限りなき知の探訪

40年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

百論簇出:(第208回目)『日本のフィードバック、欧米のフィードフォワード』

2017-07-16 22:27:04 | 日記
以前のブログ、
 惑鴻醸危:(第52回目)『あくどい整形外科医』
では行政(市の園芸課)のやり方にたいする不満を述べたが、同じように、道路に対する行政の姿勢にも大いなる不満を持っている。

それは、特に年度末に頻繁にみられる道路舗装工事だ。これは、ガス管や水道管の敷設や取り換え工事を言っているのではない。私が非難するのは、こういった敷設工事のために部分的に道路面がこぼこになってしまったものを、単に見栄えを改善するためだけに大がかりな化粧直しの舗装工事をすることだ。見栄えのために何百万円、あるいは何千万円もの費用を投じている。この点、欧米では道路が多少でこぼこでも車や人の通行に支障のない限りは極力、無駄な舗装工事をおこなわない。つまり、日本人はピンポイント的にうまく行っていないと満足しない性分であるのに対して、欧米人には、物事が許容ゾーンの範囲に入っていればOKと考える点が異なる。

単に見栄えのためだけに莫大な費用を掛けている、このことは日本人は投資対効果、つまり、税金の運用する「効率を軽視」しているということだ。公園の剪定や道路工事に見られる税金の「効率軽視」は役所の悪しき風習と言える。その原因を辿ると、投資効果をまともに検証せず、前例主義(前年度の予算をそのまま踏襲する)に染まった行政の予算のありかたに行きつく。


 【出典】20080217 Road Repair, Mojave National Preserve, California 001

しかし、翻って考えてみるに、これは何も行政官だけが特有にもっている感情や思考方法ではないはずだ。つまり、日本人全般が無意識のうちに共有している考え方がたまたま、行政の方面で悪しき例として現れたに過ぎない。つまり、問題の根本は現在の行政の仕組みにあるのではなく、日本人の思考方法そのものにある。

その話をする前の準備として、「フィードバック」と「フィードフォワード」の概念の説明をしておこう。

「フィードバック」と「フィードフォワード」というのは、制御理論の専門用語(technical term)であるが、一般的にも「フィードバック」はよく使われている。簡単に言えば、
 ●「フィードバック」とは、「出来栄え(結果)を見て(入力を)調整する」
 ●「フィードフォワード」とは、「予め決められた手順通りに行う」
という事である。

世の中で工場のオートメーション化というのはたいていにおいてこの「フィードフォワード」方式である。ただし、飛行機の自動操縦や化学プラントのように、状態が刻々と変動するような複雑なシステムでは流石に、手順通りに運行する訳にいかず、「フィードバック」方式が一般的である。

さて、この2つの方式が日本や欧米の思考方法とどう関連しているのか、「パスタをゆでる」というテーマについてこの2つの方式を比較してみよう。

まず、日本式に「フィードバック」方式でパスタをゆでる時は、熱湯にパスタを入れてから、予め決められた時間(3分とか8分とか)過ぎると、箸で一本取り出して、茹で上がり具合をチェックするだろう。つまり、仕上がり具合を指や口で味わって決めるのだ。この方式が日本人には一番納得する方式ではないだろうか。

それに反し、欧米式に「フィードフォワード」方式でパスタをゆでる時は、まず、温度計で熱湯の温度を測定する。そして、既定の温度になると、パスタを入れて、規定の温度を保ったまま、既定時間ゆでる。時間が来れば、実際にどの様にゆであがっているかをチェックすることなく、パスタを取り出す。「フィードフォワード」方式というのは、言ってみれば「ところてん方式」に次々と処理を的確にこなしていけるという効率の良さが売り物だ。

この2つを比較して分かるのは、「フィードフォワード」方式は確かに効率が良いが、日本人の感性にはどうもしっくりこないであろう。一方、「フィードバック」方式は日本人のアナログ的に判断する感性にフィットする。つまり、手間や時間がかかるので、結果的には運用効率は低下するが、その分、高品質な製品ができることが日本人にとっては望ましいと思われる。

このように、市の行政の効率軽視に対しての不満を分析していくと、最終的には日本人の考え方に問題が帰着した。私がリベラルアーツ修得の目的は「文化のコア」をつかむことだと言うのは、こういった物事の根源的原因を探求する上で欠かせない要素であるからだ。
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