

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日中漂流 グローバル・パワーはどこへ向かうか

2017-06-18 17:58:32 | 人文・社会科学系
 日中国交正常化(1972年)から40年あまりが過ぎ、友好関係から険悪な力による対抗へと変化した日中関係を分析し、今後の日中関係について提言する本。
 近年、中国との関係は(北朝鮮との関係もそうですが)いつの間にここまで悪化してしまったのだろうと、改めて思うことが多くなりました。
 この本では、中国側の事情については、日中国交正常化交渉に当たり中国政府側は台湾問題(「1つの中国」)での成果(日本政府が中華人民共和国を中国の唯一の正統な政権と認め、中華民国/台湾の政権を承認しない)をとるために、ごく少数の軍国主義者と犠牲になった一般国民を分け日本人民は中国人民と同じ被害者と位置づける「二分論」をとり、賠償請求権を放棄したが、中国の大国化に伴い若者や中間層に排外主義的民族主義意識が広がり、権力基盤の不安定という情勢の下ポピュリズム的な民族主義が力を得、インターネットと携帯電話という新たな情報手段で飛躍的に増幅した、それが1990年代半ばと2010年頃に顕著になったと分析しています。
 米中関係では国交正常化(1979年)以降様々な領域における政府間の大小のチャネル(定期協議の場)が設けられており、2006年以降毎年大規模でハイレベルの定期協議(戦略経済対話:S&ED=外相もしくは副首相級等)が開催され、関係が「制度化」されており、ソ連崩壊後のロシアとの関係でも同様の定期協議が続いているのに対し、日本とは、首脳間の個人的な関係が重視されがちで定期協議(日中総合政策対話)は2005年にスタートし2012年までは続けられたがその後途絶えていると説明されています。考えてみれば、アメリカと中国は、朝鮮戦争で1950年代に直接戦った間柄で、それでも閣僚をはじめ多段階の定期協議が継続されているのに、戦闘がそれ以前の日本と中国が尖閣諸島をめぐる対立があるというだけで定期協議もできないというのは哀しい/大人げない話だと思います。中国の外交政策は利益を第一に追求するので、領土がネックになって日中経済関係が停頓しそれが国内経済に強いマイナス影響をもたらせば原理を引っ込めて実利へと舵を切ることはあり得るが、日本の対中外交は一貫性を重視するので中国外交と違って日本は豹変できないと指摘されています(106ページ)。
 外交(継続的な関係がある/関係を絶てない相手との交渉)では、冷静さと寛容さが大事だと思いますし、隣国が「外敵」と強調されるのはきちんとした内政ができない独裁的政治家が権力の座にある時だというのが歴史の教えるところだと思うのですが。


毛里和子 岩波新書 2017年4月20日発行
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