醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  424号  白井一道

2017-06-10 15:13:32 | 日記

 名酒「一之谷」を楽しむ

侘輔 今日のお酒は福井県のお酒なんだ。
呑助 福井県のお酒ですか。今まで我々の会で楽しんだことのない県のお酒なんですね。
侘助 そうなんだ。福井県にもそれなりに美味しいお酒はあるようなんだ。
呑助 どんな銘柄のお酒があるんですか。
侘助 「やはり一番有名なお酒は何と言っても「黒龍」かな。
呑助 そんなになぜ有名なんですかね。
侘助 知る人ぞ知る有名なお酒なのかな。
呑助 どうしてなのかな。
侘助 今は昔の話になるがね。現皇太子の結婚式で振る舞われたお酒なんだ。当時の大蔵省醸造試験場の技官たちが選び抜いた一品だったようだよ。
呑助 へぇー、そんなお酒が福井県で醸されていたんですか。
侘助 「黒龍」の酒は少量高品質の酒造りをしていた酒蔵のようなんだ。「黒龍」を醸す蔵は曹洞大本山永平寺のある街にあるが、今日我々が楽しむ福井の酒は宇野酒造さんが醸す「一之谷」なんだ。
呑助 源平合戦の「一の谷の戦い」というのは福井でしたっけ。
侘助 『平家物語』源平合戦の「一の谷の戦い」、の一の谷は兵庫県須磨にある。熊谷直実と平敦盛の一騎打ちが行われた「一の谷の戦い」は兵庫県須磨なんだ。
呑助 あゝそうなんだ。「一之谷」、銘柄の由来はあるんですかね。
侘助 福井、越前の国には、「くまがい茶碗」という霜降り図柄の酒盃があるそうなんだ。この盃で「麦屋」の屋号をもつ宇野酒造さんの酒を注ぎ、飲んだ京都の俳人が屋号の『麦屋』と「くまがい茶碗」をもじって、「麦屋の酒は一乃谷、くまがい(熊谷)で飲めばいつもよしつね(義経)」と詠んだことに因んでいるようだ。一の谷の合戦では敗北を喫した平家の武将、平敦盛が源氏の将軍、熊谷直実に打ち取られる。このことを詠んだ句に「一之谷」銘柄の由来があると酒蔵は言っている。
呑助 背中を見せるは武士か。平敦盛は熊谷直実に向き直り、首を捕れ、おゝ我が子同然の若さでないか、名を名乗れ、我が首を捕れ、涙を呑んで直実は敦盛の首を刎ねた。歌舞伎の名場面ですね。
侘助 そう、そうなんだ。その「一之谷」の酒を今日は楽しむんだ。この酒の造りは「別誂 山廃仕込特別純米生原酒」だ。山廃とは、化学製品の乳酸菌を添加しない仕込みだということ。精米歩合は五十五%だから特別、醸造用アルコールが添加されていないから純米酒。水で薄めていないから原酒。この時期だけの造りだから別誂ということ。絞りは斗瓶取り。二斗瓶の上に醪を入れた木綿の袋を吊るし、その袋から滴る酒を詰めたものということ。
呑助 時間と手間をかけたお酒なんですね。
侘助 更に中取りだからね。最初に滴った酒でもなく、終わりの方に滴った酒でもない、中ごろに滴った酒だから、一番美味しいところの酒が詰めてあるということのようだ。
呑助 米の銘柄は?
侘助 麹米、掛米共に福井県産の五百万石、酵母は泡なしの金沢酵母、協会1401のようだ。
呑助 新潟の酒を醸す米が主に五百万石でしたね。
侘助 その通りかな。
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