詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

エレノア・コッポラ監督「ボンジュール、アン」(★)

2017-07-15 09:07:11 | 映画
監督 エレノア・コッポラ 出演 ダイアン・レイン、アレック・ボールドウィン、アルノー・ビアール

 エレノア・コッポラはコッポラの妻だという。自らの体験に基づく映画だそうである。そうすると、ダイアン・レインがエレノア・コッポラで、アレック・ボールドウィンがフランシス・コッポラか。うーん、どっちも「実物」より役者の方が美女、美男だな。エレノア・コッポラは、写真も見たことがないから知らないけれど。
 で。
 何が言いたいかというと、「実物」よりも「役者」が「美形」だとしたら、この映画では「現実」が「理想化」されているということ。「理想化」が悪いわけではないが、「理想」ほど退屈なものはない。
 「理想」は裏切られるためにある。「理想」がこわれるたびに噴出してくる「現実」。これが映画に輝きを与える。役者にしたって、「美形」が一瞬「醜悪」になる。あるいは「ブス」が一瞬「美形」にかわる。そういう瞬間って、おもしろいよねえ。
 あの「キャリー」のシシー・スペイシクさえ、ダンスパーティーの「女王」に選ばれた瞬間、「私は美しい」という喜びにあふれた顔になり、「あ、美人じゃないか」と思ってしまうからねえ。
 あ、脱線した。
 スタートは、まあまあ、よかった。
 アレック・ボールドウィンが電話で誰かと話している。「調子はどうだい」みたいな声に、ダイアン・レインが「耳の調子は大丈夫」みたいに答えてしまう。その間合い、それからの展開が自然。実際にあったことなんだろうなあ。リアルだなあ。そのあとダイアン・レインがコンパクトカメラで写真を撮る。細部にこだわり、アップの写真。全体は見た人に想像させる。
 この写真が、映画のあちこちで登場する。
 おもしろいのは、はっきり言ってしまって、この「写真」だけ。細部の拡大。全体はわからない。でも奇妙に充実している。
 でもねえ。写真は、動かない。これが問題だなあ。
 映画も、まったく動かない。
 あ、カンヌからパリまで車で移動する。動いている?
 これは、間違い。映画のなかでは何も動かない。人間は、最初から最後まで「自分」の殻に閉じこもっている。殻を突き破って、新しい人間(感情)が動き始めるわけではない。だから、外部(風景)を動かすことで、ストーリーが動いているようにみせかけているだけ。
 もちろん、このロードムービーを気取った「理想化」と見れば、ほんとうは「何か」が隠されているということになる。「理想」を映画化したのであって、「現実」は、いやはや、たいへんだった。くんず、ほぐれつの、行く先々でのはめをはずしたセックスがあった。ようするに、だれもかれもが浮気し放題だった。でも、それをなかったことにして「理想」の男女の旅行を描いた。
 でもねえ。
 それを感じさせるには、ダイアン・レインは「冷たすぎる」。アルノー・ビアールも色気がなさすぎる。あふれてくるものがない。
 これに比べると、イギリス男が二人でローマを旅しながら「グルメルポ」をやる映画の方がおもしろかったなあ。男二人なのに、妙に「色気」があった。漫才みたいに「物真似ごっこ」をやるところがおもしろかったし、料理もイタリアの方がおいしそうだな。
                     (KBCシネマ1、2017年07月12日)


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