詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

「生前退位有識者会議」と野党の仕事

2016-10-20 01:44:04 | 自民党憲法改正草案を読む
「生前退位有識者会議」と野党の仕事
               自民党憲法改正草案を読む/番外34(情報の読み方)

 2016年10月19日読売新聞夕刊(西部版・4版)の一面に「生前退位「通常国会に法案」 官房長官」という見出しの記事がある。

 菅官房長官は19日午前の衆院内閣委員会で、生前退位の意向を示唆された天皇陛下の公務負担軽減を巡る法整備について、「できれば(来年の)通常国会に出したい」と述べた。政府は、現在の天皇陛下に限って生前退位を認める皇室典範の特例法制定を軸に検討を進めている。(略)
 菅氏は、政府の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が17日に初会合を開いたことを受け、「有識者会議が論点整理で一定の方法性を出した時点で、国会で説明し、議論いただく形になる」と述べた。有識者会議が来年1月にも示す論点整理を国会に提示し、法案提出に向けて与野党の合意形成を図る考えを示したものだ。

 記事にあるように「有識者会議」は17日に開かれたばかり。そして、そこでは「検討項目」が八つ示されたばかりである。

①憲法における天皇の役割
②天皇の国事行為や公的行為のあり方
③高齢となった天皇の負担軽減策
④摂政の設置
⑤国事行為の委任(臨時代行)
⑥天皇の生前退位
⑦生前退位の制度化
⑧生前退位後の天皇の地位や活動のあり方

 これをとりまとめ、を検討する。その「論点整理」が「来年1月」というのは非常に早いように私には思える。専門家からヒアリングし、論点を整理するのだろうけど、そんなに簡単に整理できる問題なのだろうか。
 週に一回会合を開き、それぞれの会合で一テーマずつ語り合っても8週間かかる。12月の中旬になる。年末年始は会合がないだろうから、「1月」に「論点整理」を提出するには、どうしても一週間に一テーマずつ、順序よく処理しないといけない。
 そんなこと、できる? 「有識者」だから、できる?
 いや、そうではなくて、もう「提示する論点」は整理されてしまっているのだろう。専門家からヒアリングするといっても「白紙状態」で質問し、回答を待つというのではないだろう。①から⑧まで、有識者会議では、もうすでに「結論」が出ている。その「結論」にあった答えをしてくれる専門家を呼び、ヒアリングという形で、アリバイづくりをする。専門家は、こう言っていました、ということを付け加えるだけなのだろう。
 有識者会議の「結論」がすでに出ているということは、政府(安倍)の答えはもっと前に出ているということだろう。その「答え」をそのまま「論点整理」という形で提示してくれるメンバーを選んだということだろう。
 このことは何度も書いてきたことだが、今回も記事中に書かれている、次の部分が「証明」している。

政府は、現在の天皇陛下に限って生前退位を認める皇室典範の特例法制定を軸に検討を進めている。

 有識者会議の「結論」を待って、皇室典範を改正するか、それとも特例法にするか、検討するではない。もう検討を進めている。有識者会議が皇室典範を改正し、生前退位ができるようにするという「結論」を出すことを想定していない。繰り返すが、もう「特例法を制定するという結論」が決まっているのである。
 こんな「アリバイづくり」を認めてはいけないと思う。
 ⑥⑦⑧は憲法にも皇室典範にも規定がないから、「特例法」は何にもしばられない。しかし④摂政の設置⑤国事行為の委任(臨時代行)は憲法にも皇室典範にも規定がある。特例法は、それを無視するということになるのか、それとも現行の憲法、皇室典範に拘束されるのか。私の関心は、ここにある。
 私には「有識者会議」での検討項目の「摂政の設置」の検討順位が、どうにもひっかかる。現行憲法通りなら、もっと前に「国事行為のあり方」「負担軽減」の前に検討すべきだろう。「摂政」が「生前退位」後の「新天皇」との関係で設置することを念頭に置いているなら、⑦か⑧でいいのではないのか。
 何か、奇妙である。

 ④⑤のうち、「摂政」についてだけを取り上げると、憲法と皇室典範では次のように規定している。

 「設置」に関しては、
摂政は、皇室典範の定めるところにより置く(憲法第5条)。
天皇が成年に達しないときは、摂政を置く。また、天皇が、精神・身体の重患か重大な事故により、国事行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く(皇室典範第16条)。
 「順序」に関しては、
摂政は、次の順序により、成年に達した皇族が就任する(皇室典範第17条)。
1皇太子(皇太孫)
2親王・王
3皇后
4皇太后
5太皇太后
6内親王・女王

 「特例法」にしてしまったとき、これは、どうなるのか。つまり、天皇が「生前退位」し、皇太子が「天皇」になって、その「新天皇」が「精神・身体の重患か重大な事故により、国事行為をみずからすることができないとき」、「摂政」はどうなるのか。現行の憲法と皇室典範に拘束されるのか。それとも違った形で「摂政」が設置されるのか。
 とりあえずは何も決めず、フリーハンドにしておいて、「新天皇」の動きを見ながら、新たな「特例法」で対処するということを考えているかもしれない。それとも、「特例法」のなかに「摂政の設置」の「特例法バージョン」をふくめて制定するのか。
 「特例法」というのは、何か「恣意的」な操作を狙っているようにしか思えない。

 先に「有識者会議」のような「アリバイづくり」は認めてはいけない書いたが、このことに関して私が思っていることはもうひとつある。野党(民進党)への失望である。
 野党(特に民進党)は、安倍のつくったような「有識者会議」を独自に持つことは考えないのか。どういう「天皇制(生前退位)」がいいのか、提案しないのか。安倍のつごうのいいような「特例法」が提案される前に、民進党はこう考えているという「案」を国民に示したらいいのではないか。安倍が国会に提案する前に、民進党の考えをはっきりさせたらどうなのだ。安倍案に「合意」するのではなく、民進党案に安倍が合意するという形で「生前退位」問題をリードする気持ちはないのか。
 「特例法」ではだめだ、「皇室典範」を改正して、きちんと制度化しないとだめだ、くらい言ったらどうなのだ。
 一部に、天皇が「生前退位」を持ち出したのは、安倍の憲法改正阻止を狙ったものであるという意見がある。憲法改正よりも、皇室典範の改正の方が急務。そういう動きをつくりだすことで憲法改正を阻止すべきだという意見もある。民進党は、そういう意見を発する人たちとどういう「連帯」の仕方をするのか。あるいは、独自の「路線」を提唱したいのか。それを明確にすべきである。
 安倍が「対案」を求めてきていないから、安倍の案を待つというのは、なんだかいいかげんである。








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