(前回)
『TOEIC英語ではなく、多言語の語学を(28)』
「どう、英語以外の外国語を勉強したら?」と言っても外国語といえば英語しか知らない人にとっては、他の外国語はどれも難しそうでおいそれとは踏み出せないだろう。私の経験から言えば、英語以外の外国語を一つでもある程度できるようになると、2つ、3つと多言語を学習することは、たいして難しくはない。喩えが極めて不適切なのを承知で言えば、殺人は最初の一人を殺すまでは非常にびくびくするが、一人を殺してしまえばあとは何人殺そうとあまり抵抗がない(ようだ。)
今回は、多言語の語学を学ぶ上で必要な情報(例:本の買い方や情報の入手の仕方、語源辞書)について述べる。ただ、説明の範囲は私が知っている語学(英語、ドイツ語、フランス語、ギリシャ語、ラテン語、漢文)に限る。また、一般的に知られている情報はオミットしている。読者は一応、該当言語に関して初級文法をひと通りマスターした人を想定している。
○古本サイト
外国語の本は日本の Amazon でも検索できるが、もっと広く世界中のAmazonから探そう。世界の Amaon というのは次のようなものがある。
Amazon : .com, .co.uk, .ca, .de, .fr, .cn(中国)
私の経験では、日本のAmazonで登録したパスワードやクレジットカード番号がそのまま使える。実際に私が使ったのは、 .com, .co.uk,.de, .fr である。
世界の Amazon でも日本同様、新刊書と古書の両方が検索できるが、ここでは古本専門のサイトを紹介する。日本で古書と言うが、欧米では antique、つまり骨董書籍というジャンルになる。
日本の古本のサイトは次の2つがあるが、私はもっぱら日本の古本屋を利用している。
日本の古本屋
スーパー源氏
世界の古本屋サイト(antique)
英語サイト
Abebooks.com
eBay.com
ilab.org
英語でアクセス可能なので、複数比較してみて、条件の良いものを買おう。
ドイツ語サイト
ZVAB.com
これはドイツ語圏の古本屋連盟(Zentrales Verzeichnis Antiquarischer Bucher)のサイトで本物の antique が販売されていることも多い。内容の記述は9割以上がドイツ語で書かれているので、ドイツ語が読めないと使えないかもしれない。ただし、メールのやりとりを英語で対応してくれる販売店は多い。
○Web上の情報検索
日本語の Wikipedia だけでなく、世界中のWikipediaを利用しよう。日本語で検索したあとで、簡単に他言語版にジャンプすることができる。専門用語の翻訳などで困ったらこれを利用することをお勧めする。
Wikipedia だけでなく、Wikisource も見てみよう。ギリシャ語、ラテン語、漢文の原典の文章を見ることができる。私はブログ記事を書くときにしばしば利用するが、本を持っていなくても原文が見れることは大変ありがたい。もっとも、探す個所を確実に知らないと使いこなせないが。。。
そういった時に便利なのが、Google 自動翻訳サイトである。
Google 自動翻訳サイト
ここでは、該当サイトの URL を打ち込むことでサイトを丸ごと翻訳することも可能であるし、単発のフレーズを翻訳することも可能である。
さらに、私がよく使うのは、簡体字の中国文を繁体字へ変換することである。この機能があれば、いちいち簡体字を辞書で確認する必要がない。もっとも、繁体字(日本語でいう旧漢字)を知らないと意味はないが。。。
○辞書、百科事典サイト
私は基本的には紙の辞書を読む主義であるが、 Web上で公開されている大部の辞書や百科事典を使うこともある。
英語:Century English Dictionary
英語:1911年(11版)Encyclopedia Britannica
ドイツ語:Grimm Deutsches Wörterbuch
ギリシャ・ローマの古典:ペルセウス Perseus
フランス語:語源辞書(初出の年代付)
フランス語:Diderot 百科全書
漢文:『支那文を読む為の漢字典』
○語源辞書(紙ベース)
英語: "An Etymological Dictionary Of The English Language",by Walter W. Skeat
同上:Skeat
ドイツ語:"Etymologische Wörterbuch der deutschen Sprache",by Friedrich Kluge
フランス語:"Dictionnaire historique de la langue française",by Alain Rey
フランス語:"Dictionnaire étymologique de la langue française",by Oscar Bloch and Walther von Wartburg
ギリシャ語:"Griechisches Etymologisches Wörterbuch", by Hjalmar Frisk
ギリシャ語:"Dictionnaire étymologique de la langue grecque: Histoire des mots", by Pierre Chantraine
ラテン語:"Lateinisches Etymologisches Wörterbuch", by A.Walde and J.B. Hofmann
ラテン語:"Dictionnaire étymologique de la langue latine",by Alfred Ernout
○参考図書
ギリシャ語、ラテン語
『ギリシア・ラテン 引用語辞典』(岩波書店)、田中秀央、落合太郎
『ラテン語とギリシャ語』(三省堂)、風間喜代三
『ラテン・ギリシャ語初歩 - 英学生の為め』(研究社)、市河三喜
『ギリシャ文法』(白水社、文庫クセジュ)、シャルル・ギロー
『ラテン語の歴史』 (白水社、文庫クセジュ) 、ジャクリーヌ・ダンジェル
『ギリシヤ語四週間』(大学書林)、古川晴風、
『ラテン語四週間』(大学書林)、村松正俊
『ギリシア・ローマ古典文学案内』(岩波文庫)、高津春繁、斎藤忍随、
言語学
『比較言語学入門』(岩波文庫)、高津春繁
『ヨーロッパの言語』(岩波新書)、泉井久之助
『言語学の誕生-比較言語学小史』(岩波新書)、風間喜代三
『印欧語の故郷を探る』(岩波新書)、風間喜代三
『言語世界地図』(新潮新書)、町田健
漢文学習(ブログ記事)
沂風詠録:(第67回目)『私の語学学習』(50回連載)
沂風詠録:(第5回目)『漢文教育の重要性』
沂風詠録:(第6回目)『麻生川流・漢文学習のポイント』
沂風詠録:(第7回目)『漢文の読み方・Rule of Thumb』
沂風詠録:(第55回目)『漢文は音読で、完全にマスターできる!』
百論簇出:(第53回目)『書評:漢字と日本人』
沂風詠録:(第18回目)『漢文調の日本文』
漢文のサイト
台湾・中央研究院 漢籍電子文献
中華文化網離線閲覧
中国古典の英文サイト
Wikisource・中国版
以上、45回にわたり『真夏のリベラルアーツ3回連続講演』の様子を伝えてきたが、このブログの内容は、実際に講演したものより遥かに内容が濃い。また、講演後に気付いた点も多く書き込んだ。一人でも多くの人がリベラルアーツを学ぼうとするきっかけとなれば幸いである。
【初回】 沂風詠録:(第213回目)『真夏のリベラルアーツ3回連続講演(その1)』
『TOEIC英語ではなく、多言語の語学を(28)』
「どう、英語以外の外国語を勉強したら?」と言っても外国語といえば英語しか知らない人にとっては、他の外国語はどれも難しそうでおいそれとは踏み出せないだろう。私の経験から言えば、英語以外の外国語を一つでもある程度できるようになると、2つ、3つと多言語を学習することは、たいして難しくはない。喩えが極めて不適切なのを承知で言えば、殺人は最初の一人を殺すまでは非常にびくびくするが、一人を殺してしまえばあとは何人殺そうとあまり抵抗がない(ようだ。)
今回は、多言語の語学を学ぶ上で必要な情報(例:本の買い方や情報の入手の仕方、語源辞書)について述べる。ただ、説明の範囲は私が知っている語学(英語、ドイツ語、フランス語、ギリシャ語、ラテン語、漢文)に限る。また、一般的に知られている情報はオミットしている。読者は一応、該当言語に関して初級文法をひと通りマスターした人を想定している。
○古本サイト
外国語の本は日本の Amazon でも検索できるが、もっと広く世界中のAmazonから探そう。世界の Amaon というのは次のようなものがある。
Amazon : .com, .co.uk, .ca, .de, .fr, .cn(中国)
私の経験では、日本のAmazonで登録したパスワードやクレジットカード番号がそのまま使える。実際に私が使ったのは、 .com, .co.uk,.de, .fr である。
世界の Amazon でも日本同様、新刊書と古書の両方が検索できるが、ここでは古本専門のサイトを紹介する。日本で古書と言うが、欧米では antique、つまり骨董書籍というジャンルになる。
日本の古本のサイトは次の2つがあるが、私はもっぱら日本の古本屋を利用している。
日本の古本屋
スーパー源氏
世界の古本屋サイト(antique)
英語サイト
Abebooks.com
eBay.com
ilab.org
英語でアクセス可能なので、複数比較してみて、条件の良いものを買おう。
ドイツ語サイト
ZVAB.com
これはドイツ語圏の古本屋連盟(Zentrales Verzeichnis Antiquarischer Bucher)のサイトで本物の antique が販売されていることも多い。内容の記述は9割以上がドイツ語で書かれているので、ドイツ語が読めないと使えないかもしれない。ただし、メールのやりとりを英語で対応してくれる販売店は多い。
○Web上の情報検索
日本語の Wikipedia だけでなく、世界中のWikipediaを利用しよう。日本語で検索したあとで、簡単に他言語版にジャンプすることができる。専門用語の翻訳などで困ったらこれを利用することをお勧めする。
Wikipedia だけでなく、Wikisource も見てみよう。ギリシャ語、ラテン語、漢文の原典の文章を見ることができる。私はブログ記事を書くときにしばしば利用するが、本を持っていなくても原文が見れることは大変ありがたい。もっとも、探す個所を確実に知らないと使いこなせないが。。。
そういった時に便利なのが、Google 自動翻訳サイトである。
Google 自動翻訳サイト
ここでは、該当サイトの URL を打ち込むことでサイトを丸ごと翻訳することも可能であるし、単発のフレーズを翻訳することも可能である。
さらに、私がよく使うのは、簡体字の中国文を繁体字へ変換することである。この機能があれば、いちいち簡体字を辞書で確認する必要がない。もっとも、繁体字(日本語でいう旧漢字)を知らないと意味はないが。。。
○辞書、百科事典サイト
私は基本的には紙の辞書を読む主義であるが、 Web上で公開されている大部の辞書や百科事典を使うこともある。
英語:Century English Dictionary
英語:1911年(11版)Encyclopedia Britannica
ドイツ語:Grimm Deutsches Wörterbuch
ギリシャ・ローマの古典:ペルセウス Perseus
フランス語:語源辞書(初出の年代付)
フランス語:Diderot 百科全書
漢文:『支那文を読む為の漢字典』
○語源辞書(紙ベース)
英語: "An Etymological Dictionary Of The English Language",by Walter W. Skeat
同上:Skeat
ドイツ語:"Etymologische Wörterbuch der deutschen Sprache",by Friedrich Kluge
フランス語:"Dictionnaire historique de la langue française",by Alain Rey
フランス語:"Dictionnaire étymologique de la langue française",by Oscar Bloch and Walther von Wartburg
ギリシャ語:"Griechisches Etymologisches Wörterbuch", by Hjalmar Frisk
ギリシャ語:"Dictionnaire étymologique de la langue grecque: Histoire des mots", by Pierre Chantraine
ラテン語:"Lateinisches Etymologisches Wörterbuch", by A.Walde and J.B. Hofmann
ラテン語:"Dictionnaire étymologique de la langue latine",by Alfred Ernout
○参考図書
ギリシャ語、ラテン語
『ギリシア・ラテン 引用語辞典』(岩波書店)、田中秀央、落合太郎
『ラテン語とギリシャ語』(三省堂)、風間喜代三
『ラテン・ギリシャ語初歩 - 英学生の為め』(研究社)、市河三喜
『ギリシャ文法』(白水社、文庫クセジュ)、シャルル・ギロー
『ラテン語の歴史』 (白水社、文庫クセジュ) 、ジャクリーヌ・ダンジェル
『ギリシヤ語四週間』(大学書林)、古川晴風、
『ラテン語四週間』(大学書林)、村松正俊
『ギリシア・ローマ古典文学案内』(岩波文庫)、高津春繁、斎藤忍随、
言語学
『比較言語学入門』(岩波文庫)、高津春繁
『ヨーロッパの言語』(岩波新書)、泉井久之助
『言語学の誕生-比較言語学小史』(岩波新書)、風間喜代三
『印欧語の故郷を探る』(岩波新書)、風間喜代三
『言語世界地図』(新潮新書)、町田健
漢文学習(ブログ記事)
沂風詠録:(第67回目)『私の語学学習』(50回連載)
沂風詠録:(第5回目)『漢文教育の重要性』
沂風詠録:(第6回目)『麻生川流・漢文学習のポイント』
沂風詠録:(第7回目)『漢文の読み方・Rule of Thumb』
沂風詠録:(第55回目)『漢文は音読で、完全にマスターできる!』
百論簇出:(第53回目)『書評:漢字と日本人』
沂風詠録:(第18回目)『漢文調の日本文』
漢文のサイト
台湾・中央研究院 漢籍電子文献
中華文化網離線閲覧
中国古典の英文サイト
Wikisource・中国版
以上、45回にわたり『真夏のリベラルアーツ3回連続講演』の様子を伝えてきたが、このブログの内容は、実際に講演したものより遥かに内容が濃い。また、講演後に気付いた点も多く書き込んだ。一人でも多くの人がリベラルアーツを学ぼうとするきっかけとなれば幸いである。
<了>
【初回】 沂風詠録:(第213回目)『真夏のリベラルアーツ3回連続講演(その1)』