伊東良徳の超乱読読書日記

読んだ本の感想を中心に本に対するコメントを書き散らします。読み終わった本は図書館に返すのでフォローは保証できません。

裸の華

2017-07-18 01:00:01 | 小説
 公演中に左脚を骨折して引退した四十路のストリッパー「フジワラノリカ」が、20歳のときデビューした今は廃屋となっているすすきのの元劇場の近くで、若いダンサー2人とバーテンダーを雇ってダンスシアター「NORIKA」を開業する経緯と顛末を描いた小説。
 何の用意もなく札幌に舞い戻ったノリカが、偶々立ち寄った不動産屋の営業担当者の紹介で技術の際立つダンサーみのりと技術的には今一歩だが華があるダンサー瑞穂、さらにはバーテンダーもそろえてトントン拍子に開業にこぎ着けるというのは、小説にしてもできすぎの感がありますが、他方で、客が目を見張るようなダンスを踊れるダンサーと、「銀座の宝石」と呼ばれたバーテンダーがサービスをして(しかもそのプロたちに1日6000円しか日給を支払わずに済んで)いるのに、家賃と従業員の給料程度しか売り上げがなく、経営者の生活費が出ないという個人自営業者の悲哀の描写が、もの悲しい。そこそこ客が入っていてもそのレベルの売り上げという、ビジネスモデル自体の問題を感じつつも、キャパを増やす(店の箱を大きくする)のも値上げをするのも現実的でないときの、経営者の先行きへの不安と焦燥感は、同じく客商売の個人自営業者としてよくわかります。弁護士の場合でいえば、キャパを増やす/客を増やすことで1つ1つの事件での手間のかけ方/仕上げの丁寧さが落ちないか、すなわち仕事の質を維持できるかという問題、費用/報酬を上げるのも、企業ではなく個人を依頼者としている私のような弁護士(企業の客を取らないというのは弁護士の世界ではごく少数派ですが)には限界がありますから、収益構造を劇的に好転させるのは難しい。勤務弁護士を多数雇って自分は看板(客集め)に徹することにするか、企業側の弁護士になれば、そういう悩みは少ないかもしれませんが。
 バツイチの訳あり腕利きバーテンダーを憎からず思いながら、あくまでも性欲は女性用風俗店「ラブアロマ」での性感マッサージで満たすというノリカの選択は、サバサバした独立志向の女としての一貫性を保とうという作者の意思と、恋愛は面倒という判断と割り切りによるものでしょうけれど、何だかなぁ・・・


桜木紫乃 集英社 2016年6月30日発行
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