醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  458号  白井一道

2017-07-15 14:36:22 | 日記

   筑波の名酒、「霧筑波」油絵がラベルになった

 『霧筑波』。この絵を見たたときに、体の中を電撃のようなものが走った。これだ、と思った。すぐ商標登録ができるか、どうか、確認した。「筑波山」と名のついた商標はすべて登録済みである場合が多い。ほとんど残っている言葉は少ない。『霧筑波』。弁理士さんの回答は、まだ商標としての登録はないということだった。
 『霧筑波』。これは画題である。茨城県取手市在住の洋画家、服部正一郎画伯(芸術院会員)が描いた絵である。男体山と女体山の稜線がやや曇った秋空に描かれ、山全体は暗色に表現されている。どこから見た筑波山なのだろうか、吉沼の泗蔵からも男体山と女体山、二つの山の稜線が『霧筑波』のように見ることができる。手前には黄葉した樹の葉が筑波山に比べて大きく描かれている。筑波山の麓から中ほどまでには、霧がかかっている。秋のころの曇った朝には、よく見られる景色である。
 この絵をラベルにしよう。筑波山を描いた絵を酒瓶のラペルにする。良いアイデアだと思った。一人、微笑んだ。『霧筑波』という画題も酒の銘柄にする。イイ。いい。
 服部先生に『霧筑波』という画題を酒の商標にすることと、先生の絵そのものをラベルすることの了承を求めた。同じ二科会の画家である叔父の口添えもあり、快諾をいただいた。ラペル屋さんに印刷を頼むと「こんなラベル作るのは、始めてだ。本当にいいんですか」ラベル屋さんが訝し気しげに言う。「誰もしないことだからするんだ」とラベル屋さんに胸を張って言った。
 昭和六十年ころ、油絵を酒瓶のラベルにした酒を見たことがない。浮世絵や水墨画をラペルにした酒は見たことがある。しかし油絵をラベルにした酒は見たことがなかった。このラベルを貼った酒には、山田錦を60%以上削り、丁寧に仕込んだ酒を詰めよう。
 日本酒の需要は長期低落傾向にある。ビールの安売りに日本酒の需要は低迷した。更に、焼酎のブームがやってきた。従来のように普通酒を造っていたのでは、やっていけなくなる日が来るだろう。灘や伏見の大手は、茨城の農村部にも進出してきている。良い酒を造ろう。もうすでに、新潟の酒が脚光を浴び初めていた。良い酒を造れば、必ず認めてくれる消費者がいるに違いない。浦里酒造が造る特定名称酒の主な銘柄を「霧筑波」にしよう。良い酒を造るには、良い酒造好適米が必要だ。これを手に入れなければならない。兵庫の山田錦を手に入れ、その米を半分近くまで削り、純米酒を造った。私の所が本当に良かったのは、筑波学園都市が造成され、そこに東京などから本物の酒を楽しむ人々が多数移って来ていた。それらの人々が『霧筑波』の酒を分かってくれたことだ。
 主力商品を普通酒から特定名称酒に替える場合、どこの酒蔵も高い酒を造ることに大きな不安を抱く。本当に2000円以上する酒を消費者は受け入れてくれるのだろうか。そんな不安が大きく、なかなか特定名称酒の生産
ができないのが実情である。そんな中にあって、私の所は本当に幸せだった。今までと同じように地元、茨城を中心に馴染みの小売屋さんに卸し、『霧筑波』を売りさばくことができたからだ。顔の分からない小売屋さんは
一人もいない。『霧筑波』は茨城・つ筑波の地酒になった。
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