詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

石川慶監督「愚行録」(★★★★+★) 

2017-02-22 20:21:34 | 映画
監督 石川慶 出演 妻夫木聡、満島ひかり

 私は推理小説が嫌い。映画も「犯人探し」は大嫌い。すぐに「犯人」がわかってしまう。
 この映画の場合に、妻夫木聡がバスのなかで老人に席を譲れ、と他の客にからまれ、席を譲る。足をひきずるような感じで歩き、バスのなかで倒れる。降りてからも足をひきずって歩く。しかし、バスが行ってしまうとふつうに歩きだす。これは「ユージュアルサスペクツ」でケビン・スペーシーがラストシーンで見せたのと同じ「芝居」。この冒頭で、映画のすべてがわかってしまう。
 でも★4個+★。
 「犯人探し」は一種の狂言回し。「事件」の周辺で動いている複数の人間がていねいに描かれる。「人間」が描かれる。これが、なかなかいい感じだ。最初に妻夫木聡が取材する相手。テーブルの上に置いた妻夫木の名刺の上に、ビールのジョッキーがどすん。常識知らずだ。それをちらりとみつめる妻夫木の視線。細部がしっかりしている。これが★4個の理由。
 で、完成度の高い「短編」が組み合わさって「長編」になるという雰囲気。「長編」を「短編」に分割することで、「短編」ごとに「主人公」の姿を浮かび上がらせる、ともいえる。これは新しい作り方かもしれない。これで、私は★を1個追加する。
 さらに。
 こういうとき、「短編」をつらぬく主人公というのは控えめでありつづけなければいけない。「受け」というか「脇」というか。これを妻夫木聡がとても巧みに演じている。もともと「透明感」の強い役者だが、「透明感」を生かしている。「短編」ごとの「主役」に自己主張させている。妻夫木と、その場の「主役」が喧嘩しない。
 満島ひかりも、「自己完結的」な感じがおもしろかったなあ。
 それにしても。
 いまの大学生はたいへんだねえ。有名私立大学はたいへんだねえ。「未来」というものを、こんなふうに「現実的」にとらえているのか、と驚いてしまった。あんなに複雑に考えていて、生きることが面倒にならないのかなあ。
 「現実的な行為」を「愚行」と呼んでいいのかどうかわからないが、うーん、面倒くさい映画だぞ、という印象がなぜか残ってしまう。
                       (中洲大洋1、2017年02月22日)


 
 *

「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
怒り DVD 豪華版
クリエーター情報なし
東宝
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする