伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

愛の国

2014-10-03 20:12:11 | 小説
 愛国党政権の下、ネオナチが幅をきかせ、同性愛者が少子化の元凶とされて迫害され秘密警察によって拘束され秘密の収容所に送り込まれる近未来の日本で、ネオナチの脅迫に抗して最愛の主演女優稲葉久美子と伝説になる迫真の舞台を演じきった後の事故のため記憶を失ってさまよう劇作家兼俳優の王子ミチルが、愛国党・ネオナチへのレジスタンスを展開する尼僧や新女性党の政治家らと連帯しつつ、巡礼の旅の過程で記憶を取り戻していくという筋立ての小説。
 安倍政権の下、転がり落ちるように人権の状況が悪化していっている現在の日本では、この小説の舞台にいやなリアリティを感じてしまいます。作者のあとがきで「憲法改正を声高に叫ぶ我が国の現政権を見ても、遠からず本当にこんな社会が到来してしまうのではないかという危惧を拭いきれません。それは決して小説のなかの絵空事ではないと、一人のマイノリティであるわたしは日々リアルな恐怖感を覚えているのです。」(430~431ページ)と書かれているのを見ると、安倍政権のような政権が誕生してしまい国民の支持を受けていることを見るに付け自分が少数派・異端者なのだと感じ続けている身には、悲しい連帯感とわずかばかりの安堵を覚えます。
 私と同い年の作者が、あとがきで「遺作になっても悔いはないように、すべてを捧げて書きました」と述べていますが、もう「遺作」を意識する年齢というべきなのか、そういう社会の到来を嘆くべきなのか。


中山可穂 角川書店 2014年2月28日発行
『小説』 ジャンルのランキング
コメント (2)   トラックバック (1)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ジュゴンの上手なつかまえ方 | トップ | 算数的思考法 »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
三部作 (大山千恵子)
2014-10-08 07:33:55
『猫背の王子』『天使の骨』に続く王寺ミチルシリーズ三部作の完結編

興味あるのですが、これだけ読んでも可ですか?
たぶん大丈夫 (伊東良徳)
2014-10-08 13:14:23
私は前2作は読んでいません。
著者があとがきで、3部作だが、前2作とはだいぶ趣が違うと言っています。本文中では特に前2作を引用したり紹介するところはなかったと思います。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
「愛の国」LGBT抹殺か 近未来かも...中山可穂と (千恵子@詠む...)
「愛の国」 中山可穂 角川書店 伊藤良徳弁護士がブログで紹介してたので、読む詠む。 在特会みたいなの出てくるし、公安警察は暗躍してるし、同性愛者は収容されるしという展開に「近未来感」ありあり。 お遍路、タンゴ、キリスト教の巡礼に詳しければ、さらに楽し...