セックス・ピストルズの登場は衝撃的だった。私は1970年代前半の世代で、70年安保世代(世界規模のカウンター・カルチャー運動)に憧れ、彼らに続くべく上京した。ところが、あるのは彼らの残した精神の瓦礫だけだった。急激な経済成長と消費文化の進展の渦中で、私たちは【キリギリス世代】【モラトリアム世代】・・などと蔑まれ、街の片隅に追いやられた。そんな中で、いつしか70年代も終わりに近づくと、海の向こうから【パンク・ニューウェイブ】の波が押し寄せて来た。20歳代の後半に入り、シラケ切っていた同世代には、実に低次元のアナーキーなだけのけばけばしさだけしか目に留まらず、にもかかわらず一応ロックの形態を取っていただけに【ロックの徒花】としか映らなかった。しかし、彼らの行動や風俗を後に振り返ると、多くの点で的を得ており、もしかすると・・という期待感さえ抱かされた。街の片隅で縮こまっていた自分の胸ぐらを掴まれて、お前たちは本当に闘ったのか、本当に闘ったのなら、いまでも闘い続けているはずだ、そうだろう・・と吐き捨てられた思いがしたものだ。彼らは、彼らの紛れもない【現在】と闘っていた。そして、私たちもまた同じ様に闘っていたし、これから闘い続けると誓った。1980年代の本当に何も無い、スッカラカンの虚空に向かって秘かに拳を振り上げたのだった。・・・《続く》
アナーキズムを 英国に
いつか そんな時が来るぜ 多分な
メチャクチャになるぜ 交通を
遮断してやる
お前の これからの夢は
買い物の計画だけだ
この街で 俺は
アナーキストになりたいんだ
俺は アナーキストになりたいんだ
そうさ アナーキストに
わかるだろ
アナーキストになりたいんだ
俺は 酔っ払って
ぶっ壊してやるのさ
THE SEX PISTOLS 『ANARCHY IN UK』(英国にアナキズムを) 1976